20代男性の4割がデート未経験の「本当」の理由

20代男性の4割がデート未経験の「本当」の理由

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2022/06/23
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若者たちがデートをしない理由、それは――(写真:YUJI/PIXTA)

20代男性の4割はデートした経験がない――。6月14日に公表された内閣府『令和4年版男女共同参画白書』が大きな話題を呼んでいる。
新著『先生、どうか皆の前でほめないで下さい――いい子症候群の若者たち』が話題の金間大介氏は、デート離れの理由として、インターネット上では男性の経済力の低下や1人時間の充実が取り上げられていることについて「ちょっとずれていると感じる」としつつ、「デートしないのは、いい子症候群の典型例」だと指摘する。

20代男性の4割がデートの経験がない

冒頭から思い切って現在の大学生の恋愛観を一言で表そう。それは、「大学在学中に彼女(彼氏)ができないと、その後一生独り身確定」という考えだ。これはもはや日本全国約260万人の大学生の共通認識となっていると言っても過言ではない(かもしれない)。

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6月14日に公表された内閣府『令和4年版男女共同参画白書』が大きな話題を呼んでいる。20代男性の65.8%は妻や恋人がおらず、39.8%はデートした人数0人。20代女性も似た傾向にあり、51.4%に夫や恋人がおらず、25.1%がデート未経験――。

たしかに4割の20代男性がデートの経験がないとは驚きだ。しかし、もっと驚くのは、これが単なる出会いや時間の問題ではないということだ。白書によると、30代男性の34.1%、30代女性の21.5%がやはりデート経験0人となっている。つまり、男性の場合でいえば、平均して+10年の猶予を与えたとしても、わずか5.8%しかデートデビューしていない(正確には、現在の20代が30代になったときには、この値はもっと小さくなっている可能性すらある)。もはや「デート未経験層」は固定化されていると考えたほうがいい。

白書の公表以降、この10日間ほどでなされた解釈としては、次の4点に集約される。①経済力の低迷(特に男性の)、②恋愛や結婚に興味のない人の増加、③ひとり時間の充実、④出会いの減少、だ。

① の「若年層男性の経済的困窮」はたしかにそのとおりだ。実際、白書では、働いている1人暮らしの男性の31.9%、女性の53.3%が年収300万円未満となっている。仮にこれで東京や大阪の大都市圏に住んでいるとすれば、可処分所得はかなり少ないだろう。

②については、男女とも、婚姻歴のない30代の独身者のおよそ4人に1人が「結婚願望なし」と回答していることが一定の根拠となっている。

ただ私は、①も含めて、いずれの解釈にも違和感を覚える。たとえば、今の若者はお小遣いが増えたらデートに誘い、減ったら誘わないということなのだろうか。だとしたら、デートはまるで何かの嗜好品みたいだ。

そこで私は、この4点に加え、あるいはその根底に、今の若者における「変なこと言って空気を乱したらどうしよう」「ズレた提案をして後で自分のせいにされたらどうしよう」という、恐怖心にも似た、人の感情に対する強い心理が関係していると主張したい。

恋愛はメンタルを不安定にするリスク要因

私は今年3月に上梓した新著『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』の中で、現在の若者の行動や心理的特徴を「いい子症候群」と称して、さまざまなエピソードやデータともとに解説した。要約すると、現在の若者たちの特徴は次のとおりだ。

「いい子症候群の若者たち」の行動特性(その1)
• 素直でまじめ/受け答えがしっかりしている
• 一見さわやかで若者らしさがある
• 協調性がある/人の話をよく聞く
• 言われた仕事をきっちりこなす

こういった行動特性から、世間ではよく、最近の若者のことを「素直でいい子」「まじめでいい子」と評する。そのような姿勢から「今年の新入社員は優秀だ」と春から夏にかけて噂されることも、もはや毎年の恒例行事のようだ(御社でも言っていませんか?)。ただし、彼らは同時に次のような行動特性も併せ持つ。

「いい子症候群の若者たち」の行動特性(その2)
• 自分の意見は言わない/言っても当たり前のことしか言わない
• 絶対に先頭には立たない/必ず誰かの後に続こうとする
• 授業や会議では後方で気配を消し集団と化す
• 場を乱さないために演技する

こういった極めて消極的な姿勢を伴うことから、「素直でまじめ」「人の話をよく聞く」にもかかわらず、「何を考えているのかわからない」「自らの意識を感じない」といった不可解な印象を与える。

なぜ、彼らはそんなわかりにくい行動を取るのか。その内面にはどんな心理が隠されているのか。それを端的に表すと次のとおりだ。

1) 目立ちたくない/100人のうちの1人でいたい
2) 変なこと言って浮いたらどうしよう/嫌われたらどうしようといつも考える
3) 自分で決めたくない(皆で決めたい)
4) (自分に対する)人の気持ち/感情が怖い

それって今の若者だけじゃないんじゃないか、と思う人もいるだろう。もちろんそのとおりだ。重要なのは、いい子症候群の若者にとっては、人生における重大な意思決定さえも支配してしまうほど、これらの負の感情が強いということだ。

こうした心理のうち、特に恋愛や結婚に強く影響するのは2)~4)だ。いい子症候群の若者たちは、とにかく自分に向けられた負の感情に強い恐怖心を抱いている。正確には、そこに本当に負の感情が存在するかどうかは関係なく、あくまでそういう空気を感じるかどうかの問題。彼らは人から発せられる空気を敏感に察し、自分の中でそれを増幅することで、激しい緊張感を覚える。

そのくらい人の気持ちが怖いのだから、当然、異性のそれもしかりだ。誤解を恐れずにいうならば、彼らにとって恋愛は、メンタルを不安定にするリスク要因そのものだ。

3)の自分で決められないという性向も、恋愛には不向きだ。決められないどころか、その前段階の「提案すること」すらできない。よって、そういうシチュエーション自体をとにかく避ける。そんな状態で、デートなど楽しめるはずもない。

なりゆきの出会いがなくなることが怖い

冒頭に紹介した「大学在学中に彼女(彼氏)ができないと、その後一生独り身確定」という恋愛観は、恋愛ベタだからこそ生まれたものだといえる。

基本的に大学生活では、自分から積極的に異性に働きかける必要はあまりない。アルバイトで夜中まで一緒に過ごしたり、ゼミやサークル後に宅飲みしたりすれば、おのずと異性を含めた友人たちと夜まで時間を共にすることになる。

彼らが「大学在学中に恋人を……」と焦る理由、それは「社会人になったらそんな状態はもうない」ということを知っているからだ。彼らは、社会人になっても出会いがないと思っているわけではない。なりゆきの出会いがなくなるのを恐れているのだ。

社会人になってから異性と仲良くなろうと思えば、必ず「自分から」「積極的に」「明確な意思をもって」行動しなければならない。そんな千万無量のリスクなど取れるはずがない。無理無理、自分には絶対ムリ。だったらデート経験0人でいいです。

そんな声が聞こえてきそうだ。

(金間 大介 :金沢大学融合研究域融合科学系教授、東京大学未来ビジョン研究センター客員教授)

金間 大介

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