日本初のTBSスタジオ組織が世界市場で何を目指すのか~THE SEVEN菅井龍夫社長インタビュー【前編】 / Screens

日本初のTBSスタジオ組織が世界市場で何を目指すのか~THE SEVEN菅井龍夫社長インタビュー【前編】 / Screens

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  • 更新日:2023/01/25

欧米ではクリエイティブとビジネスをプロデュースするスタジオ組織が勢力を伸ばす。TBSホールディングスが出資し、設立されたTHE SEVENはまさにそんな欧米型スタジオだ。総額300億円規模の製作予算を準備し、Netflixと戦略的提携契約を締結するなど、本格稼働が進む。世界市場をターゲットにあらゆるエンターテインメントコンテンツを創造していくというが、日本のテレビ局初のスタジオとして何を目指すのか。THE SEVEN代表取締役の菅井龍夫氏(TBSテレビ専務取締役)に話を聞いた。前後編にわたってお伝えする。

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THE SEVENオフィス

■海外OTTに柔軟に対応する緑山「M6スタジオ」

――TBSホールディングスの100%子会社の海外戦略の新会社として、THE SEVENを立ち上げた経緯から教えてください。

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THE SEVEN 代表取締役 菅井龍夫氏

菅井氏:どういった会社形態やモデルであれば世界と戦うことができるのか、設立前の1年間にわたりリサーチしながら探っていきました。ベースとなったのは中期経営計画「TBSグループVISION 2030」の「EDGE(=Expand Digital Global Experience)」戦略です。この「EDGE」戦略の最重要領域の1つに「海外市場」があり、最初の取り組みとしてTHE SEVENを立ち上げたというわけです。2020年10月に「東京放送ホールディングス」から「TBSホールディングス」に商号を変更したように、東京も放送も超えて、海外にいろいろアプローチし、コンテンツをベースにより多くの方に評価してもらおうという取り組みの中にTHE SEVENがあります。

――世界標準の作品をプロデュースするために、イギリスの放送局が立ち上げた「BBCスタジオ」や「ITVスタジオ」のような組織を作ったということですか?

菅井氏:まさに欧米型のスタジオ組織を目指しています。敢えて“スタジオ”を付けずにシンプルな社名にしましたが、THE SEVENには「7つの海を越えて世界に出ていく」「6チャンネルの一歩先を行く」という意味が込められています。またTBSのインフラを最大限に活かして、緑山に専用スタジオを建設中で2023年秋に竣工する予定です。この専用スタジオを備えるプロダクション機能とVFX基地を持つ欧米型スタジオとして、日本のクリエイターや原作、映像表現を世界のより多くの方に知ってもらえるようなコンテンツをプロデュースしていきたいと思っています。

――では、緑山の専用スタジオは海外OTT向けコンテンツに完全対応するために建設されているのでしょうか?

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「M6スタジオ」緑山スタジオ完成予想図

菅井氏:緑山に6つ目のスタジオ「M6スタジオ」を建設しているのは、海外OTTからの発注基準に柔軟に対応するためです。現在、緑山で稼働中の5つのスタジオはTBSの地上波ドラマを制作するための機能をすべて備えていますが、海外OTT向けに構築されているわけではありません。新たに建設するにあたり、その時々の技術や製作チームが必要とする機材を持ち込めるスタジオ設計にしているので、数年後の新技術にも対応できます。このM6スタジオは日本最大規模の300坪を有し、スポーツエンタテイメント「SASUKE」のような巨大オープンセットを構築できるスペースが隣接していることも強みになります。

■製作予算300億円の準備で本気の取り組み

――欧米型スタジオ組織ということで、プロダクション機能のみならず番組開発から制作、IPおよび流通管理まで展開することも事業目的にあるのでしょうか。

菅井氏:まずは世界標準の作品を手掛けるためにはそれなりの資本がないと挑むことができないという現実があります。日本の商慣習では納品した段階で役者からADまで全員にギャランティが支払われますが、海外OTT作品の場合、そうはなりません。たとえば、1話2億円、10話で20億円かかるドラマは、回収までおおよそ4年ほどかかってしまいますから、はじめから製作費を準備することが必要です。

また製作費をかければいい作品が作れるというわけではありませんが、地上波向けに作るドラマと世界にも通じるドラマと比べると、コストのかけ方や技術的な見せ方で大きな差が開いていることも無視できません。THE SEVENはその差を埋めるための組織です。企画提案から、日本の権利者との交渉、IP管理なども事業展開に含みます。日本では新たな試みとなりますが、日本をリードするプロデュース集団として、国内外のパートナーとともに手を取り合い、日本のクリエイターが世界で活躍できる突破口を開きたいと考えています。

――設立に際して外資が資本に入ることも検討されていましたか?

菅井氏:資本金は5000万円、戦略の原資として、約300億円の製作予算を用意しています。この数字から見ても、本気で取り組もうとしていることがご理解いただけるかと思います。ご質問の答えとしては、資本を安定させるために外資を入れることは想定していませんでした。必要なかったとも言えます。今後も外資が資本に入ることは恐らくないでしょう。一方で、世界の強力なパートナーとどのようにアライアンスを組み、いかに新しいコンテンツを生み出せるかについては積極的に取り組んでいきます。プロジェクトごとにフリーハンドで柔軟に展開していくこともあり得るかと思います。

■ゼロイチベースでコンテンツを作る組織

――アライアンス関連では既にNetflixとは戦略的提携契約を締結したことを2022年11月に発表されましたが、今後Disney+など各社とも提携を広げていくのでしょうか。

菅井氏:Netflixとの業務提携は独占的なものではありません。THE SEVENと共同開発したいと思ってもらえることで、提携先は自ずと広がっていくと思います。最終的には新しい作品を生み出すことがTHE SEVENの主たる目的にあります。

――敢えてお聞きしますが、世界市場の動きに対して欧米型スタジオを立ち上げたタイミングをどのように捉えていますか? 早い? それとも遅いのか。

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菅井氏:日本の通常の海外番組販売の枠組みで、権利ビジネスを広げるのは正直なところ非常に難しいことです。限りなく縛りがなく、ゼロイチベースでコンテンツを作るTHE SEVENでは、権利処理からビジネス展開まで自分たちで計画ができ、自分たちでコントロールすることが可能になります。スタジオドラゴンなど韓国は既に先を行っていますから、そういう意味では遅れていますが、日本国内では非常に早く準備ができ、本格稼働できたと思っています。

TBSの資金力を活かして300億円の製作予算を確保し、新たなスタジオも建設中、さらにNetflixと提携するなど、世界市場で戦うための準備は着々と進められている。では、新たなコンテンツを生み出すためにTHE SEVENではどのような体制を築いているのか。後編に続く。

TBS海外戦略の新会社が目指す世界のOTTトップ10入り~THE SEVEN菅井龍夫社長インタビュー【後編】

テレビ業界ジャーナリスト 長谷川朋子

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