台湾統一に向けた中国の実力行使が2027年に始まると見る理由

台湾統一に向けた中国の実力行使が2027年に始まると見る理由

  • JBpress
  • 更新日:2021/11/26
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習近平国家主席とオンラインで会談する米バイデン大統領(写真:ロイター/アフロ)

新型コロナウイルスをいち早く抑え込むことに成功したと思いきや、大手不動産開発会社・中国恒大集団の経営危機が波紋を広げる中国。今後、超少子高齢化時代を迎え、その社会の不安定さはより増していくと想像される。

習近平政権のウイグルや香港、台湾を含めた国内外へのプレッシャーは、テクノロジーを融合した脅かしの手段とともに今までにはないほど強く、不気味なステージに突入している。『習近平「文革2.0」の恐怖支配が始まった』(ビジネス社)を上梓した福島香織氏に話を聞いた。(聞き手:長野 光、シード・プランニング研究員)

※記事の最後に福島香織さんの動画インタビューが掲載されていますので、是非ご覧下さい。

──この数年、新疆ウイグル自治区で起きている弾圧が世界的に注目されています。ウイグル強制収容所の状況について教えて下さい。

福島香織氏(以下、福島):拷問や性虐待が行われています。

女性に対する性虐待はウイグルの収容所だけではなく、中国の刑務所でも、チベットの尼僧に対しても多い。法輪功などの宗教団体や人権派の弁護士などに対しても、非常に屈辱的な拷問がなされています。人を辱めることに関しては、右に出る者がないほど伝統がある中国共産党ですから。

私が北京で取材した高智晟(こう・ちせい)さんという人権派の弁護士は、自分が捕まっている時にどんな拷問を受けたか、そのすべてを告発文として発表しました。タバコの火を肛門に当てるといった、人を辱めて痛みと恥辱を与えるような拷問です。その後、彼は行方不明になり、今もどこにいるか分かっていません。

彼の告発の内容は、すべて本当のことだと私は確信しています。漢族の人権派弁護士やチベットの記者、ベルリンやオタワに亡命した人権活動家や公民運動の指導者など男女問わず、このような性的な屈辱や痛み、命の危険を伴う拷問を受けたと言っていました。

ウイグルの人たちもこのような拷問を受けているでしょう。英BBCが実際に拷問を受けた女性を取材しています。それに対して中国当局は、「その女性は俳優だ。全部嘘だ」と主張していますが、私はこのウイグルに関しての BBCの報道を全面的に信じています。

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新疆ウイグル自治区にある、ウイグル族の収容所と思われる施設(写真:ロイター/アフロ)

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“新疆の臓器”がレシピエントに好まれる理由

福島:それから公正で公平な裁判を受けずに、恣意的に死刑や重罪にされてしまうこともあります。これには、臓器移植のための臓器を取るために罪をでっち上げているのではないかと言われています。

「恣意的に罪を増やして死刑を宣告され、『家族のためになるから臓器提供の同意書にサインしろ』と言われて、臓器移植のドナーになってしまった」といった話を2015年あたりにいくつか聞きました。

2015年までは死刑囚の臓器を臓器移植に使っていたと中国当局は認めています。臓器移植に関しては2007年頃からルールを作って整備しているものの、いまだに新鮮な臓器が欲しい人や臓器にお金を積む人はたくさんいます。

新疆から北京まで、臓器を提供しに来た女の子を取材したことがあります。

新疆というのは、全国でも犯罪者が多いことになっています。「ハラールオーガン」と呼ばれる、汚れてない臓器や豚肉やお酒を摂っていない臓器を尊ぶレシピエント(臓器移植を希望する人)がいる。「ハラールオーガン」を調達するために、新疆ではたくさん犯罪者を捕まえる必要があるのではないか、と言われています。

強制収容所では、突然亡くなるケースがとても多い。その場合、死因も知らされず、遺体も返してもらえず、勝手に火葬されて、死亡通知だけが送られて来ます。ウイグルの人達、ムスリムの人達にとって、火葬は非常に屈辱的なことです。

その他にも、狭いところに閉じ込められて非人間的な環境で長期間洗脳された、共産党への感謝を述べなければご飯を食べさせてもらえない、朝5時から起きて習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想を暗唱させられた、といった話も聞きました。

中国の世論を誘導する「五毛」とは何か?

──習近平政権は、解放軍の兵士装備に「新型単兵デジタル作戦システム」を導入した、と本書に記されています。これは兵士の位置や状況を指揮官に伝えるものであり、兵士と本部の連携をより緊密にすることで作戦を円滑に展開するための技術かと思いました。しかし実は、このシステムは兵士をより厳密に管理し、場合によっては兵士の命を奪う場合もある、と書かれています。

福島:CCTVの軍事チャンネルが最新の作戦や軍備を宣伝しています。

その中で、「新型単兵デジタル作戦システム」も紹介されています。これは、チベット山岳部の兵士の装備に兵士個人のデータをすべて入力して、宇宙衛星を通じて地上でどういう作戦を展開しているか、個人行動がすべて把握できるようなシステムです。

捕虜になって拷問にあうくらいだったら、情報を漏らす前に亡くなった方がいい、そのシステムによって兵士の命まで奪うこともできる、という説明もされています。

また、中国は膨大なヒトゲノムのデータをデータバンクとして持っています。「チベット人の高地適応遺伝子」を突き止めようともしています。解放軍がインド国境の過酷な高地作戦を遂行するために、いかに強い兵士を作るかが重要だからです。

CCTVチャンネルや解放軍報、解放軍の研究書、国防大学の先生が出した論文では、SFのような作戦や技術、アイディアが提案されています。インターネットのサイバー空間と人間の脳を直接リンクして、人の思念でミサイルを誘導したり、自分の思い通りに兵器ロボットを動かしたりと、驚くような考えをアピールする研究者もいます。

これらはすべてプロパガンダ、宣伝なので、どこまで実用化するつもりでやっているのか私には把握し切れませんが・・・。

──中国政府は世論を誘導するために、約200万人の「五毛」と呼ばれる集団やおよそ2000万人に上る「ネット文明ボランティア」という集団を動かしている、と本書に書かれています。日本でいうところのネトウヨに近い人たちが国に雇用され、党の方針を宣伝し、リベラル思考の持ち主をインターネット上で血祭りにしている、という印象を受けました。

福島:私が北京に駐在していた頃は、「五毛」というのはデジタルオタクのような人たちのことだったんです。その中の愛国的な集団を、解放軍が一生懸命スカウトしているという話は聞いていました。

今は世論をうまく誘導するプロフェッショナルの人たちが、中国の「国家インターネット情報弁公室」で正式に公務員として雇用されています。

そうした公務員とは別にSNSで世論誘導をする人たちもいます。これは主に大学生で、2000万人くらいいると言われています。

彼らはボランティアなんですね。卒業したら、国有企業や共産党系の公務員として就職して、うまく出世していきたいと思っている。就職する時に口利きしてもらったり、就職後は「清華大学でこんなボランティア活動をしていました」と言ったりすれば党内で地位が上がる、といったメリットがあります。

例えば、人民日報が共産党についてのポジティブな報道をしたら、彼らは共産党に全く関係ないようなフリをしながら「いいね」を付けたり、「凄いアイディアだ!」「共感した!」といったコメントをしたりする。これが中国の世論誘導の一つの方法なんです。

欧米の市場経済と「中華圏」の2つの経済体制が共存する時代

──本書の中で、香港国家安全維持法によって強引にデモ隊が鎮圧され検挙される状況を説明されています。そして、これまで以上に安全性を担保する香港がますますビジネスの拠点となり、海外で成功した中国企業が香港に戻ってきていると一部のメディアは報じているが、実は海外でうまくいかなくなった中国企業が香港に回帰しているのが実態ではないかと分析されています。今後、中国の企業は海外を拠点にしていくのでしょうか。

福島:習近平政権は、2019年の秋の党大会で「共同富裕を達成する」という目標を掲げました。共同富裕というのは、「みんなが食うに困らない豊かな生活ができるようになりましょう」ということです。

そのために、お金持ちから税金をたくさん取って、それを貧しい人の社会保障に充てて、社会の平等化を進めていく、と。さらには、「貧しい人たちにお金を分け与える寄付文化を作ろう」と言っています。

今は、例えばアリババグループのような金持ちの企業や金持ちの人に、「寄付しろ、お金を出せ」と言っていますが、これは自ら望んだ寄付ではありません。富裕層は、「お金を奪われているのではないか」と心配しています。

集めたお金を平等に分配するためには、共産党組織が再分配の役割を担わざるを得ませんが、果たしてフェアに再分配することができるのか。2035年の達成を目指して、浙江省でまずモデルケースとして成功させようとしていますが、自由主義社会の市場経済と全く噛み合わないような経済体制になる可能性も高いです。

──全く別物になりそうですね。

福島:今までの中国は、中国の特色ある社会主義に市場経済を組み入れて、少しずつ資本主義社会に近づいていましたが、習近平政権になってからは社会主義回帰に向かっています。

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中国は「内循環」とも言われますが、鎖国式の経済体制を作ろうとしています。鎖国と言っても中国国内だけではなく、一帯一路沿線を含めた中華圏をイメージしています。中央アジアから地中海、東南アジア、日本も入っている。

そうすると、米国を中心とする西側の市場と、中華圏の市場という世界には2つの市場ができることになります。ハイテク技術や情報のやりとりは非常に厳しく制限される可能性はあります。

今まで中国企業は国外にどんどん出ていけ、という政策でしたが、今度は国内、中華圏に戻って来いという形になる。そうなると、中国企業は中国と香港で上場するようになります。

香港は今までは国際ドル通貨、つまりドルが欲しかった中国企業のための国際金融市場でしたが、今度は人民元が欲しい外国企業の窓口になるかもしれない。香港よりもこれからは中華圏市場がメインになるから、市場が欲しいやつは中国が決めるルールに従うのであれば入って来てもいい、と。

人民元のオフショア金融センターという形で香港を活用するつもりなのかもしれないですが、そうなると米国を中心とする西側の市場と中華圏の市場という2つの基軸通貨ができる時代に入る懸念は当然あります。

「台湾統一」のタイムリミットはいつか?

──台湾統一を狙う習近平政権の動向は常に世界の注目を集めるところであり、米国は特にこの問題に敏感です。中国は台湾侵攻を予定しており、そのリミットが2027年であると本書に書かれています。なぜ2027年までに中国は台湾に武力侵攻する可能性があるのでしょうか。

福島:2027年は解放軍の建軍100周年です。また2035年も一つの区切りになります。これは習近平政権が言うところの中長期遠景目標のリミットです。

2022年秋の第20回党大会で、本来ならば習近平政権は引退して、後続の新しい政権ができるはずなのですが、まだ後継者が決まっていない。

習近平がこのまま続けるのか、あるいは68歳という暗黙のルールに従って引退するのか。もう少し若い李克強か汪洋のどちらかが後継の総書記になるのか。国家主席は任期が撤廃されたので、国家主席はそのまま習近平が続けて新しい体制ができるのか。それとも、習近平が毛沢東の後継として党主席を名乗るようにするのか─仕組み自体を大きく変えて、習近平が権力を維持するシステムに変わる可能性もあります。

権力の安定のためには、何か偉業を果たさなければなりませんが、習近平にはまだそれがない。その偉業というのが「台湾統一」だとすると、実力行使に出る可能性があるのが2027年なのではないか、という話です。

2035年までに都市部の通勤時間を1時間以内にするなど、全国の交通網整備計画も発表しています。中国と台湾を直接トンネルと橋で結ぶ交通網を作ると言っていますが、それには最短でも完成まで8年かかります。

2035年に完成していなければいけないと考えると、2027年時点で中国と台湾間の対立はなく、双方がパスポートなしに往来できるような関係になっていないといけない。そう考えると、2027年が台湾統一を実現するための一つの目標になるということです。(構成:高野歩)

※動画が上手く再生されない場合は以下をご確認ください
https://www.youtube.com/watch?v=iRstGnBti9c

長野 光

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