グラッスルとシャオイムファの2人を中心にハイレベルな争いに注目 | ISU欧州フィギュアスケート選手権2023 男子シングル プレビュー

グラッスルとシャオイムファの2人を中心にハイレベルな争いに注目 | ISU欧州フィギュアスケート選手権2023 男子シングル プレビュー

  • J SPORTS|コラム(ウィンタースポーツ)
  • 更新日:2023/01/25

個性豊かで、創造性にあふれ、夢とロマンあふれるコスチュームを身にまとい……。ひとことで言えばヨーロッパ男子はおもしろい。彼らの見せてくれる世界は、いつだって驚きと愉しみに満ちている。

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しかも今シーズンの欧州男子は、しっかりと強い。グランプリシリーズでは、イタリアのダニエル・グラッスル(英国杯)とフランスのアダム・シャオイムファ(フランス杯)が、それぞれ初優勝を飾った。GP全6大会で欧州男子が2勝以上あげるのは、5年ぶりの快挙(つまりハビエル・フェルナンデス時代以来)。自ずと2023年欧州チャンピオンの座を巡る争いは、この2選手を中心に繰り広げられるはずだ。

20歳のグラスルは、そもそもハイレベルな4回転ジャンパーとして知られる。2020年秋にルッツ、フリップ、ループという難度の高い3つの4回転ジャンプを、史上初めて単一プログラムの中で成功させたことでも話題になった。北京五輪もSPこそ12位と出遅れたものの、FSは同じ3種のジャンプを武器に4位へジャンプアップ。今季もプログラムは2本ともに、大きな4回転ルッツで幕を開ける。

課題とされてきた表現力も、急速に深みを増している。ここ数年はブノワ・リショーの作るプログラムで、独自の世界観を築き上げてきた。今季もFS「Struggling Brain」では、その長く柔らかい肢体を存分に活かして、前衛的な物語を演じる。一方でSP「シルエット」は、現役屈指の芸術肌ジェイソン・ブラウンの作。繊細で柔らかなムーブメントが、流れるように組み込まれたプログラムは、グラスルの瑞々しい表情を引き出してくれる。

若き日に元祖・4回転ジャンパーのブライアン・ジュベールの下で研鑽を積んだシャオイムファも、FSには3本の4回転を組み入れる。特に演技後半の4回転トーループから始まる3連続コンビネーションは、間違いなく大きな得点源のひとつ。

「昔からテクニックは高かった。そして今や、アーティスティックな面でもすごく伸びた」と、仏杯優勝の機会に、かつての師ジュベールは絶賛する。ちなみに振り付けは……グラスルと同じく、ここ3年はリショーに任せている。今季のプログラムはとりわけ興味深い作品に仕上がった。SP「Rain, In Your Black」も、FS「Horizons他」も、完全に同じ動きから始まるのだ。衣装も同じデザインの色違い。シャオイムファの解説によると、SPは過去に失った愛の物語であり、FSはその過去に戻って、すべてをやり直し新たな未来を築いていく……。

技術面と芸術面で成長した21歳のシャオイムファは、今季ついにシニアの国際大会で初優勝を遂げた(チャレンジャー大会ロンバルディア杯)。仏杯ではジュベール以来16年ぶりの地元フランス人覇者となり、年末には、4年連続2位に泣いてきたフランス選手権で、ついにチャンピオンの座を勝ち取っている。

グラッスルとシャオイムファとの頂点争いに、豊かな表現力で挑むのが、ラトビアのデニス・ヴァシリエフスでありフランスのケヴィン・エイモズだ。

日本では宇野昌磨のコーチとしてもおなじみステファン・ランビエールの、一番弟子であるヴァシリエフスは、その滑らかな一蹴り一蹴りに哲学がある。佇まいには気品があふれ、動作には少しの雑味もない。音を緻密にとらえたステップや、もちろん師匠を彷彿とさせる華やかなスピンも、見る者を虜にする。

たしかにジャンプには苦労している。ヴァシリエフスが公式戦で4回転をクリーンに着氷したのは、2020年に1度だけ。ただ間違いなく、昨欧州選手権で人生初の表彰台に上がったのは、FSで4回転サルコウ(4分の1回転不足)を組み入れたから。今季からはSPにも4回転を入れている。その積極性が実り、英国杯では、やはり人生初のGP大会表彰台を楽しんだ。ちなみに英国杯FSの技術点は全体で4番目のスコアだったが、演技構成点だけなら、次点に4点近い差をつけてダントツの1位だった。

エイモズの光る創造性も、多くのファンを魅了する。バネのような躍動感と、ゴムのような柔軟性。細やかかつ大胆。文字通りの全身表現で、その小さな体が、氷上で大きな存在感を放つ。今季FS「グラディエーター」では、そこにないはずの「風」さえ見える。キスクラでのチャーミングな感情表現も……素敵な魅力のひとつ!

4回転を飛ばないわけではない。GPファイナルで銅メダルを持ち帰った2019年以来、SPに1本、FSに2本、しっかり組み込んできた。ただ今年10月上旬の試合で、靭帯を断裂した。出場を予定していた地元フランス杯は棄権を余儀なくされ、以来、4回転ジャンプは回避している。そもそも4回転抜きで、今季エスポー杯SPは、あのイリア・マリニンを抑えて堂々1位を取った。トータルでは銀メダルを獲得した。FSの演技構成点は、マリニンのそれを6.5点も上回っていた。

5年ぶりにイタリアチャンピオンに返り咲いたマッテオ・リッツォにも、ノーブルな滑りと軸のきれいなジャンプを武器に、4年ぶりの欧州選表彰台に飛び乗るチャンスはある。今季はいまいち精彩を欠いているが、ジョージアのモリシ・クヴィテラシヴィリも、本来の4回転を取り戻しさえすれば表彰台は射程圏内。

ガブリエーレ・フランジパーニ(イタリア)の激しく熱のこもった演技も、ルーカス・ブリッツギ(スイス)のメリハリの効いたかっこいい良プログラム2本も(FSは和テーマ)、ミハイル・セレフコ(エストニア)の線の細い身体から放たれる力強いエモーショナルさも、どれも見逃したくない。ニカ・エガデス(ジョージア)の、SP冒頭からさらりと4S+3Tを飛び、いきなり15点近い得点を稼いでしまうクールさも……!

文:J SPORTS編集部

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