独身・小金持ちサラリーマンが考えた、自分亡きあとの「財産の後始末」【弁護士が解説】

独身・小金持ちサラリーマンが考えた、自分亡きあとの「財産の後始末」【弁護士が解説】

  • 幻冬舎ゴールドオンライン
  • 更新日:2022/08/06
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それなりの資産を保有する独身サラリーマンは、自分が亡くなった後、財産がどうなるのか気にかけています。両親もきょうだいもなく、いわゆる「法定相続人」がだれもいない状態です。密かに考えていることがありますが、実現に向けた具体的な方法はどのようなものになるのでしょうか。相続問題の解決に定評がある、弁護士法人菰田総合法律事務所の國丸知宏弁護士が事例をもとに解説します。

独身サラリーマン、自分の死後の資産の行方を懸念

今回のご相談者は、50代独身のAさんです。Aさんはひとりっ子で、ご両親はすでに他界されています。Aさんには婚姻歴もなく、子どももいません。

「健康上の不安はないのですが、そろそろ先のことも考えておこうと思いまして…。独り身ですので、将来私が死んだら財産はどうなるのだろうかと思っています。財産は、主に預貯金と自宅マンションです。それなりの金額になるかと思いますので、だれかに有益に使ってもらえればいいのですが…」

もしいま、なにも準備せずに亡くなったらどうなるか?

Aさんには配偶者、子、親、きょうだいがいないため「法定相続人なし」ということになります。法定相続人がいないAさんが死亡すると、以下の通り手続きが行われます。

①相続財産法人の成立

→ 相続財産自体が「相続財産法人」となります。

②家庭裁判所による相続財産管理人の選任・公告

→ 利害関係人または検察官の請求によって、「相続財産管理人」が選任され、その旨公告されます。

③相続債権者及び受遺者に対する公告

→ 財産管理人は、②の公告から2ヵ月が経過してから、一切の相続債権者及び受遺者に対して、期間内に申出をするよう公告をします。債権者がいる場合には、弁済をします。

④家庭裁判所による相続人捜索の公告

→ 家庭裁判所は、③の公告から2ヵ月が経過してから、財産管理人の申立てにより、相続人を探すため、6ヵ月以上の期間を定めて公告をします。

⑤相続人不存在の確定

→ ④の公告期間が満了すると、相続人の不存在が確定します。

⑥特別縁故者への相続財産の分与

→ ④の公告期間満了後3ヵ月以内に、特別縁故者(被相続人と生計を同じくしていた人、被相続人の療養看護に務めた人など)からの請求により、残余財産の全部または一部を与えることができます。

⑦残余財産の国庫への帰属

→ 特別縁故者からの請求がない、もしくは特別縁故者に財産を分与してもなお残余がある場合には、その財産は国庫に帰属することになります。

ただし、以上はあくまでも相続財産管理人の選任申立てがなされた場合です。

Aさんの場合は、自宅がマンションなので、Aさんの死後、管理費が滞納された結果、マンション管理組合が「利害関係人」として相続財産管理人選任申立てを行う可能性もあるでしょう。しかし、もし誰も申立てをしなければ、Aさんの財産はそのまま放置されてしまいます。

「寄付するか、お世話になった友人の子に渡したい」

「国庫に帰属するというのは嫌ですね。財産の残し方は自分で決めたいです。どこかに寄付できたらいいのですが…。または、お世話になっている友人の子どもに渡したいですね」

Aさんは、相続財産管理人を立てることは避けたいようです。Aさんの希望を叶えるためには、どのような方法があるでしょうか。

まず、寄付をするためには、遺言書を作成することが考えられます。遺言書で財産を譲り渡すことを「遺贈」といいますが、遺贈する旨を遺言書に記載しておけば、団体等に寄付することが可能です。ただし、単に遺言書に遺贈すると記載しているだけでは、実行されない可能性が高いため、遺言の内容を実現するために、遺言執行者(遺言の内容を実行する人)を定めておくことが重要です。

なお、団体や自治体によっては遺贈を受け付けていなかったり、遺贈できる財産に要件があったりするので、寄付を考えている場合には、事前に相談をしておくことをお勧めします。

Aさんは動物が好きなので、保護犬活動をしている団体に遺贈することにしました。団体に問い合わせたところ、預貯金の遺贈は有難く受けるものの、不動産については受け取れないという回答でした。このような場合、遺言書に、自宅マンションを売却し、各種経費を控除した売却益を団体に遺贈するという内容を記載することが考えられます。

自筆証書遺言を作成し、団体に遺贈すること、遺言執行者の指定等を記載の上、法務局で保管し、死亡時通知の対象者を遺言執行者にすると、遺言者が亡くなった後、法務局から遺言執行者に通知がいくので、遺言執行者に連絡してくれる親族等がおられなくても、遺言執行者が遺言の内容を実現することができます。

また、Aさんは友人の子に財産を残したいという希望も持っていました。生前に懇意にしていた法定相続人以外の人に財産を残すには、

①遺言書により遺贈する

②養子縁組を行う

③民事信託(家族信託)を活用する

という方法が考えられます。

①の「遺言書により遺贈する」は、寄付の場合と同様です。

②の「養子縁組を行う」は、財産を残したい人と養子縁組を行うことで、親子関係が成立し、法定相続人として財産を残すことができます。つまり、遺言がない場合でも、法定相続人である養子は遺産を受け継ぐことができます。なお、養子縁組をしても、実の親との親子関係がなくなることはありませんので、養子は、養親と実親の2回とも相続権があるということになります。

③の「民事信託(家族信託)を活用する」の民事信託(家族信託)とは、財産の所有者(「委託者」といいます。ここではAさん)が、財産を託す相手(「受託者」といいます。ここでは友人の子)に対し、財産の所有権を移転し、受託者が、託された財産から利益を受ける人(「受益者」といいます。ここではAさん)のために資産を管理するというものです。

委託者と受託者が「信託契約」を締結することによって成立します。財産の所有権は受託者に移転するものの、受益者のために財産を管理するので、受託者が自由に財産を処分してしまうということはありません。また、信託においては、委託者が亡くなった場合に財産をどうするか定めることができます。信託を終了させ、財産の帰属先を受託者にすることも可能です。

民事信託の大きなメリットとして、信託契約締結時の判断能力に問題がなければ、その後、委託者が認知症等になった場合でも、受託者が自身の権限で財産を管理することができるという点にあります。

今回のAさんは、①の方法(遺言書で遺贈する)をとることになりました。また、財産を遺贈する子の親(Aさんの友人)が、「そういうことなら…」と、遺言執行者を引き受けてくれることになりました。

まとめ

自身の亡き後、財産を誰にどのように残すかということは誰もが考えるべきことですが、単身の方は、ご自身が築いた財産が放置されてしまう可能性があるため、特に重要な問題となってきます。財産を残したい相手がいる場合には、健康なうちにとれる相続対策を検討しておきましょう。

國丸 知宏
弁護士法人菰田総合法律事務所
弁護士

國丸 知宏

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