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JR北海道の増収を考える 航空×列車のコードシェア 民有民営の観光列車ほか

JR北海道の増収を考える 航空×列車のコードシェア 民有民営の観光列車ほか

  • 乗りものニュース
  • 更新日:2021/07/22

赤字だからといって削るべきは人件費でない

2007(平成19)年頃から、JR北海道では列車の脱線事故などがたびたび起こりました。保線に関わる作業員のデータ改ざんなども相まって、企業内部の問題も顕在化しました。

国鉄の分割民営化にあたり、JR北海道が経営する路線はその基盤が脆弱であることから、経営安定基金である「三島基金」が用意され、資産運用収益で会社の損失を補填しようとしました。三島とは本州以外のJR各社、北海道、四国、九州です。

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特急「北斗」に使われるキハ281系ディーゼルカー(画像:写真AC)。

しかしバブル経済が崩壊した後は、政府の低金利政策により、「三島基金」の運用益が低下。JR北海道は経営環境が厳しいことから、定年退職者が出たとしても、新規の職員の採用を抑えて人件費を下げることを模索しました。

すると保線などに携わる社員の技術継承が上手く行かなくなり、結果、事故多発という形で問題点が浮き彫りになりました。保守や工事に関しても、資金面を理由に後回しになってきた状態です。インフラの一部として、この負のスパイラルを抜け出す方法はあるのでしょうか。

国鉄の分割民営化から35年近く経過しますが、北海道ではその間に高速道路や空港の整備が進展しただけでなく、札幌への人口集中が進みました。これはJR北海道にとって、客単価が高い特急列車などによる都市間の流動が減少することを意味します。そのような状態のところへ、高速道路や空港の整備が進展したため、少なくなったパイの取り合いになります。結果的にJR北海道の経営体力が消耗されました。

体力を向上させるには、増収を図ることが不可欠ですが、運賃・料金を値上げしたのでは、利用者の減少に拍車をかけてしまいます。人件費を抑える施策も、先述の通り技術の継承が円滑に行われなかったり、サービスダウンに繋がったりします。ここで筆者(堀内重人:運輸評論家)は以下の3つを提案してみます。

1.鉄道建設・運輸施設整備支援機構から「貨物調整金」の支給を受ける
2.JR北海道の特急列車などを、JALやANAなどの航空会社とコードシェアする
3.観光列車「THE ROYAL EXPRESS」のように、線路使用料を得る

「貨物調整金」特例でJR北海道に交付できないか

「1」に関しては現行、JR貨物が第三セクター路線を走行する場合、その線路使用料の負担を軽減すべく、鉄道建設・運輸施設整備支援機構がJR貨物に対し交付するものです。国鉄の分割民営化時、慢性的な赤字だった貨物部門は民営化後の経営を安定させるため、貨物専用線を除いて自社で線路を所有せず、JR旅客会社の線路を借りて列車運行のみを行う上下分離経営が採用されました。線路使用料は、貨物列車の運行がなければ線路使用料の支払いが免除される「アボイダブルコスト」をベースにした価格です。

しかしながらJR化後に新幹線が開業すると、並行する在来線はJRから経営分離され、新たに在来線を運行する第三セクター鉄道が誕生しました。ただし三セク化されても貨物列車は通ります。特急列車がなくなり赤字経営となる第三セクター鉄道にとって、JR貨物からの線路使用料は貴重な収入源です。第三セクター鉄道とJR貨物両者の経営基盤を強化すべく、支援機構が間に入っています。

この構図を、特例的にJR北海道へ適用できないか、というものです。特に函館本線や室蘭本線は貨物輸送でも幹線であるため、もしJR北海道に「貨物調整金」を適用すると、年間で数十億円の経営改善が実現します。

「2」に関しては、JR北海道の特急列車に航空会社の便名を付けることで、列車を北海道内への接続便として扱う方法です。ルフトハンザドイツ航空が空港~主要都市間で高速鉄道「ICE(インターシティ・エクスプレス)」を用いて列車を運行していることにヒントを得ました。これにより航空会社は、新たに北海道内を運航する機材を用意する必要性から解放され、JR北海道は収入源になります。新千歳空港駅または南千歳駅で航空機と接続させれば、航空会社は空港の無い富良野、留萌、ニセコなどへの便を設定できます。

1列車では設定しづらい「留萌行き特急」なども可能に?

JR北海道は航空会社の委託以外に、例えば列車の空席を座席予約システムに統合し販売すれば、富良野、留萌、ニセコなど1列車では設定しづらい都市や地域に対しても集客が見込めます。また南千歳から石勝線や室蘭本線を経由して富良野や留萌へ向かえば、岩見沢、滝川、深川への便の設定が可能になるだけでなく、沿線の活性化に繋がるでしょう。ニセコ行きであれば札幌を経由して運転できるため、小樽への便の設定や札幌~ニセコ間の特急列車としても機能し、函館本線の内陸側の活性化にも繋がります。

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釧路湿原を行く観光列車「THE ROYAL EXPRESS」(画像:東急)。

「3」に関しては、観光列車「THE ROYAL EXPRESS」に着想を得てみます。この列車は伊豆急の車両を使い、東急、JR東日本、JR貨物が夏場を中心に北海道内で運行しています。この場合、JR北海道は東急などに対して線路を貸す形になるため、「民有民営」の上下分離経営となります。

北海道は雄大な自然の宝庫であることから、観光リゾート列車を運行するには適した条件を有しています。一方で「冬場は雪で閉ざされてしまう」という一面もありますが、スキー人口が減少傾向にある中でも富良野などは雪質が細かいパウダースノーであることから、スキー需要は期待できます。近年は台湾などから、雪を見るために冬の北海道へ観光客が来ることも。その上、北海道は温泉も豊富ですから、これらを絡めた観光客を誘致するリゾート列車を、JR北海道以外の鉄道事業者が企画・運営すれば、JR北海道には線路使用料が入り、増収を図ることも可能になります。

従来のような運賃・料金の値上げや人件費の削減による経営改善ではなく、上述したような新たな増収策を模索して欲しいと筆者は思います。

堀内重人(運輸評論家)

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