菅政権は第三次安倍政権にすぎない。原発推進政策はまったく変わらない!?

菅政権は第三次安倍政権にすぎない。原発推進政策はまったく変わらない!?

  • ハーバービジネスオンライン
  • 更新日:2020/10/16

◆平沢勝栄・復興大臣は原発政策について「福島県民の思いを発言していきたい」

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会見を行う平沢勝栄・復興大臣

脱原発を望む福島県民の思いを発信する役割の平沢勝栄・復興大臣が10月9日、会見を行った。

筆者はその場で「小泉純一郎元首相が菅首相に緊急直言!『脱原発を目指せば長期政権もあり得る』」と銘打った『サンデー毎日』の記事(10月18日号=6日発売)の内容から、「『総理が決断すれば原発ゼロはすぐに実現する』『与野党も反対できないから長期政権も可能だ』と述べている」と紹介。そのうえで「福島県民が望んでいる『(原発事故による)こんな被害を二度と繰り返してほしくない。他県の人に味あわせてほしくない』という思いとも合致していると思うが、小泉元総理の提言への受け止めと、菅総理に提案する考えはあるのでしょうか」と聞いたところ、平沢氏はこう答えたのだ。

「記事を読んでいないのでコメントできない」

「福島県民の意見等を踏まえて今後の対応を検討したい」

あまりに素っ気ない回答だったので「原発政策に関する大臣自身の意見を聞きたい。福島県民の思いを受けて大臣自身はどう行動するのか」と再質問したところ、抽象的ながらこんな前向きな発言が返ってきた。

「福島県民の思いを十分聞いて、政府の中でしっかりと福島県民の思いを発言していきたいと思う」

脱原発を望む福島県民の思いを発信しているのが、いまでも全国講演行脚を続ける小泉元首相だ。その講演でよく口にするのが「首相が決断すれば、原発ゼロはすぐに実現する」ということ。

そして実際に安倍首相(当時)に直訴していたが、聞き流されるだけだった。“原子力ムラ内閣”“経産内閣”とも呼ばれた安倍政権は、原発推進の総本山の経産省出身官僚が官邸で強い影響力を持っていた。その代表格の今井尚哉首相秘書官が菅政権誕生とともに退任。エネルギー政策を転換しやすい状況になってはいるのだ。

先の『サンデー毎日』の記事で聞き手の倉重篤郎・毎日新聞専門編集委員が、小泉氏に「原発政策、転換の好機?」と聞いたのはこのためだ。そして見出しにもなった次のような発言が飛び出していた。

「まさに大きなチャンスだ。菅政権が原発ゼロにして自然エネルギーで発展できる国にしようと決断すればできることだ。今原発をやめると言うと野党は反対できない。自民党も反対できない。反対する勢力は1割かそこらだろう。与野党の支持を受けるからこその長期政権だ。大きなチャンスが目の前にある。菅さんがそれに気がつくかどうかだ」

このチャンスに気がつく進言役を平沢大臣が買って出るのではないか? と筆者は思って大臣会見で質問したのだが、9日の時点では未読状態。しかし「福島県民の思いを発言していきたい」という意気込みは語っていた。かつての小泉氏と同じように、平沢大臣が菅首相に脱原発の直訴をするのか否かが注目される。

◆「原発批判」をするなと指示する「東日本大震災・原子力災害伝承館」

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東日本大震災・原子力災害伝承館

しかし9月26日に福島訪問をした菅首相の言動を見る限り、首相自身には原発政策転換の兆しすらない。福島第一原発を視察した後、「県立ふたば未来学園」(広野町)で学生から原発事故の風評被害対策に関するプレゼンを直に聞いたのに、講評で菅首相は原発について全く触れなかった。

その直後の会見でも今後の原発政策については語らなかった。そこで、安倍政権の原発推進政策を続けるのか否かの声掛け質問を2回したが、一言も発しなかったのだ(筆者記事「菅首相・河野大臣を直撃。『異論を排して国策を強行する』姿があらわに」参照)。

菅首相が平沢大臣らと一緒に視察した「東日本大震災・原子力災害伝承館」(双葉町)に対して、「(複合災害を経験した)福島の歩みを大いに発信する施設。多くの皆さんを感動させ、学習させるものがある」と称賛したのにも唖然とした。

この実態を9月23日の『朝日新聞』が「語れない『語り部』 特定団体の批判含めぬよう求める手引『被害者の私たち東電や国批判できぬのか』」という見出しで報じた(Web版では、『国や東電の批判NG? 伝承館語り部に要求、原稿添削も』という見出しで公開)。「福島の歩み」と言いながら、その内実は東京電力や国の批判につながるようなものは排除されるものだったのだ。

◆原子力伝承館に語り部が抱いた違和感

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東日本大震災・原子力伝承館(双葉町)の語り部、大谷慶一さん

伝承館の語り部の一人、大谷慶一氏(いわき市在住)は、『朝日新聞』が報じた語り部活動マニュアルを差し出し、「『特定の団体、個人または他施設への批判・誹謗中傷等』を『公演内容に含めないようにお願いします』」と書いてあることを示した後、福島県民の思いを次のように語った。

「私たち福島県民はここに住んでいますから『原発事故は人災』『東電に責任はある』と思っています。私は、語り部の講演で地方出張をするのですが、『原発反対』『原発廃炉』とはあまり聞かない。だからこそ福島県民は、原発事故の被害を受けた住民として、もっと発信をしないといけない。

『原子力 明るい未来のエネルギー』の標語を作った人が(開館式の9月)20日に来ていました。その人が言ったのは『写真ではなくて現物を飾ってほしかった』と。あの頃はみんな原発推進の雰囲気だったが、あの人にほしいコメントは『あの時にこんな標語を作って、ものすごく恥ずかしい思いをしています』だったが、そんなことは一言も口にしなかった。

ポスターは、原発事故を招いてしまった反省材料として残さないといけないのに、標語を作った本人も無反省で、写真を展示した人も反省を込めた解説文をつけていないのです。

伝承館にはずっと違和感があった。この違和感は何なのか。展示物はあるが、そこに(被災者の)感情、情念がないのです。故郷喪失がなぜ起きたのか。どこが間違っていたのかという思いが全然伝わって来ない。

福島県にある施設なのだから本来は、原発ゼロをもっとアピールしてもいいのではないか。県民のほとんどは原発廃炉(ゼロ)志向です。福島の悲劇を二度と繰り返さないために全国的にも原発ゼロを進めることを発信するのが伝承館のはずだと思うのです」

◆菅政権は「第三次安倍政権」にすぎない!?

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9月26日に初の地方視察として福島訪問をした菅首相

原発推進の安倍政権に忖度して産み落とされたような伝承館は、被災者の語り部が原発事故における国や東電の責任を語れない“隠蔽改竄館”と化していたのだ。そんな福島県民が違和感を抱く問題施設を絶賛するようでは、菅首相は安倍政権の原発推進政策を引き継ぐと宣言しているに等しい。

『毎日新聞』の倉重氏は「原発政策、転換の好機?」と小泉氏に問い掛けて、菅政権での原発政策転換の可能性があるかのような印象を与えていたが、菅首相の福島訪問を取材した筆者には「非現実的な絵空事」にしか見えないのだ。

福島第一原発事故における国の責任を認めた仙台高裁判決への対応を見ても、菅政権は第三次安倍政権にすぎないことが実感できる。平沢大臣は10月6日の会見で「判決は個別の案件ですからコメントは差し控えたいと思います」としか答えなかった。

福島県や隣県に住んでいた約3600人が起こした集団訴訟の合言葉は、「生業を返せ、地域を返せ!」。生業訴訟と呼ばれるのはこのためだが、その思いは先の大谷氏と同様、「原発事故の苦しみを他県の人たちに味わってもらいたくない」「日本全体で原発ゼロを実現してほしい」というものだ。

しかし平沢復興大臣は、高裁で初めて国の責任を認めた仙台高裁判決について何も語らなかった。国や東電の責任を語らせない伝承館を絶賛する一方、国の責任を認めた仙台高裁判決にノーコメントを通したのだ。

「菅政権(首相)は脱原発を望む福島県民の思いを実現する気配すらない」「原発政策転換の可能性はゼロに限りなく近い」というのが現時点での筆者の取材実感だ。第三次安倍政権のような菅政権に期待しても、裏切られるのが落ちとしか思えないのだ。

<文・写真/横田一>

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【横田一】

ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数

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