大阪の下町生まれの女の子を、のだめは世界へ連れて行ってくれた

大阪の下町生まれの女の子を、のだめは世界へ連れて行ってくれた

  • かがみよかがみ
  • 更新日:2022/01/15
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人生を変えられた「1冊」ではないのだけれど、人生を変えられた漫画は1シリーズある。「のだめカンタービレ」という漫画である。

楽器屋さんに置かれていた一冊の漫画。表紙に惹かれて購入すると

初めて出会ったのは、小学5年生の春。当時、私は小学4年生からクラリネットを始めていて、しょっちゅう楽器屋さんに足を運んでいた。そこの楽譜コーナーの一角に、その漫画は置かれていた。

なぜ私がこの漫画に心惹かれたのかと言うと、まず各巻の表紙に主人公の「のだめ」が、色んな楽器を持っている素敵な絵が描かれていたからである。クラリネットを始めて楽器のモチーフのグッズを収集していたので、その表紙が当時の私に響き、母に相談して集めるようになった。

好きなキャラクターは、オーボエの黒木くんだった。小学1年生から始めていたピアノは、それまであまりクラシック音楽には興味がなかったのだけれど、この漫画に出会ってから猛烈にクラシック音楽に興味を持つようになった。

だから6年生の時のピアノの発表会は、モーツアルトの「トルコ行進曲」を弾いた。そして中学に進学し、中高合同のオーケストラ部に入部した時に、運命に引っ張られるようにオーボエに転向してしまった。

オーボエに出会ってから、私の人生は面白いくらい自分の思う通りに運ぶようになった。

住む場所に無頓着だった私が自粛生活を経て、大好きな部屋を作るまで

のだめと出会って動き出した人生。良い仲間にも恵まれた

幸いにも私は生まれ持った才能として、「半年も楽器を練習すれば、そこそこ上手くなる」という能力を持っていたらしく、クラリネットを始めた時も、1学期が終わる頃には「クラリネットセクションの誰よりも上手に吹けるようになった」と顧問の先生に褒められ、オーボエを始めた時も、夏休みに指導で来ていたOGに、「この上手に吹ける子は、一体誰?」と尋ねられた。

この成功経験は、ずっと私の中で自信となって、音楽の道を選択する原動力になってきた。

学校で借りているボロの楽器で練習するのは物足りなくなって、母に「自分の楽器が欲しい」と強請っていると、母は私に先生を見つけてきてくれた。さらに先生はその時ちょうど、自身も新しい楽器を探している最中で、「ちょうど良いオーボエが2本あるから、そのうちの1本をあなたに譲ってあげる」と、私は今なお世話になっている素晴らしい師と共に、求めていた楽器も一度に手に入れることになった。

それから内部進学した高等学校では、クラシック音楽専攻生として、良い仲間にも恵まれながら、良い環境で3年間勉強できた。

浪人はしたけれど志望していた通り、公立の芸術大学にも入学できた。

物語が、大阪の下町生まれの私を音楽の世界へ連れて行ってくれた

2010年に完結した「のだめカンタービレ」は、後半は舞台をパリへと移し、のだめは恋人(?)の千秋真一と共に、より濃くより深くクラシック音楽の世界へと進んでいった。

私がヨーロッパへ音楽留学をしたいと思ったのは、そのことも理由の一つになっていたのかもしれない。2018年の夏に初めて、先生探しのためにヨーロッパへ渡り、そこで出会った世界的オーボエ奏者に誘われたことで、2019年の9月からスイスのルツェルンでの、留学生活が始まることとなった。

一つの物語が、大阪の下町生まれの小さな女の子を、クラシック音楽の世界の真ん中へ連れて行ってくれた。

その不思議な運命の波に流されながら、恐ろしくなったり、興奮で眠れない経験をしたり。私にはあまりにも荷が重く、ふさわしい居場所ではないと落ち込んだり、逃げたく思ったこともあるけれど、素晴らしい先生方と音楽を通して心を通わせられたりすると、その喜びに胸を打たれた。

芸大、海外留学を経験すると、さすがに全員がのだめのようなキラキラとした群青生活を送れると断言できない。けれど音楽家になることの喜びや悲しみ、信じられないような出会いと思いがけない運命の力を、のだめを通して知ることはできる。

私はその荷の重さに耐えられなくなって、クラシック音楽の世界からは少し離れてしまったけれど、今後のだめに出会って音楽の世界に迷い込んでしまう子たちが現れることを、期待している。

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はいじ

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