
(漫画:©︎三田紀房/コルク)
記憶力や論理的思考力・説明力、抽象的な思考能力など、「頭がいい」といわれる人の特徴になるような能力というのは、先天的に決められている部分があり、後天的に獲得している能力は少ないと考える人が多いのではないでしょうか。
その考えを否定するのが、偏差値35から東大合格を果たした西岡壱誠氏です。漫画『ドラゴン桜2』(講談社)編集担当の西岡氏は、小学校、中学校では成績が振るわず、高校入学時に東大に合格するなんて誰も思っていなかったような人が、一念発起して勉強し、偏差値を一気に上げて合格するという「リアルドラゴン桜」な実例を集めて全国いろんな学校に教育実践を行う「チームドラゴン桜」を作っています。
そこで集まった知見を基に、後天的に身につけられる「東大に合格できるくらい頭をよくするテクニック」を伝授するこの連載(毎週火曜日配信)。連載を再構成し、加筆修正を加えた新刊『なぜか結果を出す人が勉強以前にやっていること』が、発売後すぐに3万部のベストセラーとなっています。第90回は東大生が150分にも及ぶ長い試験時間で、集中力を維持できる背景を解説します。
一般的には90分が限界とされるが・・・

受験シーズンが近づき、大学入学共通テストまで2カ月を切りましたね。今、全国で多くの受験生が、試験問題を解く訓練をしています。
さて、みなさんは人間の集中力がどのくらい続くかご存じでしょうか?
一般的には90分が限界と言われており、極度に深い集中だと15分程度しかもたないそうです。学校の授業が50分前後で終わるのも、子どもの集中力が続かなくなるからですね。
しかし、大学入試となると話が別です。試験時間が90分を超えることもザラで、東大入試だと150分の科目が2つもあります。普通なら「そんなに集中力が持つの?」と思いますよね。
ですが、合格する人なら途中で集中力が切れるということはありません。試験中に集中力を保つコツを、みんな実践しているからです。
マンガ『ドラゴン桜』では、そのコツが具体的に説明されています。初の東大模試に挑む生徒に桜木先生がアドバイスをする、こちらのシーンをご覧ください。
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(漫画:©︎三田紀房/コルク)




(漫画:©︎三田紀房/コルク)



(漫画:©︎三田紀房/コルク)
いかかでしょうか。出題者との対話ができれば、長い試験もあっという間に感じるという話でした。対話とは具体的に、問題の内容や形式から出題者の意図を考えることです。面接試験と似て、相手がこちらにどんな答えや能力を要求しているのかを考えるわけですね。
そもそも試験で集中力が切れるのは、たいてい出題者との対話が成立していないときではないでしょうか? 「こんなのわかるわけない」とあきらめたくなったり、「何でこんな問題を出すんだ」と出題者に対して不満を抱いたり。そのうち「もう適当でいいや」と投げやりになって、あとは試験が終わるのを待つだけになりますよね。
ですが、問題文を読みながら「この条件は何に使うんだろう」、「どんな答え方を要求されているんだろう」と対話さえできれば、本当に試験はあっという間です。150分の試験でも、「もっと時間をくれ!」と言いたくなるくらいです。
どう出題者との対話力を高める?
この対話力を高めるコツは、実際の入試問題をたくさん解くことです。東大生は過去問を20~30年分解くのも当たり前なくらい、ひたすら問題を解きながら出題者の意図を見抜く目を養っています。
また、過去問に手を付けるタイミングも早い人が多く、高2の冬から高校3年生の春くらいにはもう解いていたというケースもあります。普通ならしっかり実力を固めたうえで、直前に力試しとして解くイメージがあるのではないでしょうか?
ですが、東大生に話を聞いてみると、高い点数で受かった人ほど過去問を早く始めていた傾向があります。早めに取り組んでおくことで、勉強の効率を上げられるからです。
入試問題を実際に解いてみると、問題のレベルや出題形式に加え、今の実力での点数と目標点までの差がわかります。これによって自分の課題が明確になり、普段の勉強で意識すべきポイントがわかって効率が上がるのです。
マラソンで例えれば、現在地とゴールまでの距離、コースの起伏などを確認することで、初めてレースの戦略が立てられるようになる感じでしょうか。
私がこれを強く実感したのは、世界史の過去問を見たときでした。東大の世界史は「第2次世界大戦中の出来事が、どんな形で1950年代までの世界に影響を与えたのか?」というように、単純な知識が問われる問題ではありません。
文字通り「世界の歴史」という、大きな枠組みの中で物事をとらえる視点が要求されます。
それまで私にとって歴史は「人名や出来事をただ覚えるだけのつまらない科目」にすぎませんでしたが、ここで初めて歴史の勉強の仕方や学ぶ意味がわかったのです。
歴史はずっと大の苦手でしたが、この経験のおかげで出題者と対話する力がつきました。初めて150分間集中して問題を解ききった時は、大きな達成感があったことを覚えています。
早い時期から過去問を解いたほうがよい
中には「過去問なんて自分にはまだ早い」と謙遜し、自分の実力がふさわしいレベルまで高まってからやりたいと思う人もいるかもしれません。
ですが、経験するだけなら早いに越したことはないでしょう。実際の試験で出された問題を解いてみない限り、自分に要求されている実力がどんなレベルなのか、本当の意味ではわからないからです。
また、基礎的な勉強はたいてい面白味のないものですが、過去問を解くことで「こんな形で基礎が必要になるのか」と学ぶ意味がわかり、より普段の勉強に気持ちが入ることもあるでしょう。
出題者の意図と向き合うことは、集中力をキープするだけでなく、さまざまな形で勉強の効率を上げることにもつながります。大きな試験に向かって勉強する際は、この対話の姿勢をぜひ参考にしてみてください。
(青戸 一之:東大卒講師・ドラゴン桜noteマガジン編集長)
青戸 一之