歌人芸人・岡本雄矢さんのフリースタイルな短歌&エッセイ集『全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割』が評判上々。たったの31文字で、世界はこんなにも情けなく、こんなにもドラマチックに!バッタを不幸仲間にした、今日の #不幸短歌 。
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偽物じゃない僕たちは本物だ2万のバッタのシュプレヒコール
この連載では、自分の不幸を短歌とエッセイにして数多く書いてきましたが、今日は別の方の不幸を書いてみようと思います。
僕が最近不幸だと思っているのは、バッタです。
そうです。みなさんが知っている、あの昆虫のバッタです。
僕が彼らを不幸だと思う理由は「バッタもん」という言葉にあります。
バッタもんとは、簡単にいうと偽物の商品のことです。
有名ブランドなどの偽物の品を指す時によく使われます。
考えてもみてください。
自分の名前が偽物を指す時に使われるというのは、とても悲しいことではないでしょうか。
自分は確実に存在しているのに、その存在が否定されているかのような言い方。
とても悲しく切ないことだと思います。
しかも「バッタもん」の由来を調べてみると諸説あるそうですが、最後にこう書かれています。
「バッタもん」の「バッタ」は昆虫とは関係がないという説が有力である。

(写真:iStock.com/Studio Manzoni)
バッタさん、よかったじゃないですか。
「バッタもん」は君らのことじゃないみたいですよ。
と一瞬は思ったものの、いや待てよと考え直します。
自分はなにもしていないのに、偽物と言われる始末。
「バッタもん」からバッタを想像させておきながら、実はバッタではなかったという、バッタにとっては何重にも失礼な話。
ただピョンピョン飛んでいただけなのに、ひどい仕打ちです。
今はそんな事実も見過ごしてくれているバッタ達ですが、僕らが「バッタもん! バッタもん!」と騒ぎすぎたならば、いつか。
彼らは群れになって襲ってくるのではないか。
そんなことが、たまに心配になります。
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岡本雄矢