プレミアリーグが中国との放映権契約を打ち切り...原因はビジネス面と両政府間の関係悪化?

プレミアリーグが中国との放映権契約を打ち切り...原因はビジネス面と両政府間の関係悪化?

  • サッカーキング
  • 更新日:2020/09/15
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[写真]=Getty Images

◆良好な関係を続けてきたが……

プレミアリーグが世界最大の市場の一つを失ってしまった――。3日、プレミアリーグは中国の『PPスポーツ』と結んでいた放映契約を打ち切った。表向きはビジネス面がその理由とされているが、そこには英国と中国の両政府間の関係悪化がありそうだ。

プレミアリーグと中国はこれまで、蜜月とも言える良好な関係を続けてきた。昨年7月には、プレミアリーグの試合が『PPスポーツ』でストリーム配信されるようになったが、その契約料は2019年からの3年間で5億6400万ポンド(約789億円)。2019~2022年サイクルの契約料で、最も高額なものの一つだったと報じられている。

『PPスポーツ』の親会社の蘇寧グループ(インテルの所有者)は、この莫大な放映権料を賄うべく、同国最大のIT企業『アリババ』に同社の持つストリーミングサービスとの合併を持ちかけたが、合意には至らなかった。このように、もとより資金繰りが楽ではなかったところに、新型コロナウイルスの影響でプレミアリーグが中断。視聴者の解約や広告の減少により、蘇寧グループは大きな打撃に見舞われた。

リーグが再開すると、今度は中国と英国の両政府の間で緊張が高まり、「中国の国営放送『CCTV』がプレミアリーグの試合を放映しなくなるのではないか」と英国で報じられた。中国政府はその噂を否定したものの、7月22日の第37節チェルシー対リヴァプール戦が『CCTV』の主要チャンネルから外れ、視聴者数の少ないサブチャンネルで放映されている(『CCTV』は『PPスポーツ』から試合単位で放映権を買っている)。

さらに、放映権を持つ『PPスポーツ』は、今年前半にプレミアリーグに支払うべきだった1億6000万ポンド(約225億円)を差し控えていた。このため、プレミアリーグは各所属クラブとともに法的な手続きの準備に入ったと報じられており、そのまま3日に契約の打ち切りが決まった。

◆下位クラブは大きな打撃を被ることに

そもそも『PPスポーツ』が支払った放映権料は、前回のおよそ10倍にも上り、利益の回収はもちろん、持続の可能性も疑わしいものだった。放映権の獲得のためだけに、単純計算でリーグ1試合あたり約50万ポンド(約7044万円)のコストが支払われたことになる。プレミアリーグにはもちろん、マンチェスター・C対リヴァプール戦もあれば、バーンリー対ワトフォード戦もある。後者のような試合に、果たしてそれだけの価値があるだろうか。

『PPスポーツ』は強気な入札で放映権を獲得したが、パンデミックの影響もあって厳しい状況に立たされ、現行契約の見直しをプレミアリーグ側に申し出た。しかし、プレミアリーグ側は世界で最も人気のあるリーグという立ち位置を利して、交渉を優位に進めていったのだろう。

とはいえ、こんな形で決着してしまった今、各クラブ、特に放映権料に大きく依存する下位クラブは大きな打撃を被ることになる。また現在の経済状況を考慮すれば、彼らに取って代わるブロードキャスターを探すのにも苦労するに違いない。プレミアリーグとしても、慎重に事を進める必要があったのではないだろうか。

この問題はビジネス面だけでなく、政治的な意味合いも濃い。ボリス・ジョンソン首相を筆頭とする英国政府は、5G事業からファーウェイを締め出したうえ、中国が香港国家安全維持法を施行した際には香港市民に英国市民権を与える表明をし、両国間の緊張が高まっていた。7月に『CCTV』がプレミアリーグを格下げ放映したのは、中国政府の仕返しではないかと見る向きもある。なぜなら中国政府には、ほかのプロスポーツに厳しい姿勢を打ち出した前例があるからだ。

昨年、NBAのヒューストン・ロケッツのダリル・モリーGMが香港の反政府デモへの支持を表明すると、中国国営放送はNBAの放映を中止した。さらには、アーセナルのメスト・エジルが「中国でウイグルのイスラム教信者たちが不当な扱いを受けている」と発言すると、中国全体がこの元ドイツ代表MFを排斥する動きを見せた。

今回はプレミアリーグ側が妥協しなかったように見えるが、これほど大きな損失は許容できるものだったのだろうか。

文=超明
翻訳=井川洋一

サッカーキング

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