谷中の魅力といえば、やっぱりお寺!“寺嫁”さんにお寺のこと聞いてみた

谷中の魅力といえば、やっぱりお寺!“寺嫁”さんにお寺のこと聞いてみた

  • さんたつ by 散歩の達人
  • 更新日:2023/01/25

住民よりお墓の数が多い谷中。お寺の緑や史跡、静けさは心を潤してくれる。そんな谷中のお寺に嫁ぎ、お寺の仕事をしつつ子育てなど地域とも関わる方々に、お寺のこと、谷中の良さを聞いてきた。

お寺の“中の人”たちが感じていること

谷中で暮らす人々にとって、お寺の存在は心の癒やしだ。境内の植物に季節を教わり、夕暮れの鐘の音で1日の終わりを実感する。そんなお寺の“中の人”たちは、どんなことを感じて過ごしているのだろう。
最初に笑顔で迎えてくれたのは宗林寺の梶原千恵子さん。結婚前は劇団に所属していて、1982年に現住職に嫁いだ。

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宗林寺の梶原千恵子さん。「若い人たちからいつも元気をもらっています」

「大所帯で10人分の食事の支度が大変。さらに大正生まれの姑は礼儀作法に厳しい上、お寺の仕事は『見て覚えて』の人だったので必死でした」
憎く思ったこともあったが亡くなると寂しく、今も懐かしく感謝しているという千恵子さん。「子育てがひと段落してからは、本来の自分らしく生きようと思いました」。
今最も刺激を受けているのが、お隣の『HAGISO』などを運営する「HAGISTUDIO」の人々との関わりだ。
「代表の宮崎晃吉さんが2012年にハギエンナーレというアートイベントをやらせてほしいと頼んで来たのが縁。以来、大家としてうるさく口を突っ込んでます(笑)」
宗林寺やその周辺が、文化や芸術の拠点になればと語る。

お寺の外に出ることも大事な仕事

平井ひまりさんが嫁いだのは、このあたりでも大きなお寺の全生庵。出入りする人の数も多く、修行道場のような生活に最初は戸惑ったという。だが、立て続けに子供に恵まれ、無我夢中で生活するうちに自分のペースをつかめるようになったと教えてくれた。

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全生庵の平井ひまりさん。「3歳のお子さんも素読や坐禅、立派にできますよ」

「お寺の外に出て地域とここをつなぐことも重要だと思い、幼稚園や小学校のPTA活動に携わるようになりました」
数年前からは子供向けの論語と坐禅の会を運営。コロナ禍でも学びの場を守りたいと中断せず続けている。
長安寺の杉村暢子さんが静岡から嫁いだのは2001年。お子さんが2歳の頃に先代住職の妻だった「お寺のお母さん」が急逝。“寺嫁”さん仕事を子育てしながらすることに。

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長安寺の杉村暢子さん。「本堂の畳に映る松の木の影を眺めると、心が落ち着きます」

「近所の人が話を聞いてくれたり、子供を見てくれたりして、とても助けられました。おかげさまで、17歳の息子はご近所さんと今でも仲良し。年配の方の多い町会の旅行にも楽しげに参加しています」
谷中の人が持つ、優しいけれど踏み込み過ぎない距離感が心地よいという。

境内には穏やかな空気がいつも流れている

養福寺の根岸友紀子さんもお寺とこの地域が大好きだ。

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養福寺の根岸友紀子さん(右)。「きどってなくて、電車見放題!子育てしやすい街です」

「満員電車などでピリピリしていた会社員時代とは真逆の、お寺の穏やかな空気に癒やされました」
永久寺の平塚希美子さんも「寺社がたくさんあって、落ち着いたこの雰囲気は他にないもの。小学校の同級生たちも、引っ越しても戻ってくる人が多いです」とうなずく。

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永久寺の平塚希美子さん(右)。「千駄木駅すぐ『らぁめん末廣』(実家)にも足をお運びください!」

寺嫁さんたちもそれぞれお寺に愛着を持ち、地域での生活を慈しんでいるのが印象的。
景観や文化財を守ってくださることに感謝して、引き続きお寺散策を楽しみたい。

宗林寺(そうりんじ)

萩が咲きこぼれるさまが壮観な通称“萩寺”

徳川家康の家臣で茶師だった斎藤宗林が駿府(静岡県静岡市)の地に開基し玄龍院日辰が開山。慶長9年(1604)、江戸開府の頃に神田昌平橋に移転、その後上野東寺町へ、さらに元禄14年(1701)、現在の地に移転したといわれている。鐘楼の奥に見える黒い建物は、築60年の木造アパートを改修しカフェやギャラリーとして親しまれている『HAGISO』。宗林寺が大家さんだ。

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台東区の有形文化財に指定されている銅鐘。

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ジェラート『asatte』がお寺の隣にオープン。スタッフと仲良しの千恵子さん。

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宗林寺の梶原千恵子さん。「若い人たちからいつも元気をもらっています」

宗林寺(そうりんじ)
住所:東京都台東区谷中3-10-22/営業時間:8:00~17:00/定休日:拝観自由/アクセス:JR・私鉄日暮里駅から徒歩5分

永久寺(えいきゅうじ)

梅雨に咲くイワガラミと猫史跡が目印

元和5年(1619)谷中玉林寺2世である風室洪春大和尚の隠居寺として創建。江戸末期から明治初年にかけての代表的戯作者仮名垣魯文の墓がある。本堂右側の山猫めをと塚や、穴から眠り猫が見える猫塔記念碑は猫史跡好きならぜひ。梅雨に咲くイワガラミも見事。2019年に住職を引き継いだ平塚洪基さんは幼稚園や小学校のPTA活動にも積極的に参加。登校時の警備などを担う地域の見守り役だ。

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永平寺の厳しい修行で皆勤賞のご住職。

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永久寺の平塚希美子さん(右)。「千駄木駅すぐ『らぁめん末廣』(実家)にも足をお運びください!」

永久寺(えいきゅうじ)
住所:東京都台東区谷中4-2-37/営業時間:9:00~16:00/定休日:拝観自由/アクセス:地下鉄千代田線千駄木駅から徒歩7分

全生庵(ぜんしょうあん)

開催講座も多彩な山岡鉄舟ゆかりの寺

幕末維新期の政治家で江戸無血開城に奔走した山岡鉄舟が建立。近代落語の祖・三遊亭円朝が鉄舟に師事した縁で、全生庵には円朝の幽霊画コレクションが多数所蔵されており、毎年8月に公開されるのを楽しみにしているファンは多い。また、写経教室、日曜坐禅会、谷中寺子屋 こども論語&坐禅会(毎月第4金曜日開催。17:00~18:30、1人1000円)と、幅広い層が参加できる講座(すべて予約制)を開催。

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全生庵の平井ひまりさん。「3歳のお子さんも素読や坐禅、立派にできますよ」

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三世代で来ている家族も。

全生庵(ぜんしょうあん)
住所:東京都台東区谷中5-4-7/営業時間:9:00~17:00/定休日:拝観自由/アクセス:地下鉄千代田線千駄木駅から徒歩5分

長安寺(ちょうあんじ)

谷中七福神の寿老人が祀られる

行脚の老翁がこの地に留まり、徳川家康が納めたという寿老人の尊像を安置したお堂を長安軒と名付けて建立した。寛文9年(1669)に長安軒に泊まった僧・老山が翁からお堂を引き継ぎ、開山したとされる。墓地には東京美学校(現・東京藝術大学)の設立に尽力した狩野芳崖と妻ヨシが眠る。境内の四季折々の植物や景色が楽しめる公式Instagram(@choanji_yanaka)も必見。

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1月1日~10日まで拝観できる寿老人。

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長安寺の杉村暢子さん。「本堂の畳に映る松の木の影を眺めると、心が落ち着きます」

長安寺(ちょうあんじ)
住所:東京都台東区谷中5-2-22/営業時間:6:00~17:00/定休日:拝観自由/アクセス:JR・私鉄日暮里駅から徒歩6分

養福寺(ようふくじ)

赤い仁王門と阿吽の仁王様がお出迎え

法印乗蓮という初代住職によって江戸時代初期に開かれた。現在第28世根岸榮宏さんが住職、息子栄貴さんが副住職を務める。本堂や鐘楼堂、観音堂などの境内の建物は空襲で焼失したが仁王門だけが残った。両脇に祀られている仁王像は宝永5年(1708)の作。談林派歴代の句碑や、江戸時代の風流人「自堕落先生」の墓、江戸時代の漢詩人柏木如亭の碑など、文人の碑があることでも有名。

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養福寺の根岸友紀子さん(右)。「きどってなくて、電車見放題!子育てしやすい街です」

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除夜の鐘で人気の鐘楼。

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戦災を免れた仁王様。

養福寺(ようふくじ)
住所:東京都荒川区西日暮里3-3-8/営業時間:8:00~16:30/定休日:拝観自由/アクセス:JR・私鉄日暮里駅から徒歩5分

取材・文=仲間麻美 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2023年1月号より

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