
国土交通省HPより(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001613031.pdf)
マイホームの購入を検討している人にとって、資金面で頼りになるのが「住宅ローン減税」だ。住宅ローン減税とは、住宅ローンを借り入れて住宅を購入または増改築した場合、年末のローン残高の0.7%分の税金が新築住宅は13年間、中古住宅で10年間控除されるしくみだ。住宅ローン控除とも呼ばれ、正式名称は「住宅借入金特別控除」という。
この住宅ローン減税が2024年からルール変更になる。住宅ローンにおける年末の借入限度額が引き下げられるほか、新築住宅は省エネ基準に適合しないと、住宅ローン減税が受けられなくなってしまうのだ。
建築物省エネ法の改正により、2025年度から原則すべての新築建築物について、省エネ基準への適合が義務化されるため、住宅ローン減税の変更のみ先行して行われる格好だ。
● 省エネ基準適合の新築住宅では控除額最大273万円→ゼロに
国土交通省によると、省エネ基準に適合している住宅は、令和元年時点で新築戸建住宅は80%超、新築共同住宅は約72%となっている。つまり、約2割の新築住宅は住宅ローン減税が受けられない可能性があるのだ。
新築住宅が省エネ基準適合住宅の場合、年末ローン残高が3000万円であれば控除額は最大273万円となるが、省エネ基準に適合しない住宅では控除額ゼロとなるため、その差は大きい。
それではこれからマイホームを購入する場合、どのように対処すればいいのだろうか。米森まつ美税理士に聞いた。
●2023年以内の購入は「年内居住または建築確認完了」がポイント
ーー住宅ローン減税の制度変更を踏まえ、これからマイホームを購入する際、どのように対処すればいいでしょうか。
住宅の購入(契約)前に次の2点を確認することをお勧めします。1点目は「住宅の引き渡し日と居住の用に供することができる日」です。従来より住宅ローン控除は、住宅の新築等の日から6か月以内、かつその年の12月31日までにその者の居住の用に供していないと適用になりません。
また、居住した年によって控除額の計算の基礎となる「住宅借入金等の年末残高」の上限額が異なり控除額も異なることから、居住する年(日)は意識されていたと思います。
改正後では特に、新築住宅・買取再販住宅(以下、新築住宅等)で、省エネ基準に適合しない住宅(以下、その他の住宅)は、2023年中に居住の用に供していない場合には住宅ローン控除が受けられなくなる可能性が高くなりますので、契約等の時点で実際に居住できる(引っ越しできる)日を確認しないといけません。
2023年末が住宅の引き渡しで、年末まで住民票を移していないのであれば、水道光熱費の契約や引っ越し業者の手配などを早急に行い、場合によっては所有者だけでも年内に引っ越すなどして、2023年中に居住の用に供したことを明らかにする書類を保存するなどの対処が必要になります。
2点目は「住宅の種類・性能」です。住宅の種類・性能により、「住宅借入金等の年末残高」の上限額が異なりますので、次のうちのどれに該当するか確認します。
1.購入又は建設する住宅が、新築住宅等であるか既存住宅であるか
2.省エネ基準に適合している住宅であるか
3.新築住宅等の場合は次のいずれかに該当するか
a.認定長期優良住宅・ 認定低炭素住宅
b.ZEH水準省エネ住宅
c.省エネ基準適合住宅
d.その他の住宅
住宅借入金等の年末残高の上限額は、省エネ基準に適合しているほど高く、更に省エネ基準もaからdの順に上限額が低くなり、2024年入居以降は「d.その他の住宅」は一部を除き、住宅ローン控除を受けることができなくなります。
しかし、「d.その他の住宅」で居住が2023年中にできなくても、建築確認が2023年中に完了していれば、引き渡しが完了していなくとも、住宅借入金等の年末残高の上限額が2,000万円となり住宅ローン控除の対象となります。
引き渡しも居住(引っ越し)も年内にできないからといって諦めず、2023年中に建築確認が完了するか否かを確認されることが肝心です。
●2024年以降の購入では、場合によっては中古住宅も検討
ーー2024年以降にマイホームを購入する場合、上記以外でどのようなことに注意すればいいかお教えください。
省エネ基準に適合した住宅の方が、控除額の計算の根拠となる住宅借入金等の年末残高の上限額が高くなるのは前述のとおりです。
そこで契約の前に、その住宅が省エネ基準に該当するか否かを不動産会社に確認することや、注文住宅の場合は建設業者や建築士等への確認が必須となります。なお、省エネ基準に適合した住宅の取得価額は、省エネ基準に適合しない住宅に比べて割高になることは否めません。
ただし、既存住宅(いわゆる中古住宅)の場合は、省エネ基準に適合しない場合であっても他の要件(所得要件など)を満たせば住宅ローン控除は受けられます。
そこで、新築住宅等で「その他の住宅」を選択するよりも、物件によっては既存住宅を選択することも視野に入れて、ご自身のライフプランに合った物件を選ぶことをお勧めします。
ーー今年も含め住宅ローン控除を受ける際のその他注意点もあればお教えください。
毎年確認すべき注意点として「所得要件」があります。住宅ローン控除を受けられる所得者の合計所得金額の上限は2,000万円です(2022年度改正で3,000万円から変更)。所得要件の金額は、最初に控除を受けた年のみではなく、控除を受ける年ごとの合計所得金額の上限となっています。副業をされている方や所得要件のボーダーラインにいらっしゃる方は、場合によっては働き方などを調整する対応が生じます。
また、住宅ローン控除は「時限措置」として始まった制度です。しかし、住宅市場は関連する業種が多いため、控除による高い経済効果が見込めると同時に、住宅取得者側も減税を期待してライフプランを策定するようになり、制度が見直されてきました。
政策的な意味合いの強い制度であるため、購入年等によって適用要件、控除率、年末残高の上限額や控除期間も異なりますので、ご自身が住宅の購入を検討されるときには、その都度要件を確認されることが肝要となります。
特に、2026年以降に住宅を購入される場合は、住宅ローン控除の延長の有無や要件の変更(改正内容)を確認することが必須となります。
参考 : 「財務省 住宅ローン控除の見直し(令和4年度改正)」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/income/063a4.pdf
【取材協力税理士】
米森まつ美税理士
2017年開業。記帳代行や申告書作成にとどまらず、「人を大切にする経営」をベースとした「経営計画書」と「未来会計」で中小企業を元気にすることを使命としている。
元国税OG、源泉所得税の審理を長く経験したことを生かし、法人税などの審理経験の長い税理士と共に「しんり(国税審理経験10年以上の税理士グループ)」(https://shinri-zei.com/)でも活動している。
事務所名 :米森まつ美税理士事務所
事務所URL:https://www.kaikei-home.com/yonemori-kaikei/