バイオテクノロジー産業が米FRBによるインフレ対策の最初の犠牲に

バイオテクノロジー産業が米FRBによるインフレ対策の最初の犠牲に

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2022/09/23
No image

米連邦準備制度理事会(FRB)の0.75%の利上げがバイオテクノロジー産業に、ひいては国の健全性におよぼす影響について真剣に考える必要がある。過去30年間で最も急速にインフレが進行しており、利上げがこの経済的困難に対処するための唯一の手段であることを考えると、意図しない結果をもたらすことは確実だ。

金利とインフレ率が上昇を続け「より安全」な固定利回り証券と資本市場の大きな変動に直面しており、投資家は当然のことながら警戒を強めている。したがって、バイオテクノロジー企業のようなリスクの高い長期成長企業への投資は減少せざるを得ず、この業界の継続的な成長は弱々しいものになる。

年間の利上げ幅は3.25〜3.5%になる見込みだ。2023年末にはさらに上昇し、3.75〜4%になると予測されている。このような利上げは、バイオテクノロジー部門が存続するために資金調達する能力をさらに損ない、これまでで最も大きな難題となる可能性がある。では、バイオテクノロジー部門が行き詰まったらどうなるのか。

1980〜2021年にバイオテクノロジー企業635社の新規株式公開(IPO)があったことを考えてみよう。このうち、2020年と2021年に上場したのは173社(27%超)だ。これまでで最多で、そうした企業はすべてバイオテクノロジーの医薬品プログラムの90%が失敗するという歴史を念頭に今では少なくなってきている真剣な投資家からの資金援助を必要としていた。

これらのバイオテクノロジースタートアップの多くは、科学には長けているがビジネスの経験が乏しい個人が率いており、その財務モデルも経験したことのない逆風にさらされている。投資銀行が規模を縮小し、スタッフを削減する中で、スタートアップは資金調達をどこに頼れるだろうか。

バイオテクノロジーを専門とするプライベートエクイティファンドや投資会社は、大きな損失を被る中、承認や市場投入が近い後期開発段階にある医薬品を持つ企業への投資にますます力を注ぐようになっている。市場が不確実性を嫌うのはまったくその通りであり、このためバイオテクノロジーのIPOは資金調達の見通しが立たないままだ。大手製薬会社でさえ新薬開発への関心を失いつつあり、代わりにコスト削減とベストセラーとなっている医薬品の売上増に注力している。

このようなイノベーションに対する支援の欠如は、リスク回避型の投資家にとっては賢明なことかもしれないが、全体として人々の健康には何の利益ももたらさない。新しく優れた治療薬(新しい抗生物質だけではない)がなければ、病原菌は既存の治療法や身体の防御機能を回避するために変化し続ける。このような耐性菌に全国の病院の集中治療室は直面している。そのコストは驚異的だ。米国では耐性菌に冒された患者の治療に200億ドル(約2兆8800億円)を費やし、さらに350億ドル(約5兆390億円)の生産性の損失が発生している。

今回の事態は、米政府の債務が31兆ドル(約4470兆円)近くに上り、毎年4000億ドル(約58兆円)の債務返済を余儀なくされている中でのものだ。負債は現在、国内総生産の130%超だ。そして、あらゆる経済部門がインフレの脅威にさらされている。

医療は特にバイオテクノロジーでのイノベーションに支えられているが、民間部門はこのようなハイリスク・ハイリターン企業への投資に慎重になっている。公共部門は国の通貨制度の「信用と信頼」に依存しており、1979年以来のインフレ率でストレスを受けている。新しい投資資金はどこから来るのだろうか。

現在のバイオテクノロジーモデルはかつてない規模の圧力に直面している。では、必要とされるバイオテクノロジーのイノベーションを維持するためには、どのように修正すればよいのだろうか。現況を見ると、インセンティブがなければバイオテクノロジーへの投資はほとんど行われない。特にこの高インフレの時代にはそうだ。

成功率が低く、発見から市場に出るまで平均10年以上かかり、成功する医薬品1つにつき26億ドル(約3750億円)のコストがかかるとされていることから、すべてのバイオテクノロジー企業は大きな投資リスクを抱えている。リスクを軽減する1つの方法は、過去に行われたような税制上のインセンティブを提供することだろう。このようなインセンティブにはさまざまなかたちが考えられるが、結果的には長期的なプロジェクトへの投資に対する短期的な報酬となる。

一見すると圧倒的なリスクにもかかわらず、パンデミックやその他の健康上の国家的脅威の時代には、リスクを引き受ける以外の選択肢はほぼない。自己満足に浸っている場合ではない。なぜなら、みんなの健康は大胆な行動にかかっているからだ。

forbes.com 原文

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加