受験生に「がんばれ」は意味がない?子ども4人東大理III合格佐藤ママ「入試あるだけ御の字」

受験生に「がんばれ」は意味がない?子ども4人東大理III合格佐藤ママ「入試あるだけ御の字」

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  • 更新日:2021/01/13
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佐藤亮子さん(撮影・小原雄輝)

いよいよ受験シーズン本番。16日には、初めての「大学入学共通テスト」が実施される。コロナ禍で受験生の不安は膨らむが「受験が今まで通りに実施され、無事に受けられることをありがたいと思ってほしい」と話すのは、3男1女の子ども全員が東京大学理科III類に合格した佐藤ママこと、佐藤亮子さんだ。その訳をきくと、受験を超えて人生に大事なことが見えてきた。

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――緊急事態宣言下の受験シーズンが本格的にスタートします。今年の大学入試は、初めての共通テストという新しい要素もあり、受験生の不安は例年以上だと思われます。

佐藤亮子さん(以下、佐藤ママ):今の状況でこの時期、受験生が焦る気持ちはわかります。でも、1日は24時間ということは変わらず、自分の持ち時間が延びたり、短くなったりはしません。要するに、試験当日まで、去年の受験生と同様にできることを淡々とやる覚悟をすることです。

準備不足が心配なこともあるかもしれませんが、そもそも準備万端な受験生なんていません。みんな大なり小なり不安を抱えていますから悩まなくても大丈夫。悩んでいる暇があったら、自分が「これでは絶対に点が取れる!」という問題は、本当に本番で必ず点数に結び付けられるか再確認してください。解けるつもりの問題を油断して落としてしまったという話は意外と聞きます。点数が取れる自信がある問題を自分の手持ちの武器にして全力で戦うことです。

センター試験から共通テストに変わったので、「今年は過去問がない」と嘆く声をよく聞きますが、よく考えてみてください。来年の受験生だって、過去問は一年分しかないのですよ。過去問を過去問として役立てるには、10年分くらい必要ですから、共通テストの過去問の恩恵を受けるのは今の小学生からかな?2回のプレテストでも十分共通テストを予想できますから、大まかな傾向は掴んでおく必要はあります。今は、ネットなどでも共通テストの傾向の話は出ていますから見ておいてください。共通テストが「初めて」という条件は全国の受験生全員が同じです。プレテストでわかる情報から準備して、心づもりをして臨みましょう。

――新型コロナウィルスの感染拡大という想定外の事態も重なりました。今年の受験生は大変ではないでしょうか。

佐藤ママ:人間は、自分が生まれた時代を必死で生き抜かなければならない運命にあります。だから、今の時代に生きていることを恨んだりすることは見当違いです。未知のウイルスの流行は100年に一度の事態かもしれませんが、冷静に対処すればいいだけです。感情的になって嘆いても意味がありません。

今は、いつもより厳格な感染予防は欠かせませんが、そのほかのことは今までの受験生と何も変わりません。受験場に行って合格を目指して必死で目の前の問題を解けばいいのです。今後コロナの状況がどのようになっていくのか、全く読めないし、まして来年の今ごろはどのようになっているのか想像すらできません。このような時には、楽観的に考えずに、できるだけの心構えをするべきなのです。だから、受験生は「今年しかない」という気持ちで臨んでください。

そもそも受験は大変なものです。幸い受験生自身が感染していないならば、いつもの入試と何も変わらないので全力で頑張ってほしいですね。

――佐藤さんは、試験を受けられるだけでも「御の字」といっていますが、それはどういう意味でしょうか。

佐藤ママ:受験生にとって、今年入学試験が実施されて本当によかったのです。コロナの状況がもう少し違ったものだったら入学試験はなくなっていた可能性もあります。だから、予定していた入試がなくならなかったこと、そのことを大事に考えてほしいのです。過去には1969年の東大紛争で入試が中止になったこともありましたし、戦時下では門戸は狭く苦しい受験だったでしょう。あなた方と同じ年ごろの子どもたちですから、それは大変だったと思います。

また、昨今の社会情勢を鑑みれば、家庭の事情で進学をあきらめた人もいるはずです。共通テストの受験料は3教科以上ならば18000円です。決して安くはありません。それを親御さんが払ってくれて、共通テストは無事に実施されるから、受けられるだけでも御の字ということです。だから、受けられることにまず感謝してほしいですね。

やれることを最後までやって、感謝の気持ちをもって試験に臨む。人間は、感謝の気持ちがあると問題を丁寧に解こうとしますから、それが目の前のチャンスをしっかりつかむことにつながるのではないでしょうか。

――佐藤家の4人のケースでは、すべての入試がスムーズにいった印象が世の中にはありますが、「今年度の受験は無理かもしれない」と覚悟したときもあったとか。

佐藤ママ:末っ子の長女の大学受験のときでした。娘は何事もまじめにきっちりやるタイプで、高校2年の2月ころ、勉強をがんばりすぎたせいか、熱が出て、だるさを感じるようになりました。3月の終わりには、首にしこりができてしまい、急性リンパ節炎が疑われました。

そのとき「命が一番大事。今年度は受験できなくてもいい。焦らず治そう」と母親として覚悟を決めました。高校3年の4月は、ほとんど学校にはいかず、自宅でゆっくり休ませました。受験の出ばなをくじかれた感はありましたが、ゆっくり休むうちに5月中旬にはしこりが消えて、学校にも行けるようになりました。

幸い、その後は体調を万全に整えることができ、現役で合格することができました。長女の受験の時は、心から「受けられただけでありがたい」という思いでしたね。

――なるほど、そうした経験もあって、「ありがたい」という言葉につながるのですね。しかし、頭ではわかっていても、不安をぬぐえないときもあります。心を落ち着かせるためのコツはありますか。

佐藤ママ:この時期は、今日1日の24時間をどうやって生きるのかだけを考えるのです。昨日のことはもう忘れる、明日のことも心配しない。今日やることだけに集中するのです。

でも、頭の中だけでその日にやることを考えていると、あれもやらなければ、これもやってないと焦りが募ります。目に見える形にすることが第一のコツでしょうか。

わが家の場合、センター試験の直前は、現代文、古文、漢文と1日にやるべき科目をひとつひとつ付箋にかいて、20枚ほど貼っておきました。やり終えたらそれをはがす。そうやってはっきり目に見えるようにしました。その日にはがせなかった付箋は次の日に残し、それにまた足していきます。例えば今日やり終えることができずに3枚残ったら、明日は17枚を新しく貼り、計20枚をはがすことに明日は集中する。そうやって、すべての科目をまんべんなくやるようにしていました。

心を落ち着かせるには、声を出すことも有効です。古文や漢文の注釈なども音読すると読み飛ばすこともなく気持ちも落ち着きます。

――試験前日に緊張してきたら何をすべきでしょうか。

佐藤ママ:当日の注意点を声に出して前日によむこと。例えば、共通テストは解答欄を間違えるといったマークミスが命取りになります。だから、(1)1問目から順番に解くこと(得意なところから解こうとすると答えを書くところがずれる恐れがある)(2)わからないときはあてずっぽうでもいいので一応答えをマークシートに塗りつぶしておく(後でもう一度考え直そうとして解答欄をあけておくとその後の答えを書き間違う)(3)とにかくどんどん次の問題に進むこと、というようなことを書いておいておくことです。

わかっていても、本番の時には忘れたりします。マークシート方式は、解答のズレが一番怖いですから、そうした注意点を箇条書きにしておいて15日に心を込めて音読するのです。

受験ではないですが、あるフィギュアスケートのコーチは、演技の前に選手に大事なことを声に出して言わせているという話を聞きました。自ら声に出すことで注意を喚起できるということです。何事も本番に臨むときにすべきことは同じだなと思いました。人間は本番を前にするとやはり少なからず緊張して、それまで何度も何度も確認してわかっているはずのことでもできなくなってしまうものなのです。最後の最後で、口に出し自分の声を耳に入れることがミスを防ぐことにつながります。

不安は心の中に抱え込むと膨らむものなのです。その不安は、声に出すことによって吐き出しましょう。意外と効果がありますよ。

――親も心配しています。周りの人はどのように接すべきだと思いますか。

佐藤ママ:子どもにかける言葉に気を付けることですね。特に、よその家庭の子どもの受験ことは話題にしない。必ず、いやな雰囲気になりますから。お母さんは自分の子どものことだけ考えることです。

よく言いがちな「がんばりなさい」もあまり意味のない言葉です。子どもはもうすでにがんばっていますから、今の時期、親が自分の気休めのためにいうそのような言葉はいらないのです。

また、腫れ物にさわるような態度もさけたいところ。実は、親子で不安な気持ちは口にしたほうがいいのです。でも、元気よく、明るい言い方にしましょう。朗らかな調子で「ママは昨日不安で寝られなかったわ」と言えば、子どもは「ちゃんと寝ろよ」と返してきます。「焦るよね」「不安だよね」と認めつつ、「それはみんな同じだし、やらないとね」という明るく前向きの空気感を出すことが大事ですね。

それから、友人と連絡を取り合って励ましあったりしたくなるものですが、そのようなことは時間の無駄です。受験は一人で立ち向かうものですから、友人に寄りかかるような気持ちは持たないことです。この時期、友人との連絡は全く不要。目の前のことから逃避しないことです。友人からのLINEもスルー、電話がかかってきても「悪いけど」といってすぐ切る。わが家の受験でも直前期には、友人と連絡を取ることはなく、携帯が鳴ることも一切ありませんでした。合格めざしてひたすら走る。それくらいの覚悟をもって自分の人生を歩んでほしいです。

――気の持ちようはそんなに大事なのでしょうか。

佐藤ママ:「合格したい」という気持ちがいかに強いかということは意外と合否に影響します。例えば、数学の問題を解きながら、もう一押しして考えようと思うのは精神力なのです。

今年は新しい形式に変わったからといって、受け身になってはいけません。攻めは最大の防御。「敵はどんな問題で攻めてくるのか」と相手の出方を楽しむくらいの気持ちで試験に対峙してほしいですね。

受験はいわば人生のビッグイベントなのです。このような形式の試験は大人になったら受けることはなくなります。18歳でこうした人生を左右するような試練を経験できることは、素晴らしいチャンスだと思って頑張ってください! (まとめ/AERAdot.編集部 鎌田倫子)

>>【続編】子ども4人東大理III合格佐藤ママ入試2日前に問題的中!直前こそ諦めてはいけない理由 はコチラからhttps://dot.asahi.com/dot/2021011300024.html

鎌田倫子

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