遺族側の反論に〈証拠となるものをお見せいただけるよう提案したい〉
現役団員Aさん(25)の自殺を受け、宝塚歌劇団は11月14日に調査結果を公表。が、そこにはきわめて不誠実な“演出”が施されていた。実は会見直後、劇団幹部は耳を疑う言葉を口にしていたのである。
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宝塚大劇場
【写真を見る】「このままではダメ!」とパワハラ廃止を訴えた男役トップ・彩風咲奈
Aさんが自宅マンションで飛び降り自殺を遂げたのは9月30日。彼女は一昨年8月、宙(そら)組の上級生・Mからヘアアイロンを額に押し付けられてやけどを負ったとされ、これが今年2月「週刊文春」で報じられる。以来、複数の先輩幹部から罵詈雑言を浴びせられるなど、度重なるパワハラを受けていたというのだ。
14日の記者会見で劇団は、遺族側が主張するいじめやパワハラについて、
〈ヘアアイロンをあてたのは故意ではなかった〉
〈いじめやハラスメントは確認できなかった〉
と、外部弁護士9名による調査結果を淡々と列挙し、さらに遺族側が寄せた反論に対しても、
〈証拠となるものをお見せいただけるよう提案したい〉
辞任する木場健之(こばけんし)理事長に代わって12月1日から劇団トップに就く村上浩爾(こうじ)専務理事は、そう言い放ったのである。
「会見では言いませんでしたが、いじめはあったのでしょう」
が、この会見もまた“お芝居”だったというほかない。さる宝塚関係者が明かす。
「会見から3日後の17日、中止となっていた大劇場での雪組公演が12月1日から実施されるとの発表がありましたが、その前日16日には雪組生が集まり、村上新理事長や組プロデューサーとの話し合いの場が設けられました」
そこでは、
「男役トップの彩風咲奈(あやかぜさきな・93期)が、『このままではお客様の前に立てません』と切り出し、あわせて“指導”と称した従来のパワハラ的慣習を廃止するよう求めたのです」
男役2番手の朝美絢(あさみじゅん・95期)もこれに呼応し、他の生徒たちも「(Aさんの)ご遺族に誠意を示してほしい」などと口々に訴えたというのだが、
「村上新理事長ら幹部は、『法的にはパワハラに該当しませんが、いじめはあったのでしょう。一昨日の会見では言いませんでしたけど』と口を開いたのです」
「今回認めれば、これまで起きていた全てを認めることになる」
にわかに信じがたい発言であり、会見で認めなかった理由については、
「『皆さんは歌劇団にいる限り、誰もが被害者であり、また加害者にもなり得る』とのことで、『今回の件を認めれば、これまで起きていた全てを認めることになる。宙組の上級生だけでなく、生徒全員を守るための判断だった』というのです」
この日、数時間に及んだ話し合いの終盤では、
「村上さんは『それでは皆さん、12月の公演から頑張ってください!』と、何事もなかったかのように呼びかけ、唖然とする生徒たちも多かったといいます」
11月22日発売の「週刊新潮」では、会見での“うそ”と問題点を専門家の視点もまじえて詳しく報じる。
■相談窓口
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電話 0570・783・556(午前10時~午後10時)
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・よりそいホットライン(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター)
電話 0120-279-338(24時間対応。岩手県・宮城県・福島県からは末尾が226)
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・厚生労働省「こころの健康相談統一ダイヤル」やSNS相談
電話0570・064・556(対応時間は自治体により異なる)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_info.html
・いのち支える相談窓口一覧(都道府県・政令指定都市別の相談窓口一覧)
https://jscp.or.jp/soudan/index.html
「週刊新潮」2023年11月30日号 掲載
新潮社