「エチオピアのアディスアベバはコロナ禍でも賑わっていた」下川裕治【コロナ禍を旅する〈13〉】エジプト・エチオピア(3)

「エチオピアのアディスアベバはコロナ禍でも賑わっていた」下川裕治【コロナ禍を旅する〈13〉】エジプト・エチオピア(3)

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  • 更新日:2021/11/25
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エチオピア・アディスアベバの街

文・写真/下川裕治

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■トランジットでエチオピアのアディスアベバに滞在した

アディスアベバのボレ国際空港は、市街地に隣接していた。トランジットホテルへはものの15分ほどで着いてしまった。

東京からエジプトのカイロに向かっていた。エチオピア航空が安かった。ハブ空港であるエチオピアのボレ国際空港での乗り継ぎは12時間近くあった。エチオピア航空はそれ用に市内のトランジットホテルを用意してくれた。

トランジットホテルを利用する場合、エチオピアには入国したことにならない。単に乗り継ぎである。入国するならエチオピアのコロナ対策に従わなくてはならない。隔離は1週間だった。トランジットの場合はそれもない。その代わり、ホテルから街に出ることはできない。滞在時間は10時間ほどだが、ある意味、隔離でもある。

トランジットホテルに訊いてみた。

「ホテルの周りを、5分ぐらい散歩するのはいいですよ」

なんだか得をしたような気分だった。

東京からは夜行便だった。少し寝て、ホテル周辺を歩いてみた。新型コロナウイルスを警戒する空気はどこからも漂ってこなかった。店はどこも普通に開いていた。ショッピングモールの1階にあるファストフード店には人が群がっている。支払いカウンターのあたりは密状態である。

道行く人のなかでマスクをつけているのは、半分強といったところだろうか。ほぼ100%がマスクをつけている東京からやってくると、ここはもうコロナ禍が通り去ったような気になってくる。

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空港から見える市街地。ビルのあるところがもう市街地だ。歩いても行けそう

しかしエチオピアは、新型コロナウイルスとは別の問題を抱えていた。民族問題である。いや、この民族問題がコロナ禍にも絡んでいた。

エチオピアはアフリカのなかの成長モデルといわれていた。街を少し歩いただけで、その意味がわかってくる。

建設中のビルがいくつも見える。ビルの1階にはブランド店が並び、道には車がひしめいている。

その背後には中国があった。エチオピアは中国から膨大な援助を受け、それを元に経済発展の軌道に乗った。

WHOのテドロス事務局長に批判が集まったことがあった。中国からはじまった新型コロナウイルス感染に対するWHOの調査への不満がアメリアを中心に溜まっていたのだ。テドロス事務局長は中国寄りだと。

その伏線は、テドロス事務局長がエチオピア人だったことにあった。

新型コロナウイルスのパンデミックの前、やはり中国からといわれるSARSの感染拡大があった。なぜかこのウイルスは忽然と消えてしまい、世界規模の感染にはならなかったが、中国は批判に晒された。そこで中国はWHOへの影響力を強める戦略にでたという憶測である。自ら多くの資金を提供し、経済成長を導いたエチオピアのテドロスをWHOの事務局長に置くロビー活動を行い、沈静化をはかったという筋書である。

それが新型コロナウイルスにも発展した。つまり膨大なエチオピアへの援助の見返りに……というストーリーは、WHOの武漢調査の甘さに通じると、当時のトランプ大統領が矛先を向けたわけだ。

真偽はわかりずらいが、アメリカの中国への対抗材料でもあった。

ここから先はエチオピアの内政問題になる。エチオピアは他民族国家だった。そしてテドロスはティグレ人だった。

今回、僕がトランジットで滞在したとき、エチオピア北部では内戦が続いていた。政府軍とティグレ人民解放戦線の闘いだった。

アディスアベバでは気まぐれにスコールが降る。標高が2000メートルを超える街の気候だ

僕がはじめてエチオピアを訪ねたときも内戦状態だった。戦場は北部エリトリア。やがてエリトリアは独立するが、そのなかで力を得たのがティグレ人だった。エチオピア政府の要職を握り、中国との蜜月関係を築いていく。そこからアフリカモデルの成功譚ははじまる。そのなかに外相まで務めたテドロスもいた。

しかしティグレ人は人口の5%という民族だった。最大の人口を抱えるオモロ人からの反発が強まる。そこで選ばれたのがオモロ人のアビー首相だった。彼はエリトリアと和平交渉を結び、ノーベル平和賞をもらう。内戦はそれから1年後に起きてしまう。ティグレ人民解放戦線はアディスアベバに迫る勢いだった。

その勢力からみて、政府軍が優勢に見えていた。アディスアベバの街のにぎわいが、それを示している気がした。

しかしその後、状況は変わっていく。僕が訪ねてから2ヵ月。エチオピアは全土に非常事態宣言が敷かれてしまうのだ。

そこに中国はどう絡んでいる? エチオピア式成長モデルに急ブレーキがかかっているともいわれる。

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近くまで反政府軍が迫っているとはとても思えないアディスアベバの街の光景

【動画】アディスアベバのスコール

下川 裕治

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