トランプが上院で有罪評決を受ける可能性

トランプが上院で有罪評決を受ける可能性

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  • 更新日:2021/01/12
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今回のテーマは、「トランプが上院で有罪評決を受ける可能性」です。ドナルド・トランプ米大統領は、結局1期で上下両院の多数派を失い、しかも自身も再選ができなかった大統領になります。その上、米国史上初の2回弾劾された大統領になる可能性が高くなりました。

では、上院で弾劾裁判が開催された場合、果たしてトランプ氏は有罪になるのでしょうか。本稿では、今回の米連邦議会議事堂乱入事件の目的について分析した後に、トランプ有罪評決の可能性について述べます。

(REUTERS/AFLO)

なぜ手錠が必要だったのか?

1月6日に米連邦議会議事堂を襲撃したトランプ支持の暴徒は、建物のガラスを破り侵入して器物を損壊しました。ただ、捜査が進むにつれて議事堂乱入事件では済まされない状況になってきました。銃器、火炎瓶及びパイプ爆弾が発見されたからです。ジョー・バイデン次期大統領が指摘するように、正に「国内テロ」と言えそうです。

さらに、暴徒は手錠並びにプラスティック製の細いひもを用意していました。なぜ彼らは手錠と細いひもを必要としていたのでしょうか。

おそらく、「不正選挙」を認めないナンシー・ペロシ下院議長ら議会民主党指導部及び、バーニー・サンダース上院議員(無所属・東部バーモント州)を含んだ急進左派の議員を拉致する計画だったのでしょう。

選挙人を確定する上下両院合同会議の議長を務め、暴徒からトランプ大統領を裏切ったと見られているマイク・ペンス副大統領も拉致の対象になっていたかもしれません。トランプ大統領は、「ペンスには米国と憲法を守る勇気がなかった」と批判しました。

2020年米大統領選挙で武装した自警団ミリシアは、中西部ミシガン州のグレッチェン・ウイットマー知事(民主党)拉致未遂事件を起こしました。今回の議会議事堂乱入事件で、暴徒は同様のアプローチをとった可能性があります。米連邦捜査局(FBI)は以上の点を捜査しています。

なぜ絞首台を設置したのか?

ところで、議事堂の外には首つり縄がくくられた絞首台が設けられました。白人至上主義者にリンチにあって殺害され、木につりさげられた黒人は、「奇妙な果実」と呼ばれました。今回の議会議事堂乱入事件には、トランプ支持の白人至上主義者が参加していたので、彼らが絞首台を設置したのでしょう。

ただ、彼らの標的は黒人ではなく、不正選挙を認めない議員と裏切りの者のペンス氏であったはずです。

実際、暴徒が「ペンスを絞首刑にしろ」と叫んでいたと、米メディアは報道しています。となると、言い過ぎかもしれませんが、「奇妙な果実」は手錠をかけけられたペンス氏になっていたかもしれません。

中国が米国に核戦争を仕掛けたら?

多くのトランプ支持者が利用しているウェブサイトTheDonald.Winに、ある利用者が「1月6日は記念すべき日である。忘れるな」と投稿をしました。議会議事堂乱入事件が発生した1月6日を「革命記念日」として祝っているのです。

別の利用者はトランプ大統領のツイッター永久停止に関して、「中国が米国に核戦争を仕掛けたら、誰が我々に教えてくれるのか。トランプがツイッターで教えてくれる」と投稿して反論しました。確かに、ツイッターはトランプ氏と支持者が直接コミュニケーションをとるための極めて重要なツールでした。

2015年6月に大統領選に出馬して以来、トランプ大統領は約5年半の間に「言論の自由」を盾にして、ツイッターを最大限利用し、「もう1つの真実」(ウソ)を拡散してきました。トランプ信者は20年米大統領選挙でトランプ票がバイデン票に書き換えられたという「もう1つの真実」を信じて、民主主義の聖地である連邦議会議事堂を襲撃する狂信的な行動に打って出ました。もちろん、冷静なトランプ支持者も存在します。

ただ、「言論の自由」「ツイッター」「もう1つの真実」の3つを巧みに組み合わせて、信者を暴徒化させたトランプ大統領に対して責任をとらせるのは当然です。率直に言ってしまえば、トランプ大統領のツイッターは「言論の自由」の限界を超えました。トランプ氏のツイッター永久追放は妥当な判断と言わざるを得ません。

「導火線」を渡した共和党

乱入事件の当日、化学兵器による攻撃に備えて、下院議場でガスマスクを着け、椅子の下に伏せていたジェリー・コノリー議員(民主党・南部バージニア州第11選挙区)は、「議会共和党は支持者に向かって、今回の大統領選挙で不正が行われ選挙が盗まれたと、数カ月間ウソをついてきた」と非難しました。

加えて、コノリー議員は「ドナルド・トランプが暴徒を扇動して火をつけたことに疑いの余地はない」と厳しく批判したうえで、「しかし議会共和党が(トランプに)導火線を渡したことを忘れてはならない」と主張しました。

「言論の自由」「ツイッター」「もう1つの真実」を駆使して民主主義を冒瀆したトランプ氏を擁護してきた議会共和党議員は共犯者だと、コノリー氏はみています。

そのコノリー議員が1月12日(日本時間)、「米国は困難な時期に直面しているが、切り抜けるだろう」という内容のメールを筆者にくれました。今回の議会議事堂乱入事件は、米国社会の分断のマグマが一気に爆発し、民主主義の根幹を大きく揺るがしました。コノリー氏は米国民はその危機を乗り切れるとみています。

上院共和党はどう出るのか?

米下院はトランプ大統領の弾劾決議案を13日に採決する予定です。下院(435議席)では弾劾に過半数の票が必要です。多数派は民主党なので、前述した通り、トランプ氏は米国史上初めて2回弾劾された大統領になる公算は大きいです。

バイデン氏の就任式まで残り10日を切りましたが、ペロシ下院議長はトランプ大統領に連邦議会議事堂乱入の責任をとらせることへの固い決意を示しています。

一方、上院(100議席)の弾劾裁判でトランプ氏を有罪にするには、3分の2以上の賛成が必要です。民主党は南部ジョージア州で2議席を獲得し、50議席を確保しているので、共和党から17票以上が必要です。

上院はバイデン氏の就任後に弾劾裁判が開催される可能性が高くなりました。2019年のトランプ弾劾裁判において、共和党ではミット・ロムニー上院議員(西部ユタ州)のみが「権力乱用」の訴追条項に有罪の票を投じました。しかし、今回はかなり状況が異なります。

リサ・マーカウスキー上院議員(北西部アラスカ州)は共和党議員として初めてトランプ大統領の辞任を求めました。加えて、ベン・サス上院議員(中西部ネブラスカ州)及びパット・トゥーミー上院議員(東部ペンシルべニア州)もトランプ辞任に賛成しています。バイデン氏は地元デラウェア州での記者会見でロムニー氏と連絡を取り合っていることを明かしました。

仮にうえの4人の上院議員が弾劾裁判でトランプ氏有罪に賛成票を投じるとしても、民主党は共和党から最低13人の造反が必要です。では、民主党が共和党からそれ以上の賛成票を得ることは不可能なのでしょうか。トランプ有罪に票を投じるように、共和党上院議員を動機づけるものはないのでしょうか。

おそらく共和党上院は2024年大統領選挙で、同党の顔がトランプ氏では勝利できないと判断した場合、17人以上の上院議員が有罪に賛成する可能性が出てきます。

海野素央

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