実は「13人と会っていた」という白石被告 なぜ4人は殺されなかったのか

実は「13人と会っていた」という白石被告 なぜ4人は殺されなかったのか

  • 文春オンライン
  • 更新日:2020/10/17

「バラバラにした遺体を鍋で……」白石隆浩被告が証言した、おぞましい犯行の一部始終から続く

【画像】白石被告が使用していたTwitterアカウント「首吊り士」

2017年8月から10月までの約2ヶ月の間で男女9人を殺害した白石隆浩被告(30)。短期間にこれだけの人数を殺害する事件は稀だ。しかもSNSで知り合った男女を殺害したという意味でも、計画性があり、慎重でなければ実行できない面もあったはずだ。しかし、2020年9月30日から東京地裁立川支部(矢野直邦裁判長)で始まった裁判員裁判での証言を聞くと、計画性のなさも感じる場面が多い。

No image

2017年11月1日、送検される白石隆浩被告 ©文藝春秋

弁護人をコントロールしようとしている態度

白石被告の態度を見てみる。当初から弁護人との方針の違いがあった。10月8日、白石被告は「方針が合わずに、根に持っています」と、弁護人からの質問を拒否する姿勢を見せていた。そう言いながらも、次第についつい答えてしまう場面が見られた。10月14日にも、弁護人が「今日はどうしますか? 今日も答えませんか?」と聞き、白石被告は「はい。弁護人の質問には一切答えるつもりはありません」と答え、いったん弁護人からの質問が終了した。結局、この日は、検察官側からの質問だけに答えた。

しかし、翌15日には、前日と同じ弁護人からの質問に「はい」とだけ続けていたが、「最初に合流したときのCさんの印象は?」の質問から、「何か悩んでいるような感じでした」などと答えた。黙り続けるのも疲れるのだろう。ただ、別の弁護人の質問に対しては、「申し訳ないですが、あなたは信用できないので、黙秘します」と述べ、弁護人をコントロールしようとしているようにも見えた。

犯行にも垣間見える考えの浅さ

強い意思表示をするものの、その意思を貫徹できないことは、犯行でも見られる。計画性があると思いきや、考えが浅い場面がいくつもある。

例えば、1人目のAさん(当時21、女性)を信用させようと、「一緒に住もう」と持ちかけたことがあった。2017年8月中旬、Aさんに「失踪宣告書」を書かせるほどの用意周到さがあった。家族が警察に届けても、捜索届を警察に受理させないようにしようとしたのだ。8月23日、片瀬江ノ島駅でスマホを捨てさせることも考えていた。これは、以前に風俗店のスカウトをして職業安定法違反容疑で逮捕された際、携帯電話の位置情報について刑事から聞かされていたからだ。

一方、新しい生活をイメージさせるのなら、新しいスマホ契約の話をしておくほうが信用されるはずだが、白石被告は「新しい携帯電話の契約の話はしていません」と話していた。不自然さが残る流れではある。

連続殺人をする大胆さがある一方で自信のなさも

Aさん殺害を決めた理由については、「私以外の男性との付き合いがあるような雰囲気だった」と繰り返した。しかし、Aさんに恋人やそれに近い存在がいるかどうかの確認はしていない。白石被告にとって“ヒモ”にできる女性を見つけ、アパートの賃貸契約時のお金と契約金を除いた36万円を得たのに殺害してしまう。

筆者が拘置所にいた白石被告と面会した時には「ちょっと考えが浅かった。人を1人殺す報酬として50万円は安すぎる。性欲だけに走ってしまった」とも語っていたが、白石被告が「まとまったお金」を入手できたのは、この時だけだ。

「私以外の男性との付き合い」があると、なぜ殺害の理由になるのか。白石被告は、もし自分を捨てて他の男性のほうに行ってしまった場合、50万円の返済を求められるのではないかと思っていた。連続殺人をする大胆さがある一方で、自信のなさがうかがえる。

加えて、「返済の話は何も出ていません。(もし、他の男性のところへ行った場合)返済を求められた後、部屋に1対1という状況にならないだろうと。Aさんは外に出て、生活し、連絡だけをよこす状態が望ましくないだろうと考えるはず。それを防ぐために殺したんです。殺害してもバレなければいいと思った」と証言する。何も確認もしていなければ、論理的ではない。殺害する計画性ははっきりあったわけではないのだろう。

Bさん(当時15、女性)は、白石被告と話をしているうちに、「生きたい」と思うようになる。ただ、Bさんの家出願望を利用して、失踪に見せかけるため、「片瀬江ノ島駅に行って、海に携帯電話を捨てるように」と指示したものの、白石被告はBさんの位置情報を確認していない。アプリで確認しようと思えばできたはずだ。結果、Bさんは携帯電話を駅のトイレ内に放置したことで、清掃員が拾得物として駅に届けている。バレない自信があったというが、最終的な確認をしていない。

わかったような、わからないような論理

弁護人は、「Aさん、Bさんの殺害が腑に落ちない。傷害や暴力の前科がない白石さんがいきなり殺害する。殺害を頼まれたのでは?」と問いただした。白石被告はこう答えた。

「(職業安定法違反で)執行猶予中でした。次、逮捕されれば、実刑になると思っていました。そのため、レイプして、お金をうばって、殺害しないといけないと思ったんです」

わかったような、わからないような論理だ。執行猶予中で次に何か犯罪を犯したら、実刑になるのはわかる。だからといって、殺人までするのか。このあたりの心理は、常人にはわからない。白石被告にとっては、実刑となるならば、死刑と同じだと思ったのだろうか。

Cさん(当時20、男性)の殺害は、Cさんを紹介したAさん殺害の証拠を隠滅するためだった。殺害当日の8月29日、白石被告はCさんと相武台前駅で待ち合わせた。Cさんには、失恋と仕事のプレッシャー、バンド仲間との関係が悪化したことなどの悩みがあり、白石被告に一方的に話したという。白石被告は、自殺させようとしていたにもかかわらず、「前向きになるアドバイス」をして、Cさんは「死ぬのをやめる」と言い出すことになる。ある意味では、“人間的”な側面である。

薬を飲んだかどうかも「覚えていません」

白石被告の証言によると、Cさん殺害は、やはり所持金を奪うことも目的になっていた。しかし、財布の所在は確認していない。

Cさんを殺害するには、体格がほぼ同じだったために、薬を飲ませて、隙をつこうとした。ところが、弁護人に「Cさんは薬を飲んだかもしれない? 実際に飲んだ?」と聞かれて、「覚えていません」と答えている。飲んだとして、何の薬を飲んだのかもわかっていない。発見された遺体の頭部からは、薬の成分が検出されている。ということはCさんが自ら飲んだのか、飲ませたということだろうか――。

結果的にCさんを殺害し、所持金を奪うことになるが、得た現金は5000円ほどだったという。「まとまったお金」ではないにもかかわらず、なぜ殺害したのか。裁判長の「まとまった現金はいくらぐらいか?」と聞かれて、「当時のイメージでは25万から50万以上」と答えている。その金額を得られるとしても、「人を殺すリスクの見返りがそんな金額なのか?」と唖然とする。それに、Cさんがその日、白石被告に伝えた所持金は「1万円」だった。

奪った5000円を生活費に使ったという一方で、遺体をバラバラにして一部を鍋で煮るなどの処理に「一体5000円ほどかかる」とも証言している。ということは、生活費も残らない。Aさん殺害の証拠隠滅の目的はあったものの、現金を奪うという点では目的はほぼ達成していない。

こうして8月中に3人を殺害することになるが、そもそも白石被告はアパートに入居したばかり。家賃はどうするつもりだったのか。弁護人の質問に、「Aさんとの間では私が働いて、養う予定でした。Aさんを殺害した後は、私が支払うことになりました。(働いていないものの)Aさんから奪ったお金で支払おうと。そしてAさん殺害後は、女性と出会って、お金を引っ張って、集めて、支払おうと思っていました」と答える。行き当たりばったりの犯行だったのが実態だ。

殺害した人とそうではない人との違いは何か?

アパートに入居して、「死にたい」「首吊り士」など5つのアカウントをつくり、殺害した9人のほかにも会っていた白石被告。筆者との面会では「13人に会った」と明かしていた。つまり、そのうち9人を殺害して、4人は生かしたことになる。「1人とは付き合っていた」とも話していた。

私は、殺害することになった人と、生かした人との差は気になっていた。その点を裁判官が「殺害した人とそうではない人との違いは何か?」と質問した。

白石被告は、こう答えた。

「自分に対して好意を持っていて、お金を持っていそうな場合、レイプをせずに、生かして帰しました。長期的にお金を引っ張ろうと思っていました」

白石被告に「好意」を示したか否かで殺害したということなのか。広い意味では、殺害された9人とも「好意」はあったのではないかとも思う。ただ、白石被告にとっての「好意」は、性欲の対象としてでしかないのかもしれない。そして、最終的には「お金」。ヒモになる意思だけは貫いている。身勝手な犯行はどこまで解明されるのか。裁判は12月まで続く予定となっている。

(渋井 哲也)

渋井 哲也

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加