「沖ドキ!」撤去でなぜ業界は一丸となり得たのか?

「沖ドキ!」撤去でなぜ業界は一丸となり得たのか?

  • ハーバービジネスオンライン
  • 更新日:2021/02/23
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※写真と本文は関係ありません。 photo by 栄華

◆パチンコ業界が直面している「旧規則機撤去」問題

パチンコ業界が、コロナ禍で経営環境が困窮するなか、法律では設置期限が1年間延長された旧規則機(2018年2月の遊技機等規則改正前に製造された遊技機)を、業界団体の集合体である「パチンコ・パチスロ産業21世紀会」(以下、21世紀会)の求めに応じ、法律が定める期間よりも短い期日で撤去に踏み切ったのか-ー。

本稿は先日の配信記事「一部地域で「反乱」とも言われた「沖ドキ」撤去の真実。問題を通して見た、パチンコ業界の底力」を承前として書き進めている。

本稿しか読まない読者のためにパチンコ業界が抱える事情をダイジェストで説明すれば、今パチンコ業界は高射幸性遊技機を含む旧規則機の撤去を、業界をあげて進めており、それはコロナ禍のなか国家公安委員会が特例で延長した1年間の設置期限よりも短い期間で撤去する事をパチンコ業界の内部規制として定めており、一部パチンコ店がその求めに応じず業界内でも問題になってはいるものの、全国9000店舗のパチンコ店のうち97.5%のパチンコ店がその撤去に応じているというもの。

特に焦眉の問題となっているのが、パチスロファンからの人気も高く、パチンコ店の売上にも大きく貢献してきた「沖ドキ!」というパチスロ機であり、コロナにより客数が激減しているパチンコ店にすれば、1日でも長く設置稼働させたいのが本音の中の本音。それでも撤去に応じた。今までまとまりがないと言われ続けたパチンコ業界が、これほどまでに足並みを揃えた背景にはどのような事情があるのか-

◆「沖ドキ!」撤去でなぜ業界は一丸となったのか?

その事情、背景には2つの事柄が複雑に絡み合っている。

一つは、21世紀会が求める旧規則機の撤去期限を守らなかったパチンコ店に対するペナルティである。

高射幸性遊技機である「ミリオンゴッド-神々の凱旋-」や「サラリーマン番長」、そして年始以降に問題になっている「沖ドキ!」を中心に、旧規則機の撤去に応じなかったパチンコ店には、2つのペナルティが課せられる。

ペナルティの1つは中古機移動の制限。未撤去パチンコ店は、中古機市場で購入した遊技機であれ、同一法人間のチェーン店間の移動であれ、中古機の移動設置が出来なくなる。これは中古機流通協議会が定めているルールであり、高射幸性遊技機の場合は120日、その他の遊技機の場合は60日の移動制限がかけられている。

もう1つのペナルティとは新台購入時における制限。これは遊技機を販売するメーカー毎に対応が異なり、完全に販売をしないメーカーもあれば、変わらず新台を販売し続けるメーカーもある。あくまでメーカー団体の総意としてのペナルティではなく、個社個社の対応という範疇に留められている。新台であれ中古機であれ、遊技機の購入が思い通りに出来ないということはパチンコ店にとって営業が苦しくなる。これが、多くのパチンコ店が撤去に応じた理由の一つである。

それでは、「ペナルティ」以外のもう一つの要因とはいったいどのようなことなのか?

◆規制緩和への期待感

「沖ドキ!」撤去で業界が足並みを揃えたもう一つの背景は、今回の撤去が「規制緩和」に繋がるという期待感である。

昨年初めからのコロナ禍がパチンコ業界に与えた負の影響は甚大で、4月の第1次緊急事態宣言時には、根拠の希薄な誹謗中傷やバッシングを受け続けた。

緊急事態宣言が明けても客足は戻らず、全国的に閉店や休業が相次いでもいる。目先の経営状況を重視するのであれば、旧規則機の撤去に応じられる状況ではない。そのような状況でも、それでも撤去に応じたのは、今回の21世紀会の求めに応じることによって、パチンコ業界を主管する警察庁の信頼を勝ち取り、規制緩和へと繋げたいという思惑があるのだ。

裏を返せば、それほどまでに現行の新規則機、特に6号機と呼ばれるパチスロ機が営業の大きな足枷になっているということでもある。遊技機規則の改正は、政府が推進するギャンブル等依存症対策の一環として実施された。射幸性の低減は止むを得ない状況であったし、パチンコ業界がNOという環境には無かった。しかし改正された規則が、余りにも厳しく、パチスロ機のファン離れが一気に加速した。

万が一ここで、業界全体で旧規則機の早期撤去に応じなければ、警察行政の信頼を得る事は出来ず、そうなれば規則緩和は望むべくもない。旧規則機の早期撤去という傷を負ってでも、警察行政の信頼を勝ち取り規制緩和に繋げたいというのが、パチンコ業界の期待であり、それはそのまま危機感と言い換えることも出来る。

◆目の前の果実ではなく、その先を見据えて

仮に全国のパチンコ店の多くが旧規則機の撤去に応じず規制緩和に繋げることが出来なかった場合でも、また目の前にある果実に手を伸ばさず身を削って規制緩和を勝ち取りに行ったとしても、パチンコ業界が負うダメージは計り知れない。どちらの状況にあっても、数年の内には、パチンコ店の数は3割程度減るというのが、業界内外の有識者の見立てでもある。全盛期には18000店舗あったパチンコ店が、今では半減の9000店舗。さらにここから3割減である。

「パチンコ店は減り続けますよ。6000店舗というのもリアリティのある数字だと思います。大手だって大きく店舗数を減らす可能性はあるし、中小零細に至ってはそれこそ存亡の危機に立たされている」

関東に数店舗を展開するホール企業の経営幹部は言う。ただね、と彼は続けた。

「この状況はコロナだからという事ではない。コロナが無くても遠からず同じ状況に陥ったし、逆にコロナがあったから、法改正による(旧規則機の)設置期限延長があったから生きながらえたという側面もある。パチンコは良く言えば成熟産業、悪く言えば斜陽産業です。淘汰と統合がこれから3年間のパチンコ業界のトレンドになる。どう生き残るのか、いつ閉めるのか、その葛藤の中で日々営業をしていくしかない」

遊技機の規制緩和があったとして、業界は盛り返すことが出来るのか。

栄枯盛衰は世の常であり、デジタル化が急速に進んでいく世の中において、パチンコというアナログな遊びがかつて大衆娯楽の王様と呼ばれた過去の栄光を取り戻す事は至極困難な事に思える。

ただいま尚パチンコ業界は多くの雇用を抱えており、その周辺産業にも多くの人が関り口に糊している。

「まずはこれからの1年。そこを乗り越えれば、希望はあると思う」

パチンコ業界は淘汰と統合の嵐の中で、新たな存在価値を生み出すことが出来るのか-ー。

<文/安達夕 写真/栄華

【安達夕】

Twitter:@yuu_adachi

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