富士通・時田社長が語る、サステナブルな社会の実現に向けた取り組みとは?

富士通・時田社長が語る、サステナブルな社会の実現に向けた取り組みとは?

  • マイナビニュース
  • 更新日:2021/10/14
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富士通、サステナブルな世界の実現を目指す新事業ブランドを策定

富士通は10月12日・13日、グローバルフラッグシップの年次イベント「Fujitsu ActivateNow 2021」をオンラインで開催した。同イベントの開催は今年で2回目となる。初日は、Empowering People for a Sustainable Futureというタイトルの下、オープニングキーノートが行われ、代表取締役社長 兼 CDXOの時田隆仁氏がサステナブルな未来の実現に向けた富士通の取り組みについて語った。

パーパス経営を支える新事業ブランド「Fujitsu Uvance」

最近、さまざまなところでSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)という言葉を耳にする。政府、企業がSDGsを基に戦略を定めるようになってきており、2030年には年間12兆ドルの新たな市場機会が生まれるともいわれているそうだ。

時田氏は、「新型コロナウイルスの登場によって、価値観や生活様式が変わり、社会課題の解決が地球規模となった。そして、今や夢だった技術が実用化され、われわれっはその恩恵を受けている。その一方で、未来を脅かす問題も起きており、社会が進む方向性を変える時が来ている。これまでの延長ではいけない」と述べ、われわれが変化の時を迎えていることを強調した。

こうした状況を踏まえ、富士通は今年10月、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」というパーパスの実現を目指す新事業ブランド「Fujitsu Uvance」を立ち上げた。「Fujitsu Uvance」の下、富士通はサステナブルな世界の実現に向け、社会課題の解決にフォーカスしたビジネスを強力に推進していくことを掲げている。

パーパス実現に向けて注力していく事業「Key Focus Areas(重点注力分野)」は、2030年の社会を想定し、社会課題を解決するクロスインダストリーの4分野(Vertical Areas)と、それらを支える3つのテクノロジー基盤(Horizontal Areas)の合計7分野から構成されている。

時田氏は「Fujitsu Uvance」について、「2030年をターゲットに人々の生活を考えた。スマートシティ、グローバルサプライチェーンなどの先進テクノロジーを融合していく。企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、目的を明確にしたうえで、複数のテクノロジーを的確に組み合わせることが重要となる。われわれは社会課題を起点としたビジネスに舵を切った。社会課題の解決は、富士通だけではできない。さまざまな人たちとエンパワーしあうことで、貢献できると確信している」と語った。
エストニアから学ぶ電子国家になるためのポイントとは

続いて、2006年から2016年にかけて、電子国家として名高いエストニア共和国の大統領を務めたトーマス・ヘンドリク・イルヴェス氏が講演を行った。イルヴェス氏は、30年間にわたるエストニアのデジタル化に関する取り組みを例に、「国をどうデジタル社会に導くか」について語った。

イルヴェス氏は、エストニアのデジタル化のポイントとして、「IDのセキュリティ」「データ交換のレイヤ」「データの完全性」を挙げた。「デジタル社会においてIDは切っても切れないものであり、IDの強化はどの国も直面する問題だ。また、データベース内のデータはすべて分離しておく必要がある。なぜなら、単一のデータベースでは簡単にデータが盗まれるからだ。データの完全性はプライバシーよりも重要だと考えている」(イルヴェス氏)

イルヴェス氏は、デジタル社会の次なる課題として、「今後半世紀で公的部門のデジタル化を進めること」を挙げた。「民間企業のサービスと同じくらいスマートな方法で、国民にサービスを提供する必要がある」と同氏。

その際、デジタルIDのセキュリティが課題になるという。「デジタル化には、安全なIDが必要不可欠だが、これは政府にとって大きな課題となるだろう。われわれは安全なIDを確立し、銀行でもそれを利用できるようにした。銀行が独自のIDをつくって使うよりも安全だったからだ」と、イルヴェス氏は説明した。

さらにイルヴェス氏は「データのセキュリティに加え、本人を確認する仕組みも必要となる。質の良いアーキテクチャを構築し、データの完全性も確保しなければならない。その際、プロックチェーンやキーレス署名といったテクノロジーがカギとなる」と技術的な課題を解決する手法を示したうえで、自国で作ったIDを認証する仕組みが国を越えても使えるよう、他国と交渉を重ねる必要があることに言及した。

GoogleやAppleが提供するサービスが世界中で使えるように、各国の政府が提供するサービスも世界中のどこでも使えるようにするには、国同士の調整が必要というわけだ。イルヴェス氏は「民間企業は国境を越えたサービスも提供できる。しかし、公共サービスは国境を越えることが難しくなる。これは乗り越えるべき壁だ。紙ベースの社会をこれ以上生きることはできない」と、語っていた。


ESGは義務・コストではなく、投資と見なす

SDGsと並んで、最近よく聞くようになった言葉に「ESG(Environment:環境、Social(社会)、Governance(ガバナンス)」がある。ESGはSDGsと無関係ではなく、持続可能な世界の実現に向けて、企業が長期的成長を果たすために重要な視点とされている。

今回、ゴールドマン・サックス証券の元副会長、チーフ日本株ストラテジストを務めたキャシー松井氏と時田氏が、企業はいかにしてESGを経営戦略に盛り込むべきかについてディスカッションした。

松井氏は、ESGが注目を集めている背景について、「企業経営において、財務情報とあわせて非財務情報も重要であることがわかってきた。また、ESGができたことで、株主の利益だけでなく、すべてのステークホルダーのために、企業が存在していることが強調されるようになってきた。今や、ESGはメインストリームになっている」と述べた。

時田氏も「お客さまやパートナーとのコミュニケーションにおいて、ESGの言葉や意味が伝わってくることが増えてきた。ESGと事業のリンクが弱いと、企業自体の価値が弱いというインパクトを与えてしまうまでになってきている」と、ESGが企業経営に与えるインパクトの大きさを語った。

ただし、松井氏は「ESGが義務になってしまうとワークしない。ESGを経営戦略のコアに組み込むことで、イノベーティブな商品開発につながり、市場開拓のアイデア、リスク管理にも役立つ。企業では、ESGを義務やコストと捉えるのではなく、投資という考え方に切り替えることが必要」と、ESGを投資と見なすことが、経営戦略に生かすポイントであることを説明した。

ESG経営のコツは全従業員を巻き込むこと

そして、時田氏は富士通がパーパスドリブン経営にチャレンジしているが、それを従業員に理解してもらうことが難しいことを実感しており、どうすればうまくいくのかと、松井氏に質問を投げかけた。先述したように、富士通のパーパスにはESGの要素が盛り込まれている。

この問いに対し、松井氏は「マテリアルなファクターを決めることが重要であり、その後に、ESGそれぞれのゴールを決める。これを特定の部門がやるとオーナーシップが感じられなくなるので、従業一人一人を巻き込む必要がある。長い道のりだと思うが、今の世の中に求められていること」と答えた。

富士通グループはグローバルで12万人の従業員を抱えているが、「いろいろな人を巻き込むことが大事であることはわかったが、多様な12万人すべての従業員を巻き込んでパーパスに向かわせるにはどうしたらいいのか」と、時田氏はさらに問うた。

松井氏はグローバルな人材がいることはラッキーなこと。一人一人のポテンシャルを生かすのが社長の仕事だが、それには心理的な安全性がある場所を作る必要がある。例えば、無意識バイアスに関するトレーニングを管理者に限定せずに、全従業員に実施するといった取り組みがある。効果がわかるように、定量的な物差しも重要となってくる」と、従業員をパーパスドリブン経営に取り込むポイントを紹介した。

さらに松井氏は、ESG経営を進めるコツとして、「企業と接して感じていることは、ESGの目標を定める際に大胆なゴールになりがちなこと。ESGはスモールサクセスを重ねていくことが大事であり、進捗を見ることで、次のプログレスにつなげることができる。そこでは、お客さまや従業員のインプットも組み込んでいく」と述べた。

ESGが注目を集めるようになり、どう取り組むべきか悩んでいる企業も多いのではないだろうか。従業員がその企業で働く目的を明示する上でも、ESGへの取り組みは役に立つと言われており、特に若者世代は企業のSDGsやESGに対する姿勢を注目している。企業の持続性を保つためにも、SDGsやESGに積極的に取り組んでいきたいものだ。

今林敏子

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