平和記念公園に届けられた千羽鶴が「商品」に生まれ変わっていた!

平和記念公園に届けられた千羽鶴が「商品」に生まれ変わっていた!

  • 週刊女性PRIME
  • 更新日:2022/08/06
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千羽鶴※画像はイメージです

8月6日、広島に原爆が投下されたあの日から77年。広島平和記念公園には今も年間約1000万羽の折り鶴が、人々の思いと祈りをのせて送られてくるという。しかし、日本全国、海外からも届く折り鶴の「その後」については、あまり語られていない。

【写真】千羽鶴の紙から作られた商品たち

今から10年前の2012年のこと。広島平和記念資料館の入館者総数は約128万人。その約4分の1にあたる31万4000人が修学旅行などの平和学習で訪れる子どもたちで、多くは事前に平和について学び、みんなで作った千羽鶴を持参して、広島を訪れる。この千羽鶴をただ保管するだけではなく、未来につなげることはできないか。そんな思いのもとスタートしたのが、折り鶴での再生紙プロジェクト「折り鶴プロジェクト」だ。

プロジェクト発足の経緯

「プロジェクト以前の折り鶴は、1、2か月飾られたあと倉庫で保管されていました。その折り鶴を使って何かできないか、というのは随分前からの懸案で、市民アンケートもとっています。そのなかで多かったのが、再生紙として利用するという案でした」

こう話すのは(株)クラウン・パッケージ広報室室長の八木野徹さんだ。クラウン・パッケージはプロジェクトに参加し、折り鶴を美しい再生紙「カラフルウイッシュR」として社会に循環させる取り組みをしている。

「平和記念公園の折り鶴は、もともと佐々木禎子さんという1人の女の子から始まりました。1943年に生まれ、2歳で被爆した禎子さんが『折り鶴を折れば元気になれるだろう』と入院中に願いを込めたのが、千羽鶴でした。それ以来、広島では特別な意味を持つようになったのです」(八木野さん、以下同)

2014年、広島市内にある紙容器製造販売業・トモエ株式会社の高丸晃会長が発起人となり、プロジェクトは本格的に始動。禎子さんと同じ年に生まれた高丸会長にとって、折り鶴は平和のシンボルだけではない、大きな意味を持つもの。その思いにクラウン・パッケージも賛同したという。

「以前から弊社では、ポテトを揚げる際に使われるパーム油の搾りかすや、お茶殻、七夕で使い終わった笹を搾ったものなど、いままで処分していたもので新たな紙を作っていました。こういう材料をうちでは『未利用資源』と、ちょっとカッコよく呼んでいるんですが(笑)。これまで会社でやってきたことを折り鶴でもできないか?とお話をいただけたときは、折り鶴にかける皆さんの思いに感動しましたし、やりがいを感じました」

当時は開発側にいたという八木野さん。プロジェクトの中心となり折り鶴を使った再生紙の開発に乗り出したが、その作業は想像以上に大変なものだった。

「千羽鶴は紙だけでなく留め具がついているので、まず紙とそれ以外のものを選別する作業に時間がかかりました。作ってくださった人がそれぞれ思いを込めて、金具だったり紐だったり、いろいろな材料を使っている。ひとつひとつ慎重にチェックしていく必要がありました」

千羽鶴を使用するメーカーの声

ときには金具が取りきれず、作業がやり直しになってしまうことも。この選別作業には広島市内の福祉施設や作業所の方々にもお願いした。

「折り鶴プロジェクトは広島の人のためになれば、という思いで始まっているので、市内の福祉施設にお願いできればいちばんいいのではないかと。作業所には私も何度も足を運びましたし、皆さんのおかげでこんな紙ができたよ!と伝えに行くと、すごく喜んでいただけたのが印象的でした。私自身もお会いするのが、毎回楽しみでした」

このころから八木野さんの再生紙への思い入れは、ひときわ強いものに。いよいよ紙に色をのせるという段階では、今度は折り鶴のカラーバリエーションの豊富さに悩まされることになる。

「赤、青、黄、緑の4色の紙にできたら、と最初は考えていたのですが、じゃあ紫や茶色の折り鶴はどうするの? と。赤い鶴だけ、青い鶴だけ、となると他のカラーの鶴が使えない。でもそれはこちらの事情ですから、色を区別せず、できるだけすべての折り鶴を使いたかった。そこでベースの紙の上に、折り鶴それぞれの色がちらばるようにしました。この再生紙の特色である小さな点々、このひとつひとつが折り鶴なんです」

まさに、色とりどりの祈り─。「カラフルウイッシュR」はこうして誕生した。
折り鶴をちりばめているからこそ、同じ模様はひとつもないのがカラフルウイッシュRならでは。実はすでに、商品のパッケージや封筒、大手企業の名刺など、さまざまな製品に使われているのだ。

実際に商品のパッケージとして使用している(株)生活の木のマーケティング・商品開発担当者はこう話す。

「企画商品(アロマストーン)に、食物残渣や陶器を再利用した素材を使っているため、パッケージにもエシカルの要素を取り入れたいと考え、メーカーさんよりご紹介いただきました。社会貢献ができる点と、カラフルで楽しさのある見栄えのよさが決め手となりました。パッケージの内側に採用しており、開けたときの華やかさにつながっています」

「次の世代へ継承したい」

売り上げの一部は、公益社団法人日本ユネスコ協会連盟に寄付される。寄付先をユネスコ協会連盟に決めたのも、開発メンバー全員の強い思いがあったという。

「いろいろな団体に直接お邪魔して寄付の使い道を確認しました。そのなかでいちばんしっくりきたのが、日本ユネスコ協会連盟さん。ユネスコ憲章の前文『戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない』という一文が響きました」

言葉を詰まらせながら、八木野さんはこう続ける。

「圧倒的なんですよね、鶴を目の当たりにすると。ひとつひとつの重み、折った人の思いが伝わってくる。折り鶴って、作るの大変じゃないですか! 私なんて不器用なので全然うまく折れなくて(笑)。こうしてカラフルウイッシュRができるのは、1羽1羽、心を込めて折り鶴を折った人がいるから。じゃあその願いってなんだろう、と考えたときに、いちばん祈りが届くような形で、未来を担う子どもたちにつなげていきたいと思いました」

色や形は違っても、鶴に込める思いはきっと同じ。昨年12月からは、新たに長崎市に届いた折り鶴も使用されることになった。八木野さんはこの再生紙にこんな思いを託している。

「最近は被災地や戦地に送ることが問題視され、千羽鶴に対してネガティブな見方もありますよね。もちろん受け取る側の事情を考慮することが大前提ですが、千羽鶴は祈りを届けたい、という純粋で温かい気持ちから生まれるもの。それは忘れないでおきたいなと思います。今後さらにカラフルウイッシュRを目にする機会が増えて、平和を考えるきっかけとなり、広島、長崎への思いが次の世代へ継承されればうれしいです」

文字が似ているだけでなく、「折る」という行為は「祈る」ことに似ている。折り鶴に託された祈りが、この思いをはらんだ再生紙を通じてあなたのもとに届くこともあるかもしれない。

取材・文/片岡あけの(清談社)

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