固定費削減で速やかな経営改善を コロナ禍で手を付けるべき項目は

固定費削減で速やかな経営改善を コロナ禍で手を付けるべき項目は

  • ツギノジダイ
  • 更新日:2021/03/01
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固定費削減では、テレワークの普及によるオフィス面積の見直しなどが必要になります

固定費と変動費の違い

まずは固定費と変動費の違いについて、簡単に説明します。

(1)固定費とは

固定費とは売上の増減にかかわらず発生する経費です。例えば人件費(基本給)や地代・家賃、広告宣伝費などは、売上が下がったからといって減少する経費ではなく、固定的に一定金額が発生します。

(2)変動費とは

変動費とは売上に比例して増減する経費のことです。物を仕入れて販売する業種の場合は商品の仕入れ、飲食業は食材の仕入れ、また、製造業なら原材料や外注費が変動費に該当します。

(3)損益分岐点とは

固定費と変動費は勘定科目ごとに決まっているわけではなく、それぞれの会社によって区分が異なります。例えば、毎月一定の金額で発生する外注費は固定費に入りますが、仕事ごとに依頼する外注費の場合は変動費になります。

そして、「損」と「益」の分岐点となる売上のことを、損益分岐点売上高といいます。経営者にとって、この数値をしっかり把握したうえで、目標売上を設定することが重要です。

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固定費、変動費と損益分岐点売上の関係図(筆者作成)

カフェの経営をもとに、損益分岐点売上高の算出方法を例示します。

《前提条件》

・コーヒー豆などの原価率は30%

・毎月の固定費は月70万円(家賃及び光熱費が20万円、人件費が30万円、その他広告宣伝費等が20万円)

《月の損益分岐点売上高は?》

このお店の損益分岐点売上は固定費70万円÷70%(利益率)=100万円となります。つまり、損益分岐点売上100万円を1円でも超えれば黒字、1円でも下回れば赤字、ということになります。

主な固定費と削減方法について

主な固定費とその削減方法について、以下の表で項目別にまとめました。

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主な固定費と削減方法について(筆者作成)

コロナ禍で考えたい削減方法

ここからは、コロナ禍で特に削減を考えるべき固定費の項目と、その削減方法について、詳しく解説します。

(1)広告宣伝費の削減

目指すべきゴールは、広告宣伝費をかけなくても集客できるようにすることですが、最初のステップとしては、費用対効果をしっかり確認することが大切です。

一般的に、美容業や飲食業などに代表される業界特有の広告宣伝サイトは、掲載料がかなり高く、自社の最終利益よりも広告宣伝費の方が多い企業もしばしば見受けられます。

コロナ禍においては、顧客ではなくファン(より深く身近な顧客)をいかに獲得できるかが、話題になりました。外部のサイトでも顧客の集客は可能ですが、ファンが多い企業は、自社のサイトやSNSをうまく活用しています。

もし自社で集客できる方法を見つけたら、広告宣伝費が大幅に削減できますので、同業他社と比較して経常利益率を2倍にすることも可能です。

(2)地代・家賃の削減

固定費の中でも大きな割合を占めるのが地代・家賃です。コロナ禍でテレワークが普及したことで、オフィスが駅前にある必要性が少なくなったといえます。もちろんその地域の相場にもよりますが、少し駅前を離れると半分の家賃で借りられるような物件も多いと思います。

テレワークを取り入れている業種の場合は、オフィスの面積が余っていないか再検討をお願いします。出社する人数が半分になれば、単純に半分の面積の事務所でも問題なく作業できる企業も多いと思います。

また、地方企業のように、自動車通勤の従業員が多い場合は、契約駐車場の費用もかさむ傾向があります。あえて、少し離れた安い駐車場を契約することで、従業員が毎日一定の距離をウォーキングする取り組みもできます。

並行して自転車通勤を推奨しても良いでしょう。月極駐車場の料金が1台当たり月額1万円の場合は、その3割程度を自転車通勤手当として従業員に支給することで、固定費削減と従業員の健康を両立できる効果があります。

(3)人件費の削減

最後に人件費について解説します。経営責任者である役員報酬は最初に削減する経費となりますが、従業員の人件費は限界まで下げないこと、また単純には削減しないことが大切です。

もしここに手をつけるなら、固定費削減というより「固定費の変動費化」を検討してください。例えば、年功序列だった報酬ルールを、目標達成度合いや実際の能力に応じた報酬体系にすることや、ベースアップは慎重にして、その代わりに賞与で対応するなど、公正公平な給与体系が大切です。

さらに、(従業員の理解が前提ですが)夏と冬に固定的に月給の2カ月分ずつ出していた賞与を、利益に応じて配分する決算賞与に変更することや、夏と冬は各1カ月分にして残りを利益連動の決算賞与で出すのも一つの方法です。

業績が上がれば賞与が増え、下がれば自動的に賞与も減ることになるため、会社の利益が自分たちの収入に直接反映されることになり、従業員のモチベーションが高まります。会社が窮地のときはみんなで頑張り、会社が儲かればみんなで喜ぶような社風が生まれ、固定費の変動費化を図りつつ、会社の利益調整機能の役割も果たします。

社長1人で経営するよりも、「全社員経営」という強い組織への第一歩にするため、ぜひ利益に応じた決算賞与制度を活用してはいかがでしょう。

固定費削減の失敗例

コロナ禍で経営が苦しいからといって、固定費を無制限に削減していいわけではありません。実務経験をもとに、固定費削減でやってはいけないことを、例示します。

(1)無理なお願いはしない

自社の固定費を削減するということは、多くの場合、相手の会社の付加価値を下げることにも繋がります。例えば、デザイン料金、修繕費、消耗品費やコピー機のカウンター料金、その他の単価交渉について、あまり細かい金額交渉ばかりになると、相手先にとって取引をしたくない企業になってしまいます。

もともと自社がこの地に在ることで、「地域社会がより良くなる」という存在価値があったにもかかわらず、安易な固定費削減をすれば真逆の状況を生んでしまいます。同じ地域で一緒に頑張っている取引先も納得できるように、単価交渉をすることが肝要です。

(2)「ミライ経費」の削減は慎重に

企業経営には、「イマ」のための経費と、「ミライ」のための経費があります。

既存の商品やサービスはいずれ付加価値が低下するので、新規商品やサービスの研究や開発を怠っては企業の未来がありません。ブランド価値を向上するための広告宣伝費や、未来のための交際費や研究開発費を削減しすぎると、将来の「メシの種」を自ら途切れさせてしまうことになります。

変化に強い企業に転換を

固定費の割合が大きい企業と変動費の割合が大きい企業では、後者の方が変化に強いといえます。コロナ禍においては、可能な限り固定費を削減して損益分岐点を引き下げておくこと、そして社内で行っていた業務を必要に応じて、アウトソーシングに切り替えることなど、「固定費の変動費化」を進めることも大切です。

歴史を振り返っても、日本経済は常に好景気と不景気を繰り返してきました。今こそ、経営の神様と言われた松下幸之助の「好況よし、不況なお良し」という言葉を実践し、未曾有の不況を乗り切っていただきたいと思います。

藤本純

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