チラシでよく見る「塾の合格実績」は本当か? 知っておきたいそのカラクリ

チラシでよく見る「塾の合格実績」は本当か? 知っておきたいそのカラクリ

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/02/25
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中学受験生の大半が進学塾に通って、入試に向けた準備をおこなう。どのような種類の中学受験塾が存在しているのか、わが子に合った塾はどこにあるのか、悩む保護者はぜひ参考にしてほしい。
計27年間中学受験の世界に身を置く作者、矢野耕平が受験で後悔しない方法を伝授。塾の新学期は2月から…『令和の受験 保護者のための参考書』で保護者も中学受験を“正しく”理解しよう。毎日連載>これまでの連載はこちら!

塾の合格実績のカラクリ

2月の中学入試本番を終えると、たくさんの塾からその年の「合格実績」を掲げたチラシが新聞に折り込まれます。と同時に、週刊誌が「中学受験に強い塾」などといった特集を組み、これらの実績数値に基づいて各塾の「力量」を分析、判断することもあります。

もちろん、これらの数値には参考になる面もありますが、保護者はその数値に惑わされない、あるいは、頭から信用しないという姿勢を持つことが大切です。

「御三家合格200名!」とか「難関国私立中学校1000名!」といったその数値を築いたのは所詮「他人の子」なのです。わが子がそこに入れるかどうか分かりません。

そして、これらの合格実績から決して伝わらないことがあります。それは「不合格者数」です。首都圏の中学入試は激戦であり、第1志望校に合格できる子のほうが圧倒的に少ないのですから。

しかも、これらの合格実績にはある「カラクリ」があります。この点を保護者は押さえておくべきでしょう。

次の表を見てください。

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『令和の中学受験 保護者のための参考書』より

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大手塾を中心に、幾つかの塾の2020年度の主要難関中学校の合格実績数値が示されています。

ここで注目してほしい値があります。

「各塾合格者総数」と「入試合格者数」です。後者は学校側が発表した2020年度の合格者数(補欠合格・繰り上がり合格を含む)です。

「あれ? 何だかおかしいな?」

そう思いませんか。

そうなのです。どの学校も「各塾合格者総数」が「入試合格者数」を大きく上回っています。これは何を意味しているのでしょうか。

1人の受験生が複数の塾でカウントされている!?

これは、1人の生徒が複数の塾に在籍していたことを表しています。たとえば、1人の受験生の結果がSAPIX、早稲田アカデミーそれぞれの合格実績として反映されるようなケースがたくさんあるということです。

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よくあるケースは、6年生の後半になって「志望校別コース」や「個別指導」のみを、普段通っている塾とは別の塾で受ける場合です。こういった場合はほぼ例外なく、複数の塾の合格実績に当人の「合格結果」が組み込まれるのです。

とある難関男子校の広報担当の教員と談笑していたとき、彼はこんなことを言いました。

「最近はウェブ出願するときに『通塾名』を入力してもらっています。合格者が通っている塾ごとの人数を算出してみると、不思議なことがあります。○○塾って、ウチの合格者を○○名と打ち出しているのですが、データを見たら、その半数もいなかったのですよ」

そういえば、2020年はコロナ禍の影響を受けて、いろいろな塾が「オンライン授業」を導入しました。普段通っている塾とは別に、「オンライン指導」をおこなう塾を活用した結果、一度も足を運んだことのない塾の合格実績にカウントされる子がさらに大勢出てくるのでしょうね。

こんな合格実績の「ウラ技」もあります。

たとえば、「早慶〇〇名合格!」と誇らしげにアピールしている塾をよくよく調べてみると、首都圏にある早大学院、早稲田実業、慶應義塾普通部、慶應義塾中等部、慶應義塾湘南藤沢の合格者総数ではなく、佐賀県にある早稲田佐賀、大阪府にある早稲田摂陵の合格者数を多く含んでいた……。ともに首都圏にある早稲田大学の付属校よりはるかに入りやすいところです。

わたしは、この両校を貶(けな)したいわけではありません。しかしながら、「早慶〇〇名合格!」という宣伝文句を謳いたいがために、1月におこなわれる両校の東京会場入試に、進学することなど考えていない自塾の受験生を「動員」するのはどうなのかと感じています。

保護者は各塾の「合格実績」を冷静に眺める姿勢を身に付けておきましょう。

カリスマ講師は要注意

私事で恐縮ですが、わたしが初めて自著を刊行したのは2008年です。その本のタイトルは『カリスマ講師がホンネで語る 中学受験で子どもを伸ばす親 ダメにする親』(ダイヤモンド社)です。もちろんこのタイトルを付けたのは出版社ですが、「カリスマ講師」などという大仰な冠を付けたのは、世に知られていない塾講師ゆえ、少しでも「箔」を付けてやろうじゃないかという親切心だったのでしょう。

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Photo by iStock

さて、わたしは「カリスマ講師」なのでしょうか?

こう書きながら吹き出しそうになりましたが、もちろんそんなことはありません。わたしの指導が万人に受け容れられ、担当した子どもたち全員の成績を劇的に伸ばせたかというと、残念ながらそんなこともありません。

「矢野先生はちょっと厳しいからいやだ」

「矢野先生より〇〇先生のほうがいい」

そんなふうに言われることもときにはあります(ショックではありますが)。

というより、中学受験界に「カリスマ講師」など不在だろうとわたしは思うのです。

そもそも「カリスマ」とは「神様から賜った超人間的、非日常的な資質であり、大衆を心酔させ、扇動する能力」とされています。ですから、「中学受験」という狭い世界に適用すべき表現ではありません。

実際は「カリスマ講師」を「凄い先生」という、ちょっと「軽い」意味で用いている宣伝文句の1つなのでしょう。

世間から「カリスマ講師」と形容されている中学受験指導者の顔を何名か思い浮かべましたが、果たして、彼ら彼女たちの指導力が抜きん出ているのでしょうか。わたしは決してそうは思いません。

むしろ、「カリスマ講師」などと周囲に持ち上げられることで、その指導に絶大な自信を持つことが自らの「足枷」になるような人物の事例を、わたしはこれまで耳にしてきました。

塾は「人」である

そういう「自称カリスマ講師」は自分の指導法、教育観は間違いのないものだと思い込み、周囲の切言を受け付けない頑迷固陋(がんめいころう)な人が多いように感じますし、そういう講師の傲慢さに嫌気が差して、わたしの塾に移ってくる塾生にこれまで何人か出会ったことがあります。

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塾は「人」であると言いましたが、わが子の担当が「カリスマ講師」と呼ばれる人物である必要はないのです。そうではなく、わが子に対して親身に接してくれる、ご家庭からの相談をしっかり聞いて適切なアドバイスをくれる……そういう誠実さを備えた人物こそ「良い講師」なのだとわたしは考えています。

続きは『中学受験で自信喪失したわが子に、親が絶対に言ってはいけないこと​』です!

▼『令和の中学受験 保護者のための参考書』はこちら!WEB連載では触れられなかった記事も満載です!

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第一章:中学受験向きの子、不向きな子

第二章:志望校の選び方

第三章:中学受験という世界

第四章:中学受験期の親子関係

終章:令和の中学受験

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