人工光合成へ前進! 京大、CO2の回収・有効活用を実現する光触媒を開発

人工光合成へ前進! 京大、CO2の回収・有効活用を実現する光触媒を開発

  • マイナビニュース
  • 更新日:2020/10/16
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京都大学(京大)は10月14日、水と光を使って二酸化炭素(CO2)を有効な資源にリサイクルする光触媒の合成に成功したと発表した。

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同成果は、京大工学研究科のRui Pang博士課程学生(現・産業技術総合研究所博士研究員)、同・寺村謙太郎准教授、同・田中庸裕教授らの研究チームによるもの。詳細は、Nature系の国際化学学術誌「Communications Chemistry」オンライン版に掲載された。

世界各国で温室効果ガスの削減目標を達成するため、CO2の排出を抑制しようとしており、日本は2030年までに2013年比で温室効果ガス排出量を26%削減という目標を立てている。現状、CO2排出抑制の切り札は、CO2 Capture & Storage(CCS:二酸化炭素回収・貯留)とされており、発電所や製鉄所から排出される大量のCO2を地中深く埋めることが計画されている。

しかし、国土に余裕のない日本ではCCSは難しく、CO2を利用するCO2 Capture & Utilization(CCU:二酸化炭素回収・活用)が検討されている。それを受けて研究チームはその発展型として、CO2を燃料や化成品へと再資源化するCO2 Capture & Conversion(CCC:二酸化炭素回収・変換)を提案している。

CO2は、とても安定した分子だ。それを還元して再資源化するためには、エネルギーの投入と電子源が必要である。それを可能とする仕組みとして、田中教授率いる研究チームが長年にわたる研究で参考としたのが、植物の光合成だ。太陽光をエネルギー源として、水(H2O)を電子源として利用する人工光合成の開発を目指し、CO2を光とH2Oでリサイクルできる光触媒の研究開発が長年進められている。

しかし、その実現には多くの課題があるという。CO2もH2Oも非常に安定した分子であるため、目的とする反応自体がほとんど進行しないからだ。またH2Oが電子源として機能しないことも多いという。また反応が進行するようになったとしても、CO2はH2Oよりも安定している分子であるため、H2Oのみが還元されてしまう例がほとんどだったという。

そうした中、研究チームが開発した光触媒はH2Oを電子源として機能させることができ、しかもH2OではなくCO2が選択的に還元され、一酸化炭素(CO)が高効率で生成させることが可能だという。

光触媒「酸化ガリウム」が、H2Oを電子源とするCO2の光還元に対し、活性を示すことは以前から報告されていた。しかし、この光触媒はH2Oの方が還元されやすいことが課題だった。研究チームはこれまでの研究で、そんな酸化ガリウムに対し、水酸化クロムを添加すると選択的にCO2を還元できるようになることを発見。ただし、CO2の変換効率は依然として低いままの課題は解決できていなかったのである。

このような状況下で、研究チームは酸化ガリウムにカルシウムを添加すると、飛躍的にCO2が還元され、添加率(効率)が向上することを確認。この反応では、CO2から合成ガス(COと水素の混合ガス)の原料となるCOが生成物として得られるが、そのCO濃度は1.2%に達したという。

1.2%というと、とても少ない割合に聞こえるが、実際に使用されている合成ガスの濃度に近い値である。COは生物に対して毒性が高いことで知られるが、検知器を用いた実験でも反応を開始させてからすぐに鳴動しており、高濃度のCOが生成されたことが証明されたという。また、この時のH2OではなくCO2が還元される効率(選択率)は95%という高さだった。つまり、今回開発された光触媒は、H2Oを電子源とするCO2の光還元を選択的に実現することが可能ということである。

活性向上のポイントは2段階のカルシウム種の添加だ。硝酸ガリウム水溶液に少量の塩化カルシウムを加えて、アンモニア水を滴下することで得られる水酸化物前駆体を高温で焼成すると、ガリウムとカルシウムの複合酸化物「CaGa4O7」が酸化ガリウム表面上に形成される。この光触媒に酸化カルシウムを物理混合させ、銀と水酸化クロムを修飾すると、高い光触媒活性を示すようになるという。現在、どのような機構で反応が進行しているかは分析中としている。

これまで報告されてきたH2Oを電子源とするCO2の光還元においては、測定装置の検出限界に近い活性の変化についての議論が行われていた。しかし、今回の結果も含めて研究チームがこれまでしてきた報告により、現実的な光触媒活性が得られることが徐々にわかってきている。これは、植物の模倣をするという人工光合成が夢の反応ではないということを示しているという。

一方で、今回の光触媒システムは、可視光では機能しないという課題もある。植物のように、太陽光により多く含まれる可視光で駆動するようなシステムにすることが重要だという。また、CO2を還元するとメタンやメタノールなど、本来はさまざまな物質が得られるが、現状ではCOしか得られていない。還元生成物のバラエティを増やすことも、研究チームの今後の目標としている。

波留久泉

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