HowよりWhyを聞くほうが話を引き出しやすい訳

HowよりWhyを聞くほうが話を引き出しやすい訳

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2022/01/15
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たとえ専門的知識がなくても恐れる必要はありません(写真:YUJI/PIXTA)

コミュニケーションがうまくいかない場合、人はネガティブな側面に目を向けがちです。「英語がうまく話せないから」。「その分野での知識がなかったから」。果たして本当にそうでしょうか?

プロのインタビュアーは、さまざまな分野の人に日々取材をしています。そしてたとえ英語が話せなくても、その分野に精通していなくても、相手の話を引き出すことができるのです。ではその秘訣とは、なにか?

上阪徹氏の著書『引き出す力――相手が思わず話してしまうひとつ上の「聞く力」』から紹介します。

前々回:苦手な相手からうまく話を引き出せる人のスゴ技(1月1日配信)
前回:3000人超を取材した男の「話の引き出し方」絶妙技(1月8日配信)

英語を話す人への取材は英語でなくてもできる

英語はまるっきりできない私ですが、外国人のインタビューも数々、行ってきました。質問は日本語で、通訳に入ってもらい、インタビューを進めていくのです。

印象に残っている取材にスターバックスの実質的な創業者で元CEO、ハワード・シュルツさんのインタビューがあります。大物だけに、ついてくださったのは同時通訳。片耳に引っかけるヘッドフォンを渡され、逐次通訳が行われる。テレビの中継などで耳にすることがある、まさにあれです。

本来であれば、英語ができて、英語でインタビューするのが相手も心地よいことなのか、とも想像していたのですが、案外そうでもないようです。私は日本人に向かうように、顔を見ながら日本語で語りかけますが、十分にいいインタビューができます。

ハワード・シュルツさんのときも、ポンポンとどんどんインタビューを続けていったのですが、なんと終わった後、この言葉とともに、握手を求められたのです。

「いいインタビューだった。シアトルで会おう」

リップサービスかな、と思っていたのですが、実際に私はこの後、シアトルでも彼にインタビューすることになります。スターバックス本社、さらにはイチロー選手のグッズが飾ってある執務室を見せてもらえたことは、とてもいい思い出です。

さて、話はさかのぼるのですが、通訳が入ることで、自分の取材のクセに気づいたのも外国人取材でした。まだ、フリーランスになって3年目。ハリウッドの映画監督にインタビューしているときでした。

通訳はとても見事に訳してくださっていたのですが、自分でも気づき始めました。私の質問は「How(どうすれば)」から始まる質問がやたら多かったのです。やがて監督は、「どうしてこの人はHowばかり聞くんだ?」と言い始めました。

日本人は「How」が好きなのです。それこそ、書店に行けば「How」を記した本がたくさん並んでいます。雑誌の特集でも、ウェブサイトでも支持を得る。しかし、注意しないと「How」に支配されかねないのです。

これは部下と上司の関係にも当てはまります。

実際、部下が上司から仕事の依頼を受けるとき、やってはいけないことがあると思っています。それは「How」ばかり聞き出すことです。「どうやってやればいいですか」ばかり聞いてくる部下を、上司はどう思うでしょうか。

上司や経営陣からよく挙がってくる声に、「言われたことしかやらない」がありますが、命令されて方法論を聞くだけでは、まさに言われたことをしているだけです。では、どうすればいいのかというと、「Why」をこそ聞き出すのです。

「なぜ、この仕事をやる必要があるのか」から聞く。その意味を理解して上司の命令を実行するか、そうでないか。上司はどちらを評価したくなるでしょうか。それこそ「Why」から聞いてくれる部下なら、上司は安心できると思いませんか。

命令するのではなく、質問をして気づきを与える

一方、「言われたことしかやらない」は、上司にも課題があります。それは、ついつい命令してしまうから。言ってしまうからです。リーダー論の本には必ず書いてありますが、部下に気づかせることこそが優れたリーダー。そのために必要になるのが、聞き役に回ることです。

部下に質問をして、その答えを上司はじっくり聞く。そうすることによって、何をしなければいけないのか、に気づいてもらう。単に命令するのではなく、自分の気づきになれば、それは「上司に頼まれた仕事」ではなく「自分の仕事」になります。

上司は、部下にいい仕事を与えてくれる存在になるのです。自分に命令する人ではなく、自分を応援してくれる人に映るのです。

こういう関係性を上司と部下で作れたら、コミュニケーションは円滑になっていくはずです。「部下の本音がわからない」「本当の気持ちを引き出せない」といった上司の悩みも、関係性によるところが大きい。

関係性ができていないのに、上司が部下から話を引き出すテクニックなど、まずないと私は思います。

それこそ「隣に座る関係」ではないですが、上司が自分の未来のためにプラスの存在だと思えば、部下は自分からどんどんしゃべってくれるはずです。そのほうが自分にとっても、いいことだからです。

難しい話やネガティブな話の対処法

それでは難しい話やネガティブな話にはどのように対処すればいいでしょうか。

私は15年前に、ウェブサイトで科学者のインタビュー連載を担当していました。アンドロイド研究で知られる大阪大学教授の石黒浩さん、マサチューセッツ工科大学のテニュア(終身在職権)を取得されたタンジブル研究の石井裕さん、ロボットスーツ「HAL」を開発したサイバーダインの創業者兼CEOの山海嘉之さんなど、錚々たる顔ぶれに取材させていただいたのでした(後に『我らクレイジー★エンジニア主義』として書籍化)。

私は大学も商学部ですし、バリバリの文系です。理系の世界は、勉強もしていないし、まったく詳しくない。ところが、この科学者へのインタビュー連載は大変な支持を得たのでした。理由はシンプルで、誰にでも理解できるよう、書いたからです。

連載を引き受けるときに確認したのは、「専門家を相手にした連載ではないですね?」ということでした。専門家相手なら、私は適任ではない。専門家の「相場観」がまるでわからないからです。しかし、一般の人を相手にした記事ということであれば、問題ありません。私が理解できるレベルの話を書けばいいから。そしてそれを書いたら、「こんなにわかりやすい科学者インタビューは、かつてなかった!」と支持を得たのです。

このときに知ったのは、実は同じ理系といっても、例えば電気と機械ではまったく違うということでした。電気の人は機械のことをよく知らないし、機械の人は電気のことをよく知らない。文系の私からすれば、理系とひとくくりにしてしまっていましたが、領域が違えば知識はまるで違う。それこそ、理系でも別の領域であれば、文系の私と変わらないくらいの知識の人は少なくない、ということでした。

だからこそ、気をつけたのが、インタビューです。本物の科学者たちですから、聞こうと思えば、とんでもない専門領域の話も聞けるでしょう。しかし、それは私には理解できないし、記事にすることもできない。読者は一般の人だからです。

そこで私がインタビュー前に必ず伝えていたことがありました。

「申し訳ありません。私はバリバリの文系です。資料はいろいろ見てきましたが、難解なものばかりでした。理系の知識がない私にも、わかるように教えてください」

このとき、改めてすごいと思ったのですが、本物の科学者というのは、難しい話もやさしく解説できる力をしっかり持っている方々だということです。逆に、わかっていない人は、難しい話を難しい話としてしか語れない。本物であることのすごさを強く認識したのでした。

そして、私のわかる範囲、わかるレベルでどんどん話を引き出していきたいわけですが、そのために、このフレーズを連発しました。

「もしこの領域について基礎知識がない読者が目の前にいるとしたら、どんなふうに説明いただけますか」

難しい話を、難しい話のまま聞いていたら、理解はできません。だから、最初から「やさしく解説してください」とお願いしてしまう。そうすることで、相手はわかりやすく話してくれるようになります。ただし、言わなければ、相手にはこちらのレベルがわかりません。わからないことより、わからないまま聞いていくほうが余程、問題なのです。その認識をしっかり持っておいたほうがいい。

ネガティブな話は一通り聞き切ったほうがいい

難しい話と並んで、大変なコミュニケーションに、ネガティブな話があります。聞きたい話の前に、ネガティブな話が始まってしまう。愚痴だったり、後悔だったり、悪口だったり……。

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そんな話をされても、と思っても、できるだけ止めないほうがいいと思います。したくてしている話だから。

なので、ネガティブな話が始まったら、一通り聞き切ることにしています。そうしないと、次に進めないから。いい話を引き出すことは、難しいと思えるから。あえて、ネガティブな話をしてくるのは、意味があると思うのです。

そしてやってはいけないのは、相手の話に感情的になることです。ネガティブな話に、ネガティブに反応してしまう。「なんでこんな話を」「本題と違う」「つまらないなあ」……。こうした感情的な反応は、相手に伝わってしまうと私は思っています。

ネガティブな話は、こちらが試されている話でもあるのです。

前回:3000人超を取材した男の「話の引き出し方」絶妙技(1月8日配信)

(上阪 徹:ブックライター)

上阪 徹

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