バッタやゴキブリはどんな味?今さら聞けない昆虫食最前線

バッタやゴキブリはどんな味?今さら聞けない昆虫食最前線

  • JBpress
  • 更新日:2021/05/04
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カミキリムシサラダ

昆虫は有史以前から食べられていた伝統的な食材であると同時に、現在世界で再注目されている食材である。昆虫を捕る、毒がないか確認する、飼育して増やす、保存する、下処理する、レシピを考える、調理する、食べる──。そんな昆虫を食べることのすべてが分かる完全実用ガイドブックが『スーパーフード!昆虫食最強ナビ』(辰巳出版)である。著者は虫食いライター・ムシモアゼルギリコ氏。昆虫を食の選択肢の一つだと捉え、マイペースにボチボチやっているという。

FAO(国際連合食糧農業機関)が推奨する昆虫食の現況、身体にいいスーパーフードとしても注目される食材としての虫の可能性、自宅で楽に飼育できる昆虫、冷凍保存の方法、昆虫をキャッチ&イートする際のルールとモラルなどについて、ムシモアゼルギリコ氏に話を聞いた。(聞き手:加藤 葵 シード・プランニング研究員)

──なぜ昆虫を食べることにハマったのでしょうか。

ムシモアゼルギリコ氏(以下、ギリコ):自分ではのめり込んでいる自覚はないのですが(笑)。昆虫を食べるようになったきっかけは、「マンガ飯(まんがめし)」です。

「マンガ飯」は、マンガや小説、アニメや映画など物語に出てくる料理を再現して実食する遊びで、アニメならラピュタパン(『天空の城ラピュタ』に出てくる目玉焼きをのせたトースト)や、小説であればたらこスパゲッティ(村上春樹『羊をめぐる冒険』)などが有名です。

私は小さい頃からサバイバルものやホラーが大好きで、サバイバルものの話には虫を食べる描写がわりとよく出てきます。実際にサバイバル生活をする際に、手に入りやすい食料が虫だからだと思います。それで私も実際に虫を食べてみたいな、と思うようになりました。

実際に食べてみたら、食べ物として何の違和感もなく、おいしいと思いました。初めは昆虫の見た目と味のギャップがすごく面白かったですね。そして、昆虫は食べれば食べるほど、普段食べているような肉や魚とその味わいは変わらないと感じるようになりました。

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カイコの薬膳サラダ

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コオロギスムージー&ワームビスコッティ

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昆虫食の普及に立ちはだかる最大の課題

──「マンガ飯」が昆虫食のきっかけになったということですが、子供の頃から虫がお好きだったのでしょうか。

ギリコ:東京の都心で生まれ育って、虫との関わりはまったくといっていいほどありませんでした。大人になってから居酒屋でイナゴの佃煮を食べたことがあるくらいで、自分で捕ったり飼育したりして食べるようになったのは30歳を過ぎてからです。

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ムシモアゼルギリコ氏近影

昆虫料理研究家の内山昭一さんが、毎年夏になると、みんなで集まってセミを捕って食べる「セミ会」を主催されています。このキャッチ&イートのイベントは、すぐに予約が埋まるほど人気があります。ここ10年ほどで、このような昆虫食イベントを大学のサークルやグループで開く人が増えてきているようです。私自身、昆虫食イベントやTwitterを通して昆虫食仲間もずいぶん増えました。

──昆虫食がいかに世界を救う新しい食糧資源か、どれほど健康に効果があるかといった点に世の中の注目が集まっていますが、まだそのような議論が成立するほど現状では昆虫食は普及しておらず、十分なエビデンスもない、と本書で語っています。昆虫食ブームはごくささやかなものでしかないということでしょうか。

ギリコ:食料不足への懸念や環境問題の観点から、環境負荷の少ない食べ物として次世代のたんぱく源として昆虫食が世界的な注目食材になっていること、新しい価値が見出されていることは事実です。その繁殖力と成長のスピード、栄養価、限られたスペースで運搬できることなどから「宇宙食」としても注目されています。

昆虫食を語るときに必ず引き合いに出されるのが、2013年にFAO(国連食糧農業機関)が発表した報告書です。それまで昆虫食文化は「守る」対象であるとしてきたFAOが、先進国でもこれから昆虫食を食べていこう、と「攻め」の姿勢に転じました。

その後、EUがノベルフード(新規食品:Novel Food)のリストに昆虫を入れ、ひと足早く一定の条件での流通が解禁された国では、オーガニック系のスーパーにコオロギの加工品が並んだり、レストランで昆虫メニューを取り扱うようになったり、徐々に昆虫食分野の動きが活発になっています。

しかし、昆虫食が広く普及するにはまだ価格が高すぎます。養殖する数にも限りがあり、野生のものを捕獲して売るのはコストが高くならざるを得ない。これは日本だけの話ではなく、虫を伝統的に食べるタイやラオスでも同じで、グラムあたりの価格は昆虫より豚肉の方が安いというケースもあります。

FAOが食糧危機のために昆虫食を推奨するといっても、野生の虫を捕って食べるだけでは賄えませんから、養殖技術をもっと発展させないと成立しません。

ムシモアゼルギリコ氏のインタビュー

商品開発を進める企業は増えているが・・・

ギリコ:本書のタイトルに「スーパーフード」とつけているので矛盾してしまいますが、昆虫食を「スーパーフード」と呼ぶことにはまだ抵抗があります。

コオロギ入りのヨーグルトと普通のヨーグルトを、本人が区別できない状態で摂取して比較した実験では、コオロギ入りを食べた方が多少腸内環境はよくなったという結果があるようですが、すごく高い機能性が確認されているわけではありません。

肉や魚と比較して、栄養的に遜色ない優秀な食べ物であることは確かですが、虫を食べたら痩せるとか健康になるというほどの効能があるとは現時点では言い切れないと思います。

もちろん、可能性はあるとは思いますが、逆に薬レベルの強い影響が身体にあるとなると、食品としては食べにくいですよね。たとえ機能性が期待ほどではないとしても、食べ物として味がよく、栄養があればいいのではないかと考えています。

──まだ話題先行ということですね。

ギリコ:日本では法整備がまだそれほど進んでいません。養殖の食用昆虫を卸す業者もまだごく少数です。ベンチャー企業も開発を始めていますが、すごく増えているというわけではありません。

ただ、渋谷パルコに昆虫食レストランがオープンしたり、食用昆虫専門の自販機が増えているという嬉しい動きもあります。昆虫ふりかけやバッタチョコレートなど、ネットや店舗で一般の人がすぐに買える食用昆虫も増えています。無印良品がコオロギせんべいを発売したり、敷島製パン(Pasco)がコオロギパンを開発したり、さまざまなチャレンジが始まっています。

いずれにせよ、昆虫食は「もともと存在していた食文化」である、ということも忘れないようにしたいです。本書でも取り上げた長野県伊那市では、ざざむしやカイコ、ハチノコ、イナゴなどの昆虫が伝統食として今も受け継がれています。

飼育が容易なマダガスカルゴキブリ

──ご自宅ではどんな虫をどのように飼育しているのですか。

ギリコ:商品として流通する昆虫を買う以外の虫の入手方法として、自分で捕るのと飼育するという2通りがあります。

野生動物を捕まえて食べるジビエを想像していただくと分かりやすいかもしれませんが、日本で野生の虫を捕って食べるのは、時期や天候、労力を考えてもそれなりに大変なことです。それよりは、自分で虫を飼って食べた方が数も増やしやすいし、コスパもよくて楽な場合もあります。私としては、家庭菜園でシソやプチトマトを育てたりするのと同じような感覚ですね。

私はサボテンさえ枯らしてしまうほど生き物の世話は苦手なのですが、そんな私でもマダガスカルゴキブリは200匹くらいまで簡単に増やすことができました。

マダガスカルゴキブリは爬虫類のエサとしてペットショップに売っているので、つがいで手に入れました。でもだんだん近親交配になっていって、次第に、飼育を始めたときほど増えなくなってくる。そうなってきたら、できるだけ自分のコミュニティから遠い虫仲間から、新たな個体をもらってきて混ぜる。すると、またどんどん増えるようになって。そういう観察も面白いですよ。

コオロギは、味はいいんですが、何より鳴き声がうるさいですね。動きも激しいし、夜のうちに全員脱走して朝起きたら部屋中コオロギだらけになっていたこともあります。

養蚕もやってみたことがありますが、サナギになる直前の食欲は恐ろしくなるほどです。桑の葉を大きい段ボールの上の方まで入れて出かけても、帰って来たらもう空っぽなんです。昔の養蚕農家の人たちは大変だったんだな、としみじみ思いました。新鮮なカイコのサナギはとてもさわやかで上品な味でおいしいのですが。

──昆虫を調理する前の下処理はどのようにするのですか。

ギリコ:人によりますが、捕ったらすぐに茹でたり冷やしたりすることが多いです。動いて逃げられると面倒なので最初に茹でてしまうか、冷凍庫に入れ、冷やして動きを止めるという手もあります。

私の大好物は夏に羽化のために樹に登ってきたセミの幼虫ですが、セミの幼虫は時間が経つと当然羽化してしまいます。だから野外にはとりあえずクーラーボックスと保冷剤を持って行って、すぐに冷やすようにしています。

虫は小さいのでそのまま丸ごと素揚げして食べれば簡単です。でも、商品として加工するとなるとそれなりの処理は必要です。フン抜きをしたり、カギ爪を取り除いたり、羽をむしったり、硬い甲虫の殻を外したり。本格的においしく食べるためには、気が遠くなるような細かい作業をすることもあります。

エサで変わる昆虫の味や風味

──イナゴはサクッとした小エビのようだし、トノサマバッタはむっちりした身がクルマエビのようだ、という記述が本書にありました。昆虫の味は種類ごとにかなり多様なのでしょうか。

ギリコ:虫の種類によって味はまったく違いますね。それは、私たちが普段食べている野菜の味が、同じ根菜でもニンジンとダイコンが違うのと同じことです。

セミの幼虫は羽化する寸前のものを食べます。セミの幼虫は樹の根っこの周りで樹液を吸いながら育つので、やはり少しウッディというか、樹液っぽい味がします。そこへ幼虫ならではの脂質が合わさってナッツっぽい風味になります。モンクロシャチホコという蛾の幼虫、いわゆるサクラケムシは、桜の葉を食べて大きくなるので、一口齧ると口の中に桜餅の香りが広がります。

──食べているエサによって味や風味が変わってくるということですか。

ギリコ:そういう場合もありますね。バナナをエサとして与えて飼育したら風味がよくなることもありますし(※マダガスカルゴキブリの場合)、野生の虫でも環境や生態によってだいぶ味が左右されます。だから、一匹捕って食べただけで「この虫はこういう味なんだ」とは評価できません。ある程度、この虫はこういう味だ、と言えるようになるには、いろいろな種類をそれなりの量食べる必要があるでしょう。

──虫を食べるときにはどういったことに注意する必要がありますか。

虫を食べる際に注意するべき8カ条

ギリコ:虫は一般的に珍しい食材なので、基本的な食べ方を次の8カ条にまとめました。

第1条 食べる前に必ず火を通す。生食はしない。
第2条 アレルギーがある人は注意する。
第3条 できるだけ新鮮なものを食べる。
第4条 採取・調理時のかぶれやけがに注意する。
第5条 罰ゲームやサプライズに使わない。
第6条 採取時のルールにも注意する。
第7条 種類が特定できない虫は食べない。
第8条 それぞれの宗教上のルールもチェックする。

絶対に守りたいルールは、加熱することです。虫の消化器官内の雑菌を殺して衛生的に食べるには「75℃以上、1分以上」加熱すると安心です。次に「甲殻類アレルギー」を持つ人は虫を食べてはいけません。エビ・カニと近い種類の生き物なので、反応する可能性が高いからです。

それから、虫は傷みが早いので、できるだけ新鮮なものを食べることです。いつ死んだか分からないようなセミは絶対に食べてはいけません。捕れたての新鮮なものをすぐに食べるか、新鮮なうちに冷凍保存しておいて食べるのが基本です。

採取、調理時のけがやかぶれにも注意してください。日本で食べられる虫の一つがハチですが、やはりスズメバチを素人が捕るのは危険です。肢先の「かぎ爪」が肌に引っかかってしまったり、毛虫にかぶれたりといったことにも注意する必要があります。

昆虫食をサプライズや罰ゲームに昆虫食を使わないことも気をつけるべき点です。そのように食べ物で遊ぶことは道徳的にアウトだし、昆虫食の伝統や文化に対しても失礼な行為にあたります。また、アレルギー事故につながる可能性もあります。

また、虫の中には非常に毒性の強いものがいます。カミキリモドキ類、ツチハンミョウ類(カンタリジンという毒がある)や、アオバハネガタアリカクシ(ペデリンという毒がある)などは絶対に食べてはいけません。加熱しても毒性が消えませんし、何の虫だか特定できないものは絶対に食べるべきではありません。

自由に昆虫を捕ることが難しくなる

ギリコ:昆虫採取時には捕る場所のルールを守ることも大事です。都内の公園に「食用のための採取は禁止」という看板が立てられて、ニュースに取り上げられました。この、食用のための採取を禁止する、というのは実はとても難しい問題です。

虫を捕る際の「量」が問題なのか、だとしたら少しの量ならいいのか。それとも虫を捕る「目的」が問題なのか。単に虫を捕って飼育・観察するのはよくて捕って食べるのはだめなのか。実際にこの公園の看板も、昆虫採集自体を禁止したくはないという苦肉の策だったようです。

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ムシモアゼルギリコ氏が上梓した『スーパーフード!昆虫食最強ナビ

ただ、虫を捕って食用にするのがだめなら、日本に住んでいる伝統的に虫を食べる国の出身の人が、自分の家庭で楽しんで食べる10匹や20匹程度の虫を捕ってはいけないのかという問題になってしまう。果樹園や潮干狩りのように、管理された公園や里山で捕った虫の量に対して1キロあたりの料金を設定し、お金払った上で一定数なら捕ってもいいですよ、と管理するかたちがあってもいいのではないか、と考えています。

昆虫を食べ始めた当初と変わらず現在も、昆虫食で世界を救いたい!とか、昆虫食を普及させたい!といった大きな野望は持ってません(笑)。これからも昆虫食を通じて体験した出来事などを、楽しく伝えていくことができればと思っています。(構成:添田愛沙)

以下、昆虫料理の数々をお楽しみください。

蟻スープと蟻の卵サラダ

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蟻スープ

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蟻の卵サラダ

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スズメガタコス

はちのこ伊勢うどん

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ツムギアリライス

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はちのこ伊勢うどん

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フェモハム串

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みつカイコ

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昆虫食ナイトので饗された料理

加藤 葵

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