4630万円返還拒否24歳男性の実名公表 地元住民「移住者増えて活気が出たと思ったら」

4630万円返還拒否24歳男性の実名公表 地元住民「移住者増えて活気が出たと思ったら」

  • NEWSポストセブン
  • 更新日:2022/05/20
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現在アクセスしにくい阿武町公式サイトのインフォメーションページには広報誌「あぶ」のPDFを画像データ化したものが掲出されている

山口県阿武町が新型コロナに伴う住民税非課税世帯への臨時特別給付金10万円をめぐり、対象の全世帯相当分の計4630万円を誤って1世帯に振り込み、回収できなくなっている問題に新たな展開があった。4630万円を振り込まれた男性は「お金はすでに動かし、もう戻せない」と主張し、返還を拒否していた。これまで返還拒否者の名前は非公開だったものの、自治体が氏名の公表に踏み切ったのだ──。

【写真】現在アクセスしにくい阿武町の公式ホームページには実名が公表された訴状の概要が

5月12日、阿武町役場は町の公式ホームページを11時40分に更新。「公金の誤振り込みとその後の対応について」と題したページを掲出した。公開されたのは、町の広報誌『あぶ』に掲載予定とされる記事のデータだ。そこには公開に至るまでの経緯、そして今後の対応などが記されている。

阿武町町長・花田憲彦氏の署名入りで発信された同記事の中では、返金に応じない町民に向けて民事訴訟を行う方針であることが明示された。「一定程度の証拠が得られた」ということで訴訟する方針を決定し、12日に行われた町議会臨時会にて「不当利得返還等請求訴訟」の提訴が可決された。今回の訴状の内容も記載されており、原告が阿武町であることから始まり、被告である町民の実名と現住所も晒されている。

「今回訴えられた町民は、24歳の一般男性です。阿武町が力を注いでPRしている“空き家バンク”制度を利用して、1年半ほど前に移住してきたそうです。男性はすでに勤め先を退職しており連絡が取れない状態ではありますが、さすがに氏名が公表されて提訴されたとなると、居場所がわかるのは時間の問題ではないでしょうか」(全国紙記者)

今回の町民に誤振り込みしたとされる総額は4630万円だが、今回の訴状には「5115万9939円及びこれに対する令和4年4月8日から支払済まで年3分の割の金員を支払え」とある。元の4630万円に加え、弁護士費用および交通費等の諸費用を含んだ金額だとされる。

裁判沙汰になった以上、訴状に氏名が記載されるのは自然な流れだ。とはいえ、ある意味で日本中からの注目が集まる人物だけに、ネット上では、この人物のプロフィールをさらに“特定”しようとする動きまで起きている。地元住民は語る。

「こんなことが地元で起きるとは想像もしていませんでしたよ。周囲はこの話題で持ち切りです。訴訟に至るまでに何とかならなかったのかとは思いますけど、普通は返還を求められた時点ですぐ返しますよね。阿武町は高齢者が多い町だけど、最近は若い移住者が増えて、少し活気が出てきたなんて思っていたんですけどね」(地元住民)

提訴で問題解決とは限らない

裁判の争点はどこになりそうか? 幅広い分野の訴訟案件を手がける村尾卓哉弁護士が解説する。

「誤って振り込まれたものであっても、名義上は自分の預金である以上、原則的には受取人の預金債権となります。一方で、少なくとも自分のお金ではないことを認識しながらそれを引き出す行為は、窓口で引き出したのであれば銀行に対する詐欺罪、ATMで引き出したのであれば銀行に対する窃盗罪など、犯罪として成立する可能性があります」

弁護士としても、今回の裁判は判断が非常に難しいものらしい。

「一方で町を被害者と考えた場合に成立しうる犯罪については、かなり悩ましい問題があります。それは被害者である町が自ら誤振り込みをしている以上、受取人が町を騙して送金させたことや受取人が町から金銭を盗み取ったということが認められないのではないかという問題があるからです。

日本の刑法上、成立しうる犯罪としては、占有離脱物横領罪(※注:占有者の意思に反して占有を離れた物品を横領する罪)ということになりますが、これも預金債権という物理的に『占有』していないものについて成立しうるかというのは争点になると思います。刑法が起草された当時には想定されていない犯罪類型なので、ストレートに『この罪に該当する』と言いづらい状況です」(村尾弁護士、以下同)

阿武町が訴訟を起こしたこと自体は妥当だという。

「民事上の『不当利得返還請求』とは、『法律上の正当な理由もなく得た利益』に対するものであるため、利益を得たことが犯罪か否かとは無関係の話です。本件が不当利得に該当することは明らかであり、不当利得返還請求それ自体は問題なく認められるはずです。

経緯を見るに、町としては、提訴することは致し方ないかと思います。むしろ訴訟を起こさないほうが、問題ある状態を放置したとして行政上の責任を問われかねないのではないでしょうか」

しかし、提訴で問題が解決するとは限らない。

「勝訴判決が得られたところで、相手に支払い能力がなければ回収はできません。相手に財産がなければ差し押さえも不可能です。既に誤振り込みのお金について、受取人の口座から動いているということであれば、回収はなかなか難しいと思います」

人口3000人ほどの小さな町に起きた異例のトラブル。解決はいつになるのか。



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