
"東北―山梨学院 山梨学院に敗れ、帽子で顔を覆って悔しがる東北のハッブス(中央)=2023年3月18日午後2時23分、阪神甲子園球場、林敏行撮影"
(18日、第95回記念選抜高校野球大会1回戦 東北1―3山梨学院)
三回、東北(宮城)のエース・ハッブス大起投手(3年)は連続して四球を与え、思わず表情がこわばってしまった。
大観衆の視線と沸き立つ声援。地方大会にはない雰囲気にのまれ、制球が定まらない。無死満塁のピンチを招いてしまった。
「顔がこわばってるぞ! 楽しめ!」
マウンドに投げかけられた仲間の声援ではっとした。チームのモットーは「野球を楽しむ」。そして、自らが目指すのは、苦しい場面での冷静さだ。
埼玉県出身。同校OBのダルビッシュ有投手(米大リーグ・パドレス)に憧れて東北に進学した。日課はダルビッシュの動画を見ること。この冬に身につけた変化球のツーシームでは、握り方をまねた。
特に尊敬しているのは、ピンチでも顔色を変えないところ。感情が顔に出てしまう自分を抑え、「ダルビッシュさんに少しでも近づきたい」と選抜大会に臨んだのだった。
心を静めて向かい合ったのは、4番打者。低めのフォークで空振り三振を奪った。次の打者からも三振を取ると、最後は内野ゴロに打ち取り、無失点で切り抜けた。
この日は五回に相手打線につかまり、2失点で降板。チームも七回に1点を返すのがやっとだった。
試合後、「お客さんを楽しませるような投球が出来なくて申し訳ない」と思わず涙があふれた。
「変化球を織り交ぜてもっと楽に投げられるようになりたい」。大先輩も躍動した甲子園の夏。「必ず戻ってきたい」と口にした。(武井風花)
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●佐藤洋監督(東) 「ハッブスはよく粘ったが、いつもと違った。でも、周りが励まし、彼も我慢した。この経験は彼にとって大きなステップになる」