「家事」が最も脳にいい? 起きて11時間後がゴールデンタイム

「家事」が最も脳にいい? 起きて11時間後がゴールデンタイム

  • ライフハッカー[日本版]
  • 更新日:2021/10/14

リモートワークによる運動不足に悩む人が増えていますが、重い腰がなかなか上がらないというのが人情というもの。それなら、文字通りまずは「腰だけ」上げてみませんか?

この「『立つこと』から始める運動習慣」特集では、座りっぱなしがもたらす深刻な健康被害をお伝えするとともに、まずは「立つ」という最小単位の行動から運動習慣を始めることを提案します。もちろんそれ以降のステップアップとなる運動も含め、ぜひお試しください。

第3回は、脳について多くの著書を持つ菅原洋平さんが登場。脳の専門家である作業療法士という立場から、脳と運動の関係について語ってもらいました。

「脳を最適化するためには、脳に感覚データを効率的に届ける運動が大切」と教えてもらった前編に続き、今回はすぐにでも始めたい「運動法」について具体的に紹介してもらいました。

▼前編はこちら

運動は「脳を最適化」する。デジタル時代で失われた感覚データとは

菅原洋平(すがわら・ようへい)

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作業療法士。ユークロニア株式会社代表。1978年生まれ。国際医療福祉大学を卒業後、作業療法士免許取得。国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事したのち、現在は、ベスリクリニック(東京都千代田区)で睡眠外来を担当する傍ら、企業研修を全国で行なう。『頭がいい人は脳を「運動」で鍛えている』(ワニブックス)、『超 すぐやる!「仕事の処理速度」を上げる“科学的”な方法』(文響社)ほか著書多数。

日常生活にある「脳を最適化する運動」

作業療法士として脳の再構築を専門にしてきた菅原さん。その知識と経験を人材開発の分野にも生かし、著書やセミナーなどで「脳を最適化させて効率よく働くためのヒント」を説いています。

脳の最適化に“運動”は欠かせませんが、励まされるのは、その運動が体を動かすことが苦手な人でもできる、日常生活の中のルーティンでいいとのこと。ただし、ちょっとした工夫が必要になるそうです。

家事や駅までの歩行も、脳を最適化する運動になる

菅原さんが提唱している運動法では、「3メッツ程度のゆるい運動」が推奨されています。

メッツとは運動強度のことで、横になったり座ったりしている安静時を「1メッツ」とすると、3メッツ程度の運動は「歩く、軽い筋トレをする、掃除機をかける」といったもの。

「その程度の運動なら毎日しているのに、パフォーマンスが上がった実感は得られない」という人も少なくないかもしれません。ポイントは、ただ動いたり運動強度を上げようとしたりするのではなく、いつもの作業に“集中して丁寧に”取り組むこと。

脳の最適化には、触覚や視覚といった“感覚”がものを言います。

皿洗いひとつにしても、音楽をかけたりテレビを観たりしながらやるのではなく、洗剤の泡立ちを確かめたり、指で食器のぬめりを確認しながら丁寧に行なったりするだけで、脳により多くの感覚データが届けられるのです。

掃除や皿洗い、料理、洗濯など、動作のバリエーションが豊富な「家事」は、実はとても作業レベルが高い運動です。感覚は、他に注意が向けられるとマスキングされて感じにくくなってしまうため、シングルタスクにして没頭するように取り組んでください。

ジムに行くことと同じくらいの意気込みで向き合ってもいいくらいです。慣れたら、家事のバリエーションを増やしてみましょう。

そしてもうひとつ、同じ3メッツ程度の運動である「歩行」についてもコツを聞いてみると「おしりを引き締めることを意識して歩いてみてください」と菅原さん。

体に力が入ったり歯を食いしばったりして歩くのは、運動として非効率。一方、おしりがしまった状態だと、肩の力が抜けて姿勢が正され、体の中心を軸にして手足を振り子のようにうまく動かすことができます。

肛門をキュッと締めて歩くだけ。ずっとそうするということではなく、時々思い出して姿勢を正すだけで大丈夫です。

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掃除や皿洗いなどの家事は、実は作業レベルの高い運動Image: Shutterstock

「姿勢」を正せば、デジタル作業の生産性は上がる

姿勢を正すという点では、デスクに座って作業するときも同様です。

姿勢を正すことで作られるのが「ミトコンドリア」。骨格筋(筋肉)の筋細胞に多く含まれる小器官で、エネルギーの生産能力を高め、ムダな消費を減らす働きをすることで知られています。

姿勢を正す、ゆっくり動く、丁寧な動きを繰り返すことで、ミトコンドリアは増殖することがわかっています。

デジタル作業において、姿勢と生産性は大きな関わりがあります。リモートワークで仕事がはかどらないという悩みをよく耳にしますが、姿勢が悪いためにワーキングメモリーが働かず、ムダなことに手を出すことが増えたと感じているのかもしれません。

ワーキングメモリーとは、次にやるべきことを頭にストックしておいて目の前の作業に取り組む脳の機能。

作業の途中で急ぎのメールをチェックしたために、取り組んでいたことへの注意が散漫になり、集中力が切れてしまった…なんてことがよくある人は、姿勢の悪さが原因でワーキングメモリーがうまく作動していなかったのかもしれません。

PC作業の際に気をつけたいのは、首を前に出して画面をのぞきこもうとする姿勢にならないようにすること。菅原さんがセミナーなどで指導するのは、椅子に座って背筋を伸ばし、1本の軸が左右の耳を通っているようなイメージであごを引いて画面を見るという姿勢だそうです。

受講者からは「集中できて、途中でスマホを見なくなった」「いつもと同じタスクが早く終わるようになった」という声が聞かれるのだとか。

30分に一度、休憩をとって姿勢を変える

最近よく「立って仕事をすることで生産性が上がる」と耳にします。これには菅原さんも同調します。

たとえ正しい姿勢であっても、長く同一姿勢を続けるのはおすすめしません。

体内の酸素や栄養を脳へ届けるのは血液の役目ですが、同じ姿勢で血流が滞れば、脳に酸素や栄養がいきわたらず、作業の効率が下がってしまうからです。

肩や首をグルグルと回すこともいいと聞きますが「動く筋肉の体積が、下半身の比ではない」と菅原さん。

筋肉はポンプの役割を担うので、太ももや脚の大きな筋肉を動かしたほうが効果的です。目安は30分おき。立ったときもきれいな姿勢を意識してください。

立ったついでに、かかとを上げ下げしたり、水を飲んだりするとよりいいでしょう。

もうひとつ、菅原さんが強調するのは「躊躇なく休んでほしい」ということ。休むことに後ろめたさを感じたり、「せっかく作業がはかどっているのにもったいない」と感じたりする必要はないそうです。

脳のために良くないのは“ぶっ通しの作業”です。疲れを感じながら作業を続けても、脳はがんばることができません。

私たちができるのは、自分の脳が働きやすい環境をつくってあげること。仕事がノっていると感じていても、意図的にタスクを区切って休むようにしてください。

30分に1回は立ち上がってかかとを上げ下げしたりトイレに行ったりするほか、脱水を防ぐためにも1時間に一度、180mlを目安に水を飲むといいといわれています。

席に戻ったら頭がスッキリしているはずです。

アナログかデジタルか。狙いに応じて使い分けを

前編で、「デジタル化によって感覚を使った運動機会が減少した」という話がありました。たしかに、書く感触を覚えながら文字を書く、1ページずつ本をめくるといった動きは明らかに減っています。

しかし、だからといって「PCやスマートフォンの使用をやめよう」という話ではありません。

企業ではペーパーレスが進んでいますが、それによる弊害も生まれていて、今は紙をためこまない「ペーパーストックレス」という考え方に落ち着きました。

紙とデジタルの良し悪しが問題なのではなく、目的に合った媒体をうまく使い分けることが大切になってきます。

本でいうと、小説などは紙の厚さや質感にふれながら読むと感覚データが脳に届きやすく、抽象的な表現をうまく捉えることができるので、紙の本が向いています。

一方、ビジネス本や自己啓発本は感動したり抽象的なイメージを描いたりする必要がないので、電子書籍でも十分なのだとか。

起床の11時間後にルーティンをずらすだけ

新しい運動を始めることが脳にとって負担となることは、前編でも触れました。脳はできるだけ使うエネルギーを減らして容量を空けておきたいのに、慣れないことをすると働く領域が増えてしまうからです。

そこで菅原さんがすすめるのが「運動の時間をずらす」こと。

体の深部体温は起床から11時間後にもっとも高くなるといわれています。体温が低いときに無理やりパフォーマンスを上げようとするより、一番高いときに運動することで、脳の効率が高くなるのだとか。

朝7時に起きる人は、11時間後の18時がベストタイミング。前後2時間は許容範囲とのことです。

運動は3メッツ程度の強度でOK。会社からの帰り道におしりを締めて歩く、夕食の支度を集中して丁寧にやってみる…。どれも難しいことではなく、すぐにでも試せそうです。

脳は放っておいても習慣化する。私たちがすべきことは

いかがでしたか? ランニングを始めたり、ジムに通ったりしなくても、脳を最適化してさまざまな能力をアップする習慣を身につける方法はたくさんあるのです。

そこへ「運動を習慣にしようと気負わなくても大丈夫です。どのみち脳は習慣化しますから」と菅原さん。

エネルギーコストを下げるために、同じ動きをしたがるのが脳が持つ性質です。

しかし、習慣がその人にとって望ましいかどうかについてが、脳は判断しません。いいこともよくないことも習慣化されてしまうのです。

私たちがすべきことは、自分にとっての望ましい材料を脳のために用意すること。感覚を意識して使ったり、タスクを30分で区切って休憩をとるということを週に4日も続ければ、あとは脳が習慣にしてくれます。

新しいことを始めるのではなく、いつもの運動を頻度や動線、時間帯を変えて行なうだけ。そんな環境設定をしてあげれば、脳はそのように最適化し、結果、私たちは「なんだか最近、調子がいい」とパフォーマンスの変化を感じられるはず。

まずは、起床から11時間に3メッツ程度の運動を集中して丁寧に、週4日、続けてみませんか?

▼前編はこちら

運動は「脳を最適化」する。デジタル時代で失われた感覚データとは

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脳にいい24時間の使い方

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大森りえ

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