カレー沢薫の時流漂流 第133回 島耕作コロナ感染の疑いから考える、フィクションとコロナの微妙な関係

カレー沢薫の時流漂流 第133回 島耕作コロナ感染の疑いから考える、フィクションとコロナの微妙な関係

  • マイナビニュース
  • 更新日:2021/02/22
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未だにコロナ終息の兆しが見えない現在、著名人の感染ニュースもそう珍しくはなくなってきた。そんな中でも、今ネット界隈でひと際注目を集めている「著名人のコロナ感染ニュース」がある。

その人物とは「島耕作」だ。

正確には「コロナ感染の疑い」であり、これを書いている時点ではまだコロナ確定ではない。

○「島耕作時空」でも猛威を振るう新型コロナウイルス

島耕作を知らないマイナビニュースの読者というのは、うどんを見たことがない香川県民ぐらい少なそうだが、一応説明すると漫画「島耕作」シリーズの主人公である。

最近は騎士団長になっていたりするので断言しづらくなっているものの、島耕作は一応「サラリーマン漫画」である。舞台は現代日本で、現実の世相を大きく反映した内容になっているため、島耕作時空でも「新型コロナウイルス」は発生したという設定になっており、登場人物がマスクをしている描写もある。

そんな中、耕作がウイルス感染者と濃厚接触していることが発覚、さらにコロナの症状である「味覚異常」を起こしている可能性が示唆されたところで「つづく」となっている。

島耕作で「濃厚接触」と言うと、こんなときにウイルス保有者とセレブレーション不悪口(ふあっく)かよと思うかもしれないが、相手はビジネス上重要なキーを握る美女ではなく、60代半ばのおじさんだ。

つまり、コロナに感染したおっさんとセレブレーションしたのか、というとそうではなく、「ファミレスでマスクせずに歓談してしまった」ということが描かれている。

耕作のコロナ感染疑惑には、読者から「大丈夫か」「あの年齢での感染は危険」と心配の声が相次いでいる。耕作もああ見えて70過ぎなのだ。

だがこのご時世、マスクなしでの外食というのは褒められたことではない。ある意味、個室で一対一でのセブファ(略称)のほうがまだ安全だ。

○なぜ偉い人はコロナに対して「強気」なのか

まさか耕作がコロナで死ぬなんてことはないだろう、とは思うが、現実でもコロナに対する危機感が薄れてきているのは確かであり、「不要不急の外出は控えましょう」と言っている政治家のほうが、大人数で会食していたというニュースもよく見かける。

しかし「大人数で集まらない」というのは、国民に示しをつける以前に「己の身を守る行為」である。なぜ自らそんな危険行為をするのかというと「自分はかからない」と思っていると言う他ない。

年を取るほど病気にはなりやすくなる。だが、それに反比例して「自分は大丈夫」という自信はなぜか年を取るほど強くなっていくし、偉い人間ほどそう思いがちだ。

横断歩道のない道路を「優雅」としか言いようがない速度で横切ろうとしてくるのは大体老だ。よほど「自分は車にひかれない」自信があると見える。他にも、このご時世、絶対中止にしたほうがいい会合を最後まで開催しようとするのも、大体会長の老である。

こういう現実があるので、島耕作をコロナで亡き者にすることにより、「どんなに偉かろうが、今まで積み重ねたものがある人間だろうが、油断すればコロナにはかかるし、死ぬ」ということを世に示そうとしている可能性もある。実際、コロナはそういうものだ。

ただ、耕作は仮にコロナで死んだとしても「ゾンビ 島耕作」「転生悪役令嬢 島耕作」などいくらでも復活できる。しかし、現実の我々はそうはいかない。コロナに慣れが生じつつある昨今だが、今一度「島耕作でもかかるレベル」の脅威として警戒していくべきだろう。

○作家が苦心するフィクションとコロナとの関係

ちなみに、島耕作に限らず「フィクションの中でコロナをどう扱うか」というのは、作家の中で大きな課題となっている。

ファンタジーや時代劇でコロナを出すのは不自然だが、現代劇でのコロナを無視した世界観に対し、そろそろ読者が違和感を覚えるようになってきている。実際、登場人物がコロナに関して言及したり、マスクをつけたりしている描写も増えてきた。

だが、コロナについて触れづらい作品もある。例えば「乱(みだれ)パ」をテーマにした作品の場合、当然「コロナがはやってるのににそんなことしたら危険すぎるだろう」という話になってしまう。よって、テーマ的にコロナに触れると不都合が多い場合には「コロナのない世界」のまま進めて行くしかない。逆に、「コロナ禍においてどうやって乱(みだれ)パをしていくか」という新しいテーマができたとも言える。

私もコロナが現れてから、体感にして5億回はコロナに関するコラムを書いている。作家にとってもコロナは厄介な存在だが、新しいネタができたとも言えるのだ。

ただ、コロナがある設定で登場人物にマスクをかけさせると、表情が描けなかったり、「突然のキッス」のような展開ができなかったりするなどの問題も出てくる。これは「突然のキッスはコロナ以前に性犯罪だからそろそろやめろ」ということなのかもしれない。

これもまた逆に、コロナを都合よく使えることもある。それは「人ゴミ」を描きたくない時だ。本来なら人間をたくさん書かなければいけない場面でも「今はコロナで人が少ない」という設定にすればそこまでたくさん描かずにすむ。

もし、今まで全くコロナについて触れていなかった作品が、突然意味もなくコロナに関して言及しだしたら、そういうことが理由なのかもしれない。

カレー沢薫

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