推しにも友達ライバーにも「投げ銭」。10代に浸透する「スパチャ」、なぜモヤる?

推しにも友達ライバーにも「投げ銭」。10代に浸透する「スパチャ」、なぜモヤる?

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/10/14
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高校1年生の息子さんを通して、現役中高生のリアルな声を探っているライターの太田奈緒子さん。今まで、子どもの性暴力問題やSNSの使い方、ネットいじめ、コロナ禍の鬱屈した子どもたちの本音などを聞き出す記事などを作ってきた。

今回は、息子さんに訊ねられて以来ずっと回答に困り、モヤモヤが止まらないという動画サイトの「スパチャ」(正式名称:スーパーチャット/投げ銭システム)についての問題だ。中高生にも浸透し始めているオンラインでの投げ銭について寄稿してもらった。

中高生にも浸透している「スパチャ」

「ねぇ、スパチャってどう思う?」 ある日、高1の息子に突然、聞かれた。

「あースパチャね。YouTubeのライブ配信とかで投げ銭(直接、課金したり、アイテムを購入したりして、見る側が配信者にお金を提供)することでしょ」と答えると、息子が言った。

「そうそう。で、友達がさ、スパチャ投げたのがバレて、親にめっちゃキレられたんだって。友達の家は、ネットゲームの課金とか音楽のサブスクとかは毎月の小遣いからあとで親に差し引いてもらう条件で(親のカードを登録してある自分のスマホでキャリア決済することが)OK だったんだ。なのにスパチャは大激怒。友達は『ワケわかんねー』ってぼやいてる。ねえ、親から見てゲームの課金とスパチャって何が違うの?」

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子どもがスパチャをやっていたら?と中高生の親に尋ねると、「賛成できない」の声は多い。photo/iStock

うーん、うまく説明できないけれど、友達の親御さんがキレた心情はよくわかる。
実はこのところ、私もスパチャにはモヤモヤしていた。私が見ているYouTubeのライブ配信でも、明らかに子どもとわかる「期末テスト中やけど、このライブだけは見逃せん!」とか「クラスで最初に○○さん推しになったのは私でーす!」といったコメントが、色付き(課金すると、目立つようにコメントに色が付く仕様になっている)で頻繁に表示されるのに気が付いたからだ。

私が目撃した範囲内では、明らかに子どもとわかるスパチャの金額は、数百円がほとんどだった。息子の友達も555円をスパチャして、お気に入りの女性VTuber(2D または3D のアバターを使って活動しているYouTuberのこと)に、自分の名前を呼んで欲しかったらしい。

10代の子どもがお小遣いの範囲内で、数百円のスパチャ……。やはり私的には、彼の親御さん同様、金額が少なくてもそれは「ナシ」だ。

もちろん大人が自分の裁量で投げ銭することには、私自身、なんの異論もない。むしろコロナ禍でライブ活動ができなくなったアーチストをライブ配信時にスパチャで支援しているファンの様子を見て「なるほど、これが時代に合った新しい応援のスタイルなのか」と感心していた。でもやっぱり、子どもが自分の小遣いの中から投げ銭をする行為を「アリ」と肯定はできない。

子どもによる多額投げ銭行為は世界的な問題に

2020年、桐生ココさんというVTuberが、年間総額で約1億6000万円のスパチャを獲得したことがニュースになったが、世界的に見ても日本はトップクラスのスパチャ大国のようだ。昨年の年間ランキングでは、トップ10のうち9人が日本勢となっている。

スパチャをはじめとする投げ銭が、急速に一般化している今、YouTubeに関わらず、子どもたちのネットのライブ配信への投げ銭(とくに高額な投げ銭)は、世界的にも問題になっている。

2019年には、中国の小学5年生の女の子が、約200万元(約3200万円)を投げ銭で使い込む事態が起きた。彼女は母親のスマホを使って、盗み見た暗証番号で決済していたという。2020年には、アメリカでも10代の少年が親のデビットカードを使って、2万ドル超(約210万円)の投げ銭を行ったとニュースが報じた。

日本でも、子どもの投げ銭でトラブルが起きていて、2019年には中学生の女子が、父親のクレジットカード番号を使い、数か月で100万円以上の投げ銭などを行ったことについての相談事例が国民生活センターのHP にも掲載されていた。

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親のカードをこっそり使ってスパチャをする事件は各国で起きている。photo/iStock

ITツール比較サイトの調査(※1)によると、YouTubeに限らずネット上の「投げ銭」機能を利用したことがある15歳~19歳は、全体の10%強だという。現状としてこれを多い数とは断言できないものの、徐々に投げ銭文化が子どもたちに浸透しつつあるようで、気がかりだ。
(※1)株式会社SheepDogによる調査

コロナ禍、子どもがスパチャに手を出しやすくなった

オンラインゲームのアイテムの購入や、音楽のダウンロードやサブスクリプションサービス利用など、ネットではクレジットカード決済が必要になる場面が多い。またコロナ禍の影響もあり、日常の買い物もネットショッピングがぐっと増え、子どもも文房具や本などをネットで購入するのが「当たり前」になりつつある。

こんなとき、つい子どもに自分のクレカ番号や暗証・認証番号などを教えて「自分で買っといて」となってしまう親もいるようだ。もっと手軽なところでは、キャリア決済(登録したカードでスマホで決済すること)という手もある。

最初は親が認めたものだけを購入していた子どもも、だんだんルーズになってこっそりゲームに課金したり、通販で無駄遣いしたり、投げ銭にハマって大事になるケースが多いようだ。でも、これはいつか親バレしてしまう。

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お小遣いをスパチャに使っている子どもも徐々に増えつつある。photo/iStock

そこで、親バレしないように、未成年でも使えるクレカ決済を使用する子もいる。基本的にクレジットカードを作れるのは「高校生を除く満18歳以上」なのだが、クレジット会社などが発行しているプリペイド方式のクレカなら、本人確認不要(審査・年齢制限なし)で誰でも作れるタイプのものもあることを、今回初めて知って驚いた。

これはあらかじめチャージした金額の範囲内で、クレジットカード決済ができるというものだが、ネットショッピング専用の「バーチャルカードアプリ」なら、お金をチャージすればすぐに利用できる。ここにお年玉やお小遣いをチャージして、ゲーム課金や投げ銭に使えば親は気づかない。

子どもの裁量で使える「小遣いの範囲内」とはいえ、今の子どもはお金持ちだ。毎月の小遣いに加え、親戚からのお年玉などで10万円以上持っている中高生もけっこういる。超高額ではないにしろ、これを投げ銭に使われたら、親としては笑って見過ごすわけにはいかないのではないか。

子どもの投げ銭になぜモヤってしまうのか?

ここで息子が投げかけた「ゲーム課金や音楽のサブスクはOKでも、投げ銭はNG?」について考えてみた。

もちろんどちらも絶対NGな保護者もいると思うが、ゲームへの課金は、ゲーム内イベントの参加料として必要だったり、強い武器やかわいい衣裳でプレイするために有料アイテムが欲しくなる感覚は、理解できる。そもそもネットゲームは、プレイするだけなら無料であることが多く、ゲームのハード本体やゲームソフトを購入して遊んでいた世代の私たちからすると「ま、そのくらいなら」という気持ちにもなりやすいのかもしれない。

音楽のサブスク・ダウンロードも同様で、レコードやCDをお小遣いで買ったりレンタルして、それをカセットやMDにダビングして聞いていた世代としては「音楽を楽しむ新たなツール」として、許容の範囲内なのだ。

しかし投げ銭はというと、自分が子どもの頃、経験したことがない行為なだけに、どうも抵抗がある。古くて申し訳ないが「投げ銭」という言葉を聞くと、昔テレビで見た大衆芸能の人気役者さんの着物に万札をねじ込んだり、お札で作った首飾りを役者さんの首にかけるファンの姿をイメージしてしまう。あとは水商売の人への高額なチップ的な……。どれもあくまで余裕のある大人が余興的にすることで、お小遣いをもらっている子どもがしていい行為にはどうしても思えない。

推し活で実際にスパチャしている女子高生の声

実際に某男性VTuberの推し活をしているという高2のAさん(女子)に話を聞いてみた。

「もともとアニメが好きだったから、自分のど真ん中の(好みの)絵柄のSさんはYouTubeで見てすぐにファンになりました。声もキャラのイメージ通りだったし、雑談メインなんですけどおもしろい。スパチャ以外にはスーパーステッカーも買うし、チャンネルのメンバー(有料会員)にもなってます。

スパチャやスーパーステッカー(チャンネルオリジナルの画像をコメント欄に貼ることができる課金サービス)は、コメント欄でちょっと目立ちたいっていうのも正直あるけど、私くらいの課金(月に5千円程度)じゃ全然、目立たない(笑)。大人は3万とか投げる人もいるし。でもスパチャやステッカーすると、Sさんが『〇×、ありがとう!」って自分の名前を呼んでお礼言ってくれるんですよ。それが嬉しい。『もう名前覚えちゃったよ~』とか言われたりすると、爆上がり! 逆に、スパチャが集中して名前を呼び損ねられたりすると、モヤモヤしちゃう」(Aさん)

ふむ、現役スパチャ勢は、私とは違うポイントで、投げ銭でモヤモヤするらしい。
Aさんのお小遣いは月に1万円。その約半分をスパチャなどの課金につぎ込むのって、もったいなくない?

「えー、リアルのアイドルとかの推しやってたらもっとかかるじゃないですかー。ライブのチケット代と会場に行く交通費とかグッズとか、音源とか……。CD複数買いしたりとか。地下アイドルの推しやってる友達なんて、さらにお金かかってるっていうし」

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推しが自分の名前を呼んでくれるだけで、もっともっとという気持ちになってしまうという。photo/iStock

聞けば、地下アイドルには、さすがに現金を渡す投げ銭はしない(禁止らしい)ようだが、代わりにスタバカード(スタバで使えるプリペイドカード、つまり金券)が定番のプレゼントだという。チケット、グッズ代のほかにライブ後に何枚もツーショットのチェキ撮影をするのがお約束で(1枚千円程度)そのお金もかかる。

また、地下アイドル自身がAmazonの欲しいものリストで公開している品物(お米やエナジードリンクなど生活必需品が多いのだとか)を買って送ってあげることもあるらしい。ファンから渡すプレゼントと言えば、花束や手作りマスコットという時代はとっくの昔に終わったようだ。

リアルでもネットでも「推し」とか「応援」の行動が、昔に比べると、どストレートにお金に結びついているようだ。まあ食べられないし、すぐに枯れる花よりも、お金(プリペイドカード)や生活用品をもらうほうが推される側も助かるのだろうけれど……。

気持ちを「お金」で表現することへの違和感?

また、Aさんによると、YouTube以外のライブアプリで「ライバー」デビューし、仲間うちで「ウケる~」といいつつ少額を投げ銭し合う「遊び」に興じる男子中高生もいるのだという(ちなみに女子のライバーは「ライバーやってる」とはリアルの友達に話すものの、アカウントは教えないのだとか。男性のファン対象の営業スマイルは女友達に見られたくないらしい)。

こうしたプロとアマの境界線があいまいになっている状況で「投げ銭」というお金がやりとりされる状況を知ると、モヤモヤ度はさらに高まる。

超合理的に好意や応援の「気持ち」をお金に変換して表現するやり方には無駄がなく、もらう方もあげるほうも納得しているなら問題がないのかもしれないが、これが当たり前になってしまうと、たとえば大好きな恋人から誕生日に物より現金をプレゼントされたほうが嬉しいと感じるようになるのだろうか。

贈る相手の趣味や欲しいものをあれこれ想像して、財布の中身と相談しつつ悩みまくりながらプレゼントを選ぶ(作る)楽しさや、思いのこもった(多少勘違いはあっても)選んでくれたものをもらう喜びを味わえるのは、若い時代の特権のような気もする。

「YouTuberやアイドルとリア友は違うよ。仲間うちで投げ銭し合うのは、たぶんライバーごっこの演出で、普段の友達付き合いでは当たり前にはなんないと思う。それに小遣いは『自分の好きなものに使っていい』って母さんも言ってるじゃん。自分が推してるYouTuberも喜んで、投げる友達も嬉しいなら、俺はスパチャも意味あるお金の使い方だと思うけど?

とくにライブアプリの投げ銭なんて、画面にハートがぶわーっと舞い散るとか、ゲームの有料エフェクトアイテムとほぼかわんないし。本人が納得してればいいんじゃない? 俺? 俺はマンガ買うから、小遣いを投げ銭に使う余裕はないけどさ」(息子)

やはり感覚が世代で大きく違うのだろうか。お金のやり取りの感覚自体が変化してきている?

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合理的ではあるが、気持ちもすべて「お金」で解決するやり方を10代から教えていいのか…。photo/iSotck

「うーん、それでもモヤモヤするんだよ」と小声になる私。
形勢はかなり不利である。

しかしながら、投げ銭を受け取る側のYouTuberの中にも、最近、あえてスパチャを選択しない人や、スパチャ機能を使うのをやめたという人もいる。彼らも何かしらの違和感を覚えたに違いない。一体その正体はなんなのか……。

自分でも説明できないこのモヤモヤ、しばらく悩むことになりそうだ。

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