原料に植物かす 脱炭素の切り札「バイオコークス」の可能性

原料に植物かす 脱炭素の切り札「バイオコークス」の可能性

  • 産経ニュース
  • 更新日:2022/05/14

持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みが進む中、温室効果ガスの排出量削減の動きが本格化している。化石燃料は二酸化炭素を排出する一方、日常生活に欠かせないが、その一つである石炭コークスに代わる燃料として注目が集まるのが、木くずや食品廃棄物などを原料とした「バイオコークス」だ。脱炭素社会への切り札として伝統工芸や飲食店でも導入の動きが広がっている。

こうこうと燃える炉の中は千度を超える高温となり、鉄が溶かされていく。4月15日、岩手県奥州市。岩手県の伝統工芸「南部鉄器」の工房が、二酸化炭素排出削減への大きな一歩を踏み出した。

表面の模様に特徴がある南部鉄器は岩手県の伝統工芸で、ルーツは平安時代までさかのぼるとされる。原料の鋳鉄を炉で溶かして型に流し込み、鉄瓶や急須、鍋などに加工する。

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バイオコークス

今回は炉で使う燃料の一部をバイオコークスで代替する実証実験を実施。通常使う石炭コークス20キロのうち、熱量の1割にあたる2キロ分をバイオコークス4キロに置き換え、鉄器の品質を維持できるかを試行した。

「温度も問題なく、いい結果が出た」。南部鉄器の工房などで作る水沢鋳物工業協同組合で技術アドバイザーを務める堀江晧(ひろし)・岩手大名誉教授は手応えを口にする。

実験で使ったのは、樹皮やリンゴの搾りかすを使ったバイオコークス。鉄器の仕上がりは石炭コークスだけの場合と比べても遜色ない結果だったといい、「バイオコークスは鉄器に悪影響となる硫黄も少ない。今後、使用する割合を増やしていけるだろう」などと話す。

実証実験を行った工房「及富(おいとみ)」は1848年創業、従業員21人の小さな工房だ。堀江氏は「南部鉄器の小さい工房が挑戦したことに大きな意義がある。業界全体に広がってほしい」と期待する。

バイオコークスはバイオマス原料を圧縮し、加熱や冷却などの工程を経て完成する。今回は、近畿大バイオコークス研究所(北海道恵庭市)が開発したものを使用した。

井田民男所長によると、どんな原料からでも作ることができるのが強み。原料は幅広く、植物のかすや樹皮、排泄(はいせつ)物のほか「古着や紙も原料になる」(井田氏)という。燃やした際に出る二酸化炭素は、光合成などで吸収した分が外気に戻るとの考え方から、排出量ゼロと算定できる。

脱炭素社会を意識し、バイオコークスを導入する企業も増えている。ファストフードのモスバーガーはコーヒーを抽出したかすを加工し、焙煎の燃料として使う取り組みを進めている。

二酸化炭素の排出量削減に向けた切り札といえるバイオコークスだが、課題もある。

「国内で使われている石炭コークスを全て置き換えるには、日本中の木を全部切り倒して原料にしてもすぐに足りなくなる」と井田氏。恒常的に使用するにはバイオマスの安定的確保が求められ、井田氏は「石油燃料の枯渇に備えて研究や準備を進める必要があり、現状はファーストステップ(第1段階)だ」と話した。(鈴木俊輔)

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