安倍晋三首相を苦しめた潰瘍性大腸炎、治療困難な難病...原因はいまだ不明、大腸がん併発も

安倍晋三首相を苦しめた潰瘍性大腸炎、治療困難な難病...原因はいまだ不明、大腸がん併発も

  • Business Journal
  • 更新日:2020/09/15
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「Getty Images」より

安倍晋三首相が「潰瘍性大腸炎」による体調不良を原因に辞意を表明したことで、潰瘍性大腸炎という病気に対する注目度が高まっている。中等症以上の過敏性大腸炎では、医療費助成制度が受けられるほど治療が困難な疾患である。一国の総理を退かせるほどの潰瘍性大腸炎とは、どんな病気なのか。一般社団法人予防医療研究協会理事長の苅部淳医師に聞いた。

「潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患です。特徴的な症状としては、下痢と腹痛です。病変は直腸から連続的に、そして上行性(口側)に広がる性質があり、最大で直腸から結腸全体に拡がります」

症状の程度により軽症、中度、重症に分類でき、中度以上では指定難病となり医療費控除制度を受けることができる。重症では、発熱や頻脈などの自覚症状も強く、また長期間血便が続くこともあり、それに伴い貧血となり、ふらつきが起きることもある。

8月15日、安倍首相が全国戦没者追悼式に出席した際に「式辞の声は弱々しく、かすれ、壇上からスロープを下りてくる時には体がふらついていた」としてネット上をざわつかせていたが、潰瘍性大腸炎の悪化に伴い健康状態がかなり悪いなかで公務を続けていたと推測できる。

安倍首相の辞任会見によって潰瘍性大腸炎がクローズアップされたことは、これまで病気についての理解が得られず社会生活を営む上で悩んでいた多くの患者にとって、大きな救いとなるだろう。

潰瘍性大腸炎の患者は年々増加する傾向にあるが、その原因はさまざまだという。

「潰瘍性大腸炎の患者数は16万6060人(平成25年度末の医療受給者証および登録者証交付件数の合計)、人口10万人あたり100人程度で、米国の半分以下です。これまでに腸内細菌の関与や本来は外敵から身を守る免疫機構が正常に機能しない自己免疫反応の異常、あるいは食生活の変化の関与などが考えられていますが、まだ原因は不明です」

また、栄養の摂取が難しくなることから体重が減少するケースもある。さらに、炎症が腸管壁の奥まで進行すると、さまざまな腸管合併症が起こる。発症年齢のピークは男性で20~24歳、女性では25~29歳だが、年齢を問わず発症する。重症患者は少なく90%が軽度から中度の症状である。長期間活動性の状態が持続すると、がん化することがある。

潰瘍性大腸炎の治療

安倍首相は会見で、従来の薬に加え新たな薬を投与し改善傾向にあると明かした。潰瘍性大腸炎の治療は、症状の程度によってさまざまだ。

「治療としては内服で症状を抑えるステロイド剤、免疫抑制剤、炎症を抑えるASA製薬などが使用されます。重度の場合、血球成分除去療法と呼ばれる透析のような治療を行うこともあります。さらに重症の場合は外科手術が行われ、大腸の全摘を行います」(同)

重症と分類される患者は少なく、約90%の患者は軽症から中症といわれる。治療によって社会生活に支障がない安定した状態を保つことができるケースが多いが、安倍首相のように再発を繰り返す患者も少なくない。

「多くの患者では症状が改善し寛解状態になりますが、再発する場合も多く、寛解を維持するために継続的な内科治療が必要です。また、状態が悪化し、手術が必要となる患者さんもいます。大腸がんを合併する方もいるため、症状がなくても定期的な内視鏡検査が必要になります。ほとんどの方で生命予後は健常人と同じです」(同)

安倍首相も今後、治療に専念し健康な状態に戻ることは可能なのだろうか。

「安倍首相も再発ですので、まずは内服治療で悪化しないようコントロールしていくことになります。1度目の首相退任の際も症状が悪化し、1日30回もトイレに駆け込んでいたそうで、発症時の公務は非常に難しいといえます。今回は、自身の病状をきちんと把握した上での退任であり、国政への影響を最小限にした的確な判断だと思います」(同)

潰瘍性大腸炎の予防

潰瘍性大腸炎には、症状が再燃する「活動期」と、治療によって症状が安定した「寛解期」がある。継続した治療が大切であり、寛解期に自己判断で治療を中断することなく、医師の指示に従ってほしい。ストレスや過労、睡眠不足などは避け、刺激物や暴飲暴食を避けることが重要だ。

「安倍首相に対して、『自己管理ができていない』『体調を壊す癖がある』などと発言した議員がいましたが、このような発言は首相だけでなく、原因不明の難病で苦しむすべての患者に対する冒涜であり、目を見張るばかりです。この機会に少しでも難病に対する理解が進めば幸いです」(同)

原因の解明が進み、治療法が一日も早く確立されることを願ってやまない。

(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

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吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

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