「わりと現実を見ちゃうタイプ」だった東京女子・瑞希がプロレスに魅了されたワケ

「わりと現実を見ちゃうタイプ」だった東京女子・瑞希がプロレスに魅了されたワケ

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  • 更新日:2022/01/15
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瑞希【写真:新井宏】

2冠の夢破れる 「すぐには立ち直れなかった」

3月19日に東京・両国国技館に初進出する東京女子プロレスが、1月4日の後楽園ホールにて2022年の好スタートを切った。東京女子が「イッテンヨン」と呼ばれるこの日に後楽園にて試合を行うのは、16年から7年連続だ。しかも団体は年々スケールアップしており、聖地での大会開催は今年のイッテンヨンが通算20回目(特に昨年は2連戦を含む8度の開催!)となる。その間、20年11月にTDC(トーキョードームシティ)ホール、昨年10月には大田区総合体育館という大会場への進出も果たした。そして今年は両国にプラスし、10・9TDCホールも決定済みと、東京女子単独でのビッグマッチがますます拡大しているのだ。

そのなかでもやはり、「イッテンヨン」は特別な意味を持つ。もともとプロレスファンの初詣とも言える新日本プロレス1・4東京ドームにあやかったものではあるが、今ではこちらの「イッテンヨン」も完全に定着したと言っていいだろう。だからこそ、「イッテンヨン」でのスタートダッシュは今後の方向性を占う意味でも見逃せない。

今回のメインでは、3度目の戴冠で再び絶対王者への道を歩もうとしている山下実優のプリンセス・オブ・プリンセス王座に、プリンセスタッグ王座戦で山下を直接下した瑞希が挑む図式となった。

一昨年TDCのメインで坂崎ユカの同王座に挑んだ瑞希だが、「イッテンヨン」のメインは初体験。同王座には通算4度目の挑戦で、20年11月に東京女子所属選手となってからは初めてとなる。現タッグ王者がプリプリ王座も奪取すれば初の2冠王誕生という期待もあった。彼女自身も、勝てば団体のシングル頂上王座初奪取。瑞希の方から挑戦をアピールしたのも初めてなだけに、機は熟したとも考えられた。が、好勝負の末、瑞希は敗れてしまう。

結果、山下の絶対的強さが改めて浮き彫りになった。試合後には3・26両国での旗揚げメンバー同士によるタイトルマッチ(山下VS中島翔子)も決定した。団体が両国に向けて一気に動き出した一方、瑞希の落胆ぶりは見ている方が心配になるほど。その表情からして、肉体的以上に精神的ダメージが大きいのではないかとも思われた。

「そうですね。次の日くらいまでは落ち込んでて、すぐには立ち直れなかったです。ただ、(敗戦から4日後の)地元・神戸での凱旋興行で吹っ切れました。やっぱり試合をすること、応援してくれる方に会えるって大きいですよね」

シングルのベルトを故郷に持って帰るつもりが思惑通りにならず、申し訳ない気持ちもあっただろう。しかし、東京女子で2度目の凱旋大会はタッグ王者・瑞希を大歓迎。気持ちを切り替え、前を向くことができたという。いずれはまた、山下に挑むときがやってくる。過去2度ほどシングルで勝っているだけに、決して不可能な話ではないのだ。

「所属になって1年のタイミングもあり、私も東京女子を背負いたいという気持ちになって挑戦しました。私がみいちゃん(山下)に勝って新しい風を吹かせたいとも思ったんですね。でもやっぱり、みいちゃんは強かったです。まだまだ足りないものが多かったから負けたんだと思います。みいちゃんはずっとベルト持ってるし(3度戴冠でトータル16回防衛)、持ってることの大変さもあったと思うんですけど、そういうのも含めてすべてが強さになってるんだなって思いました。私ってチャンスをつかむところまではいくんだけど、あと一歩が遠い。まだまだつかみきれてない。でも、いつか必ずつかまなきゃなって思ってます。応援してくれる方のためにも(プリンセス王座の)白いベルトを巻いた姿を見せたいですね。(インターナショナルのベルトもあるが)取るからにはずっと見てきた、あの白いベルトを取りたいです!」

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坂崎ユカ(左)とタッグ王座を保持する【写真:新井宏】

坂崎ユカとは「プライベートでもすごく仲がいい」

悲願のプリプリ王座奪取に向けて、「まずはタッグ王座の防衛を重ねていきたい」と瑞希は言う。現王者でもあるタッグ王座は2度獲得し、どちらも坂崎がパートナー。マジカルシュガーラビッツ(マジラビ)を組んだことによって、瑞希は大変身を遂げた。過去のシングル王座挑戦やシングルリーグ戦連覇(19年&20年)も、すべてはタッグが起点になっていたと言っても過言ではないだろう。

「ゆかっち(坂崎)とはプライベートでもすごく仲がいいんですよ。私のことを信じてくれてるってすごく感じますね。自分のことは二の次ってくらいに優しいんです。私もすごく信頼してますし、それだけにマジラビで成長していくためには私が成長しなくちゃいけないなって思います」

坂崎とは、東京女子を体現するレスラーでもある。コロナ禍によりなかなか興行が開催できなかったとき、彼女はシングル王者としての責任も感じたか、タッグパートナーの瑞希はもちろん、若い選手の不安を取り除こうと必死に団体を引っ張ってきた。マジラビの仲の良さも、東京女子の雰囲気に直結しているのだ。

「所属になる前から感じていたんですけど、東京女子ってすっごく温かいんですよね。これってたぶん、みんなが口をそろえて言うと思います。それくらい温かくて仲のいい団体です。そのなかでライバル関係があり、負けたくない、絶対に勝ちたい気持ちがある。すごく切磋琢磨(せっさたくま)していける環境にあるなって思いますね。私って負けず嫌いなんですけど、こんなに負けたくないんだっけって、改めて思いますもん」

リング上は闘い。それだけに仲の良さは闘う上でマイナスにもなりかねない。が、東京女子はそこをプラスに転化させている団体だ。SKE48の荒井優希がすんなり入っていけたのも、この団体が作り出す環境、世界観と無縁ではないだろう。キャリアや年齢が近い選手が多いのも、切磋琢磨における重要な要素である。

東京女子のレギュラー選手には、いわゆる大ベテランが存在しない。全員がデビュー10年未満で、旗揚げメンバーでさえキャリア8年だ。26歳の瑞希もデビューから9年がたったばかり。すなわち今年の「イッテンヨン」は、10周年イヤーのスタートでもあった。22年12月29日がデビューから10年の日。今年の年末、瑞希がどんな状況でこの日を迎えているか、いまから楽しみだ。

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1・4後楽園で山下実優(右)に挑戦した【写真提供:(C)東京女子プロレス】

バズる技「渦飴」の開発エピソード

紆余曲折ありながらもたどり着いた東京女子のリング。では、彼女にとってプロレスとは何なのか、聞いてみた。

「なんですかね? 私ってわりと現実を見ちゃうタイプで、人生において何をしたいとか、特にはなかったんですよね。でもプロレスをやってたら、これもできるんじゃないか、あれもできるんじゃないかと思えるようになって、応援してくれる方の期待に応えたいと思えるようになりました。それからいろんな夢を持てるようになったし、実際、いろんな夢をかなえさせてもらってます。それから、プロレスによってこんな一面もあったんだとか、自分の知らない自分を知ることができるようになりましたね。私にとってプロレスとは、自分の知らない自分を知れるものだと思います!」

東京女子に参戦するまでは正直、プロレスをやめたいと思ったこともあったという。が、続けることによってビッグマッチのメインも経験、トップ戦線に食い込んできた。「以前は勝つ喜びも知らず、楽しいと感じるまでちょっと時間はかかっちゃったけど、やり続けるとたどり着けるんだなと思いました。ホント、続けてよかったです」と瑞希。デビュー戦を会場で見た筆者からしても、現在の彼女の姿は感慨深い。あの頃、渦飴(錐もみ回転式のボディーアタック)のようなバズる技を開発するほどの選手になるとは予想だにしなかった。

「体重が軽いとマイナスに思われる部分をプラスにしたかったんです」。逆転の発想から生まれた驚異の空中技は、生でこそ見てみたい。2022年の東京女子では、渦飴披露の場がよりいっそう拡大する。その先にはきっと、歓喜の瞬間が待っている。今年のイッテンヨンでは防衛に成功した山下はもちろん、敗れた瑞希も近未来に向けてのスタートダッシュを切ったのである。

新井宏/Hiroshi Arai

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