元ボクサー75歳男性。非社会性人格障害、衝動型人格障害による多殺人者症例

元ボクサー75歳男性。非社会性人格障害、衝動型人格障害による多殺人者症例

  • 幻冬舎ゴールドライフオンライン
  • 更新日:2022/11/25
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(F60.2)非社会性人格障害、(F60.3a)衝動型人格障害による多殺人者症例

A case report of a man who committed several murders and diagnosed as(F60.2)dissocial personality disorder and(F60.3a)emotionally unstable personality disorder

石川文之進 鈴木三夫 茅野真男 村瀬活郎 石川叔郎 石川経子 原田元 深見忠典

要旨

元プロボクサーで傷害致死事件を3度起こし、服役後は路上生活者として生活保護を受給、74歳で脳梗塞を発症し右半身不全麻痺となった75歳男性の症例報告を行う。病前性格は情性欠如、衝動性、爆発型、背徳症であり、本症例は劣悪な家庭環境に起因する病的人格を有し、中核精神病質、正しくは仮性精神病質と認められる。

KEY WORD:脳梗塞、中核精神病質、仮性精神病質患者概要

家族歴

父方・母方:生死ほか詳細不明。

同胞(本人含む):男子2 人、女子3 人。

本症例は長男。兄弟全てと音信不通。

本人歴

男性、当院入院時75歳、元プロボクサー。出生、幼少期の成育状況、および当院入院数年前までの生活状況不明。本症例申し立てによれば、「妻は3人いた。先妻とは離婚、後妻とは死別」「先妻との間に2 子(女子1 人+流産〔男〕)いたが、所在などは不明」。発症前の性格は、情性欠如、衝動性、爆発型、背徳症(moral insanity)。74 歳:ホームレス。脳梗塞発症、右半身不全麻痺。両下肢、右上肢運動が不十分。75 歳:生活保護を受給し、7 カ月時、介護付き施設に入居するが、暴言・暴行が次第にエスカレート。メマンチン塩酸塩錠投与でも不効。10 カ月時と11 カ月時に各4 回、暴行・外傷行為あり。翌月はじめに、当院の最重症閉鎖病棟に任意入院。

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犯行概要

表1 参照(本症例申し立て)。

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写真を拡大 [表1]犯行履歴

入院経過

75 歳(B 医師):当院、任意入院。美男子、飲酒あり。女性関係は「まあまあ」。喧嘩好きで、元プロボクサーで気持ちが昂るとごつい左手で猛しく机を叩く。「日本チャンピオン、15回ノックアウト(いずれも虚偽)」。アルコール症。退薬症候群なし。

診断は、脳梗塞、(F60.2)非社会性人格障害、(F60.3a)衝動型人格障害、弓部大動脈瘤。クロナゼパム×4 錠、クロルプロマジン塩酸塩50mg、レボメプロマジンマレイン酸塩25mg、トコフェロール酢酸エステル×3 錠、ノイロビタン配合錠×3 錠を処方。不穏不眠時は、エスタゾラム×1 錠、レボメプロマジンマレイン酸塩50mg を処方し、ジアゼパム1ampōule とレボメプロマジン塩酸塩1ampōule を注射。

76 歳(内科MT 医師):血圧150/92(アムロジピンベシル酸塩錠、エルデカルシトールカプセル、ビタミン剤投与でCa 代謝は中)。貧血10~2(覚醒不良)。既往は、解離性大動脈瘤(手術痕なし)、胸痛あり、上行大動脈の拡大なし。

(B 医師):車椅子、フラフラ歩行。「借金取りから逃げている」。フルフェナジンデカン酸エステルとハロペリドールデカン酸エステルを月1 回、交互に注射。静養室へ。飲み込み困難。レロレロ言葉(舌たらず言葉。babble〔英〕、Lallen〔独〕)。

(整形外科MS 医師):あまり食べられない、へろへろ、歩行不可。体の動きが悪く、ベッドから落ちる。全頸椎拘縮、前湾曲(Lordose)なし。両上肢痙縮、腱反射低下。MRI 上、第1 腰椎陳旧性圧迫骨折。レボメプロマジンマレイン酸塩10mg の投与を中止。

下旬(B 医師):険しい表情。ジアゼパム1ampōule とレボメプロマジン塩酸塩×7 日間注射。CPK 値120IU/L。

76 歳1 カ月:発熱38.5℃、SpO2 94%。車椅子、目ギョロギョロ、険しい、精神状態悪化。両上肢Rigidität 固縮(±)、クロルプロマジン塩酸塩25mg を追加。

76 歳2 カ月(脳外科KM 医師):解離性胸部大動脈瘤、脳梗塞(詳細不明)。意識JCS が1 桁だがボーッとして答えず。歩行危険。MRA 上、前交通動脈瘤(4.4mm×4.3mm)。MRI 上、大脳多発性梗塞、右梗塞(陳旧性)。動脈瘤の大きさと形状から見て手術適応だが、年齢・既往歴などから適応外。注射中止。表情乏しい。閉口したまま、「年34 歳」と言う。胸痛は「ない」、気分は「……いい」。食欲普通、良眠。

76 歳3 カ月:応答不良、意識低下、ベロベロ状態、食欲3 分の1、身体精神病合併開放病棟へ。ソルデム500mL×1ampōule 点滴×7 日間。不穏、興奮、険しい。

76 歳4 カ月(眼科YN 医師):右網膜変性症。(整形外科MS 医師):車椅子より落ちて前額部割創、サージカルテープで閉創。精神科中等閉鎖病棟へ。

(脳外科KM 医師):意識清明。CT 上、大脳と小脳萎縮。両側尾状核頭の虚血性変化。頭蓋内に外傷性変化なし。両側前頭骨陥凹骨折(手術適応なし)。

76 歳6 カ月(B 医師): 綺麗、元気、おとなしい。「先生のおかげ」。

76 歳7 カ月:怒声、険しい。レボメプロマジンマレイン酸塩50mg、ブロナンセリン製剤×2 錠を追加処方。

石川 文之進

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