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天皇陛下ワクチン接種の怪 五輪行事出席と皇室外交の支障に

天皇陛下ワクチン接種の怪 五輪行事出席と皇室外交の支障に

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/07/21
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皇后陛下は接種されていない可能性が高い

天皇陛下が、新型コロナ・ワクチンの接種を赤坂御所でされたことを、宮内庁が7月6日に発表した。しかし、これでは第2回目の接種は3週間後の7月27日以降となり、東京五輪の開会式や、それに出席するためにやってくる世界のVIPたちの接遇に間に合わない。

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by Gettyimages

この陛下のワクチン接種の中途半端なタイミングは不自然で、容易ならざる組織の機能不全が皇室で起きていることを示唆する。

陛下ご自身の安全のためにも、世界のVIPへの配慮としても論外というしかない。皇后陛下や秋篠宮皇嗣殿下ご夫妻など、ほかの皇族については、接種したかどうか公表しないのも印象が良くない。

そして、報道されているところによれば、開会式には陛下だけが出席して開会宣言をされるだけで、皇后陛下は出席されず、悠仁殿下なども含めてほかの皇族の観戦もなし、VIPへの接遇も最低限に留めるという。

上皇ご夫妻は6月22日に2回目の接種を終えられたと報じられ、ほかの65歳以上の皇族方も、98歳という超高齢で健康状態も優れない三笠宮妃殿下を除いて接種を済まされたことが明らかになっていた(正式発表はされていない)。

ところが、陛下始めほかの皇族方については、「東京五輪開催が感染拡大につながらないか、ご懸念されていると拝察している」という西村泰彦宮内庁長官の「ご拝察発言」のおりにも、こんなやりとりが記者とあった。

(質問)ワクチン接種、陛下は?

(長官)この場ではご紹介できるような事態になっていません。

これは、陛下が未接種であることを示唆するものだった。週刊誌報道のなかには、「両陛下はコロナ禍に苦しむ国民のことを第一に考えられており、『国民に行きわたるまでは、打たない』との意思が感じられる」という関係者の意見を紹介していたものもいくつかあったが、説明しにくい状況を宮内庁に近い人が苦し紛れに取り繕うためにしたコメントであることが明らかだった。そこで、私は「陛下がワクチン接種されていないなら外交上論外だ」(「アゴラ」6月30日)と批判した。

「海外からの賓客に多く接する陛下がワクチンを打たれていないとすれば、陛下自身にとって危険なことであるし、陛下が感染された場合に、世界各国の指導者や王族などを危険にさらす。国民に行きわたるまで打たないという精神論は、ひとつの矜恃であり、個人的美学かもしれないが、世界の首脳や王族にとっては迷惑この上ない。一刻も早く接種していただくように菅首相や宮内庁長官は諫言すべきである。」

私や同趣旨の意見に宮内庁が耳を傾けてくれたからかどうかは知らないが、7月になって、宮内庁は陛下のワクチン接種を遅ればせながら取り計らったというわけだ。

外交上の深刻な非礼

それでも宮内庁は皇后陛下などのワクチン接種を公表していない。宮内庁長官はその理由は「個人情報にあたる」からだといい、「国民の象徴である陛下については公表するのが適当」だからそれのみ公表したと説明している。

しかし、両陛下としていっしょに行動されるわけだから、皇后陛下は同じ扱いにすべきだし、お2人の代理をおつとめになることが多い秋篠宮皇嗣殿下ご夫妻もそれに準じるべきであろう。にもかかわらず、公表を頑なに拒むということは、皇后陛下が接種されていないことを明らかにしたくないことが理由としか考えにくい。

東京五輪で来日する世界のVIPたちは、両陛下との交流を楽しみにしているし、それを、過度に簡素化することは、外交上の深刻な非礼で、「おもてなし」の精神と対極を成す。IOC委員で英五輪委員会総裁であるアン王女が、心ならずも開会式欠席に追い込まれたのも、その結果だろう。

世界中が対面外交を避けているならともかく、英国コーンウォールでの先進国首脳会議の晩餐会では、名物のヒラメや新ジャガイモなどの料理が供され、バーベキューを砂浜でしたのである。少人数で酒を出さねばいいのである。

1964年の東京五輪や1970年の大阪万博のときの昭和天皇ご夫妻、当時の皇太子ご夫妻の見事なホストぶりは、戦争の傷を癒やして皇室外交が飛躍するきっかけになった。それが今回は両陛下が立派な国際人でおられるのを生かせる晴れ舞台だったのに寂しいことだ。

東京五輪は、政府や東京都が勝手に誘致したので、皇室は独自判断すればという人もいるが、外交的には日本国の元首は天皇陛下だと扱われているし、元首が開会宣言をすることは五輪憲章で決まっており、陛下は組織委員会の名誉総裁でおられる。五輪誘致が決まったブエノスアイレスでのIOC総会では、異例のことに高円宮妃殿下が招致演説までされており、皇室も誘致に関与しているのであるから無茶な論理だ。

ワクチンをめぐる経緯については、次回に詳しく書くが、宮内庁長官は五輪に間に合うように強く進言し接種してもらうべきだったので、これは不祥事である。

「拝察発言」は憲政上の汚点

「拝察発言」について、浅はかに歓迎するむきもあるが、君主制をとっている民主主義国で、政治的な争点になっている問題について、君主の意見が自身であれ、側近の口を通してであれ漏れるのはタブーである。

たとえば、英国では女王は首相に対しては自由に意見をいってよいのが伝統だ。首相の方は経験豊富な女王の意見を参考にはすることもあるが、かなり辛辣に反論して女王を諭すことも多く、そうした試練を通じて女王も成長していくのである。そのさまは、安倍前首相など政界関係者にもファンが多い「ザ・クラウン」というNETFLIXで配信されている実録ドラマでも赤裸々に描かれていて、皇室とかかわりのある人たちの間でも話題になっている。

しかし、そのやりとりでの女王の意見も含めて政治的な意見が外へ漏れたら君主制の存廃議論にまで発展するほど深刻な不祥事になる。EU離脱の国民投票の時などそうだった。とくに、直近の選挙に影響を与える状況では論外である。

そういうことを、英王室とお付き合いも深い陛下はよくご存じで、都議選を前にしたタイミングでの長官の軽率な発言に戸惑っておられるはずだ。

もし陛下が心配しておられることを国民に伝えたいなら、都議選が終わってから、「感染防止対策に万全をつくし、安心安全な大会であることを内外に認めてもらえればというお気持ちを感じる」とでもいえばいいのである。

今回のような象徴天皇制とまったく相容れない長官の暴走は憲政上の汚点であって、戦前ですらありえなかった。絶対に繰り返されてはならないと、左派リベラル陣営こそ糾弾すべきことなのである。

イエスマンに囲まれた個人商店化した皇室

さらに、長官は眞子様の婚約予定者である小室圭氏が出した母親の元婚約者との金銭トラブルについての稚拙な文書を絶賛して、国民から呆れられた。

小室氏が内親王の結婚相手としてふさわしいと思う人は少ないだろうが、問題の本質はどうしてあの婚約会見の前に誰も止めなかったかということだ。眞子様ご本人やご両親も人を見る目がなかったが、それより、宮内庁も含めた皇室が、組織として機能していなかったし、その後も問題解決に失敗していることが問題なのである。

皇室が永く続いてきたのは、皇族同士が支え合い、奥と呼ばれる側近や重臣、摂関や明治以降の政治的指導者、華族社会が重層的に絡み合いながら賢明な判断をできるように支えてきたからでもある。

ところが、戦後はそれが崩れて藩屏がなくなり、平成になると、かつての大企業的な役割分担が適切になされていた組織から、もはや一般人とあまり違いはない感覚の皇族とイエスマンでしかない使用人からなる「個人商店」になってしまったと私は思う。忠臣とは苦い話を諫言できる人であるのは、和気清麻呂のときから常識だ。

そんななかで、上皇陛下のとくに近しいご学友が、小室氏問題は、上皇ご夫妻が一般国民に近づきすぎてふつうの人になってしまわれたことの結果だという、「絶縁宣言」までして話題になっている。

このあたりで、皇室を再建するために、令和の両陛下のとられるべき新しいスタイルの確立、小室氏の問題の適切な処理、皇位継承問題にとりあえずの決着を付けるなどしなければならないし、その次には悠仁殿下のお妃選びという難問も待ったなしになっている。お相手もすでに中学生になっている時期なのである。

長官が難しい立場であることは承知しているが、宮内庁を代表されているがゆえの苦言であることでお許し頂きたい。現在の組織では対処が難しいことも、よく承知している。

私は皇室問題を、日本の政治や歴史だけでなく、とくに欧州在勤のころから研究してきた諸外国の王室との比較も含めてここ20年間ほど論じてきた。また機会があれば現代皇室の問題をいくつかの問題を取り上げてこれから論じていきたいと思うが、とりあえず、この続きとして、後編「五輪・公務、皇室の変調の底にある相変わらずの皇后陛下ご不調」を読んでいただきたい。

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