人は選択を迫られるとベストなものよりすぐに思い浮かぶものを選んでしまうのはなぜ?

人は選択を迫られるとベストなものよりすぐに思い浮かぶものを選んでしまうのはなぜ?

  • @DIME
  • 更新日:2021/06/11
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もう少し慎重に選ぶべきだったかもしれないが、もう後の祭りだ。時間に追われているので仕方がない。まぁもしお粗末な選択をしでかしていたとしても、たいした被害にはならないのだが……。

カフェで仕事をしたついでにネットショッピングを済ませる

飯田橋駅前を歩いていた。外出の用件はとっくの前に終わっていたのだが、今日はノートパソコンを持参していたこともあり、カフェに入って少し仕事を進めた。ひと段落したところで切り上げてさっき出てきたところだ。

ゴールデンウィークも過ぎて陽はさらに長くなっていて、午後6時を過ぎても日中とまったく変わらない。飯田橋交差点の外堀通りを左に曲がった。

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※画像はイメージです(筆者撮影)

カフェでの仕事が思いのほか捗ったので、時間にも余裕ができた。今日は雨の心配もなさそうだし、気分転換を兼ねて久しぶりに神楽坂あたりまで歩いてみたい気もしてくる。

先ほどまでいたカフェで仕事をしていた最中、仕事で必要なマイクロSDカードを新たに買わなければならないことを思い出した。喫緊に必要というわけではないのだが、容量の大きいものをこの1、2カ月のうちには用意しておかなければならない状況にあったのだ。

とりあえず某ショッピングサイトで購入するしかないのだが、いつかやらなきゃなと思いつつ、ついつい先延ばしにしていた。しかしカフェで仕事がひと段落した際にどうせなら今購入しようと思い立ち、店内のWi-Fiでネットに繋ぎ先ほど購入した次第である。

外堀通りの左手は木立が並ぶちょっとした緑のオアシスだ。神田川の支流らしき小川もある。都会のど真ん中でであるが、ホッとできる場所だ。

久しぶりにネットショッピングでパソコン関連の買い物をしたのだが、SDカードの種類の多さには驚いた。価格もさまざまで、大半のメーカーはこれまで一度も目にしたことのないような社名であった。ノートパソコンの画面をスクロールさせて商品を眺めているうちに刻々と時間が経過してしまう。

ネットショッピングが場合によって少し億劫に感じられるのも、こうした商品数の多さにあるだろう。もちろん商品によりけりではあるが、このSDカードのようにきわめて数多くの商品が表示されて途方に暮れてしまうケースも少なくない。

ひとつひとつチェックしていてはきりがないので、価格のおおよその見当をつけてから、結局のところは知っているメーカーのものを選んで購入を決めた。まともに検討していたら時間がいくらあっても足りない。

歩いていると左手の小川にかかる小さな橋が見えてくる。橋の向こうは大型ビルの入り口に通じていて、1階はショッピングモールになっているようだ。入り口の看板には「レストラン街」の文字もある。

そういえば今日これまでに口にしたものといえば、出かける前のゼリー飲料だけだった。部屋に戻ってからもひと仕事するので、どこかで何か食べて帰ってもいいのだろう。橋を渡ってレストラン街に足を延ばしてみたい。

ベストなものよりも真っ先に思い出したものを選んでいる?

建物に入ると、左手に衣料品店などのショッピングモールが延びていて、右手がレストラン街になっている。正面の階段を上ると2階にもいくつか店があるようだがとりあえず右に進む。

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※画像はイメージです(筆者撮影)

持ち帰り寿司のチェーン店の奥には中華料理店、タイ料理店、イタリア料理店などが並んでいる。さらにその先にも店があるようだ。タイ料理店はトムヤムラーメンで有名な店である。この場所にも店があるとは知らなかった。

トムヤムラーメンを食べることに何の異論もなかったが、せっかくなのでもう少し店を見てみたい。レストラン街を奥に進む。

SDカードの商品数もせめてこのレストラン街の店の数くらいであればよかったのだが、あまりにも選択肢が多すぎた。しかし今になってもう少し慎重に選んでみてもよかったのではないという気もしてくる。

マークシートのテストであれば必ずいくつかの選択肢が設定されているが、現実の生活における選択では場合によっては事実上無制限の選択肢の中から選ばなければならないケースもある。この無制限の選択肢のことをオープンエンド(オープンエンデット)と呼ぶ。

最近の研究で我々はこのオープンエンド型の選択を課されると実にお粗末な意思決定をしがちであることが報告されている。オープンエンド型の選択で我々は最も相応しいものより、最も容易に思い出せるものを選びがちであるというのである。

記憶が意思決定に与える影響を測定するために、研究者たちはファストフード、果物、スニーカー、サラダドレッシングなど、さまざまな種類の消費財に対する人々の選択を調査しました。

最も驚くべき結果は、人々が最も好きな項目について言及するのを忘れ、あまり好まないが覚えやすい項目を選択する頻度(の高さ)です。

研究者は果物など、ブランドと非ブランドの両方でテストされた他のすべてのタイプの消費財で、オープンエンド型とリストベース型の選択における人々の好みの間に同様に大きな違いがあることを発見しました。

※「UC Berkeley」より引用

カリフォルニア大学バークレー校の研究チームが2021年5月に「PNAS」で発表した研究では、実験を通じてオープンエンド型の選択と、選択肢が記されたリストベース型の選択にどのような違いがあるのかを探っている。

実験ではたとえば好きな果物について、Aグループには思いつくままに列挙してもらい、Bグループにはリストに記載された果物名から選んでもらった。こうした収集したデータを分析したところ、オープンエンド型の選択において人々は自分が本当に好きなものではなく、容易に思い出せるものを選ぶ傾向が浮き彫りになったのだ。

冷静に考えると自分はアボカドが好きなのだが、果物と言われてまず最初にオレンジが思い浮かんだ場合、オレンジを選ぶ可能性が高いということになる。先ほどカフェで行ったSDカード選びで、結局のところ記憶にあって知っているメーカーのものを選んでしまったのも仕方がないということになるのだろうか。

メニューを良く見て何が食べたいのか検討してみる

レストラン街の端まで行ったものの、引き返して結局はタイ料理の店に入ることにした。

店内は案外広く、どのテーブルに着いてもよさそうだったが小さい2人掛けのテーブルに着かせてもらった。4人がけのテーブルのほうがゆったりできるというものだが、このご時世で透明なアクリル板の衝立が置かれているのでむしろスペースは狭そうに見えた。

ウェットティッシュと水を持ってやってきた店員さんにトムヤムラーメンを注文しようとしたが、すんでのところで思いとどまった。それはまさに容易に思い出したものを注文する行為だ。良し悪しはともかく、それではSDカードの二の舞になってしまう。ちゃんとメニューを見ることにしよう。

テーブルのメニューを手に取って開く。もちろんトムヤムラーメンでもよいのだが、そのほかに自分が好きな料理は何なのか、メニューを身ながら簡単に確認してみることにした。

メニューをめくりながら目を通していると視線が止まる。グリーンカレーだ。自分はグリーンカレーも好きだったのだ。さっそく店員さんに注文する。

たまにこうしてメニューを確認してみることも必要なのだろう。頭に浮かんだ料理以外にも食べて良かったと思えるメニューや、今まで見逃していたメニューが見つかることもあるに違いない。

メニューを見なければトムヤムラーメンはこの世にあるオープンエンドな外食メニューの1つだが、メニューを見ることで選択肢は一気に絞られる。選択肢を絞ったからこそ、どれが今の自分に相応しいのか慎重に検討できるのだろう。

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※画像はイメージです(筆者撮影)

さっそくグリーンカレーがやってくる。皿に半球状に盛られたタイ米のご飯を崩し、そこへカレーをかけてよく混ぜてから口に運ぶ。ココナッツミルクの風味が口に広がり、ご飯を噛みしめるほどに美味しくなる。メニュー表記ではやや辛い部類に分類されているが、辛いのが苦手な自分でもまったく問題ない。カレーには鶏肉とナスがたっぷり入っている。

ネットショッピングが全盛の時代を迎えているが、リアル店舗の良さの1つには選択肢を絞り込んでくれることもある。服などもネットで探すと際限なく購入候補が増えてきてしまうが、自分が気に入っている店に足を運んでみれば、そこでは選択肢を絞ったショップの提案を受けることになる。文字通り「セレクトショップ」ということだ。

一緒についてきた生春巻は野菜がたっぷり入っていてサラダ代わりにもなる。独特の甘いチリソースも久しぶりに味わうテイストだ。こういう機会でもないと生春巻にはなかなかありつけないので単純に嬉しい。

神楽坂まで歩くつ考えもあったが、こうして美味しいグリーンカレーに運よく出会えたことで、もう今日は余計はことはしたくない気分だ。食べ終えたら飯田橋駅から電車で帰るとしようか。

文/仲田しんじ

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