
小島の鼻にはファンの想いが詰まった鼻テープが輝いている【写真:柴田惣一】
「毎週金曜日午後8時更新 柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.94】
「サイバーファイト・フェスティバル」2022(6月12日、さいたまスーパーアリーナ)のメインイベントを飾るのは、王者・潮崎豪に小島聡が挑むGHCヘビー級選手権。小島が勝利すれば、新日本プロレスのIWGPヘビー級、全日本プロレスの3冠ヘビー級に続き、主要3大シングル王座を戴冠する「グランドスラム」となる。
2008年9月に佐々木健介、09年3月に高山善廣、21年2月に武藤敬司が達成しており、小島が成功すれば4人目の偉業である。
小島は「さまざまな偶然が重なり、GHCのヘビー級のチャンピオンに挑戦することになった。でも、GHCのヘビー級チャンピオンになるのは、必然」と胸を張った。
レスラー人生31年目のビッグチャンスに「こういう舞台を与えてもらえることに感謝をしながら、精いっぱい力の限りに戦う。元気よく明るくやってきたプロレスを信じて、ベルトを取りたい」と己のレスラー人生のすべてを注ぎ込むという。
実はGHC王座には2度、挑戦して敗れており、「ベルトへの思い入れはもちろんある。いろんな思いを持って臨みたい」と3度目の正直を誓った。
自身も認める陽性キャラの小島。リングを離れれば、満面の笑みを絶やさない。ファンの支持も高く、代名詞ともいえる「鼻テープ」は、ファンからのプレゼントが多いという。色とりどり、デザインもさまざまで、アップになったときの鼻テープを楽しみにしている人もいるようだ。もちろん小島本人も「呼吸も楽になるし、一緒に闘っている気持ちになれる」と声を弾ませる。
第三世代の盟友・天山広吉とは公私に渡って仲が良く、東京ディズニー・リゾートでダブルデートしているところに偶然出くわしたことがある。楽し気な4人の姿に、こちらまで幸せな気分になったものだ。
迎え撃つ潮崎は初のサイバーファイト・フェスティバル出陣となる。昨年の同大会は右上腕二頭筋腱脱臼で欠場中だった。1年前を「普段、ノア観戦をしない人にも見せられる大会で“潮崎豪の戦い”を披露できなかった。悔しかった」と振り返る。今年はメインでGHC王者の潮崎豪を爆発させて、昨年の無念を晴らすのみ。
潮崎は“上から目線”隠さず「強さ、怖さを感じない。俺が引き出したい」
潮崎と小島の初対戦は、2010年8月のG1クライマックス公式戦だった。小島のラリアートに沈んだが、小島はそのまま勢いに乗りG1を制覇している。「ずっと目にしていた選手と対戦できるうれしさも正直あった。力やハートの強さは想像以上だった」と、今でもよく覚えている。
今や、2人の立場は逆転している。王者として小島の挑戦を受けて立つのが潮崎である。「あの頃の小島聡の強さ、怖さを感じない。俺が引き出したい」と上から目線を隠そうとしない。小島聡の底力をトコトン引き出した上で、叩き潰す。いわば横綱相撲しかない。
これまでも外敵撃破を使命としてきた。20年の“野獣”藤田和之との30分を超える視殺戦からの勝利も記憶に新しい。21年には、武藤敬司に敗れGHC王座を明け渡したもののプロレス大賞・ベストバウトを獲得している。
いろんな世代のプロレスを楽しめるのがノアの魅力。「ミスター・ノア」の自負と自信に満ちており、責任感も背負っている。「ノアの真骨頂の頂点をしっかりと体現したい」と胸を張る。そのためにも小島にはきっちりと仕上げてきてほしい。
数年前にミスター・ノア一家とサンリオのキャラクターが集結する展示会でご一緒したことがある。潮崎にそっくりのお嬢さんは、やはり可愛い。「お父さん、強くていいね」と声を掛けられると、うれしそうにうなずいていた。
強い父でもある潮崎が12年前には敗れた「剛腕対決」のリベンジを果たし「アイ・アム・ノア!」と叫ぶのか、それとも小島がサイバーファイト・フェスティバルを締めくくるのか。最後にリング中央に立っているのは、どちらだろうか。
※潮崎豪の「崎」の正式表記はたつさき
柴田惣一