サムスン、LG...就職格差は日本以上!? 韓国人ユーチューバーが語る大学のその先

サムスン、LG...就職格差は日本以上!? 韓国人ユーチューバーが語る大学のその先

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2022/01/15
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日本よりも一足早く11月18日に、大学受験(日本の大学入学共通テストにあたる「スヌン:大学修学能力試験」)が終了した韓国。

日本にも大学格差は存在するが、韓国は日本以上とも言われ、“SKY”と呼ばれるソウル大、高麗大、延世大の超有名校から、地方の国立大以外の大学を意味する「地雑大」までクラスが明快に分かれている。

最近は、学歴にこだわらない芸能人なども増え、学歴に変革が起きているという世論も出てきてはいるが、やはり超一流企業にはSKYしか入社できず、地雑大で入社できる人はほぼいないそう。しかし、地雑大ならではの強みもあるという。

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BTSもinソウルの建国大卒のJIN以外は、通信系の大学を選択。他にも芸能人の中には学歴にあえてこだわらず成功している人も増えている。photo/Getty Images

前編では、韓国の大学受験についてYouTuberのジンさんに、自らの経験とともに話を伺ったが、後編では、行った大学で未来はどれだけ違うのか? 学歴重視の韓国の現実について詳しく話を伺った。

前編はこちらから
『受験生を国全体で応援する!? 韓国人ユーチューバーが語る韓国ならではの受験事情』

※ジンさんのお話は、以下よりー。

「地雑大卒」でも特性を生かせれば成功はできる!?

日本も同じだと思いますが、なぜみなが必死に勉強を頑張って名門大に入るのかといえば、将来いい会社に就職するためです。

では大学卒業後、どんな仕事に就くかというと、まず“SKY”の筆頭である「ソウル大学」出身者は一般企業には就職しません。会社を興すか、政府機関に入って研究をするか、医者や教授になるか。普通の会社で、ソウル大出身者を見かけることはめったにありません。

“SKY”の他2校の「延世(ヨンセ)大学」「高麗(コリョ)大学」には大学の派閥があるので、サムスン、LGなどの大企業に入れますし、“inソウル”だと、それらの下のランクの大手企業に入れます。

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ソウルの中心部で就職するには、inソウル大の上位校に入らないと叶わない。photo/iStock

問題は「地雑大」を卒業した人です。みんな早い段階でいい就職口は諦めて、年俸で200万円くらいからスタートする中小企業に入ることが多いです。もしくは労働時間が長いわりに給料が安いブラック企業に就職せざるを得ない人もいます。

ちなみに私は、この「地雑大」の出身です。キャンパスの周辺にはぶどう畑と桃畑しかない、とても牧歌的な場所にありました。当時の友人で今も連絡が取れる仲間は20人ほどいますが、そのうち企業に正社員として勤務しているのは8人です。なので半分もいない。ただし、なかには結構いい年俸をもらっている人もいます。

なので「地雑大」だから人生が終わるかと言うとそんなことはありません。たとえば私のように日本語学科出身の場合、日本企業の韓国支社に就職するという道があります。年俸は最初400~500万円程度ですが、仕事が大変なうえ会社が地方にあるので、inソウルレベルの学生は就職したがらないんですね。なので外国語ができる人は、こういう会社を狙うといいのです。

また、親がお金持ちという場合は、資金を出してもらってビジネスをする人や、チキン屋さんを開くという人もいれば、知り合いの会社に就職する人もいます。アルバイトをして生計を立てる人もいますね。特に飲食店はいつも人手が足りないので、いくらでも働き口はあります。ただし休みは少ないし、給料も低いです。

韓国にやたら「社長」が多い理由

よく「韓国は社長だらけ」と言われます。確かにドラマを観ていても、小さな店を経営する「社長」がたくさん出てきますよね。韓国では、働いている人のうち個人事業者が半数を占めています。アメリカでは7割にのぼるそうですが、韓国はアメリカの影響を強く受けているため、似たような傾向があるのだと思います。

もちろん、目的を持って自分がやりたい事業を始める人もいます。ですが、個人事業主になる理由のひとつに「早期退職」の問題があるのです。韓国では、給料がかさむ年齢になると会社から退職を促される傾向があります。私の父は銀行員だったのですが、50代も半ばになると銀行からのプレッシャーがすごかった、と言っていました。銀行側としては、一人でも多く契約社員にして人件費を減らしたいのです。IT関連企業の場合、40代そこそこで早期退職を促す会社もあると聞きます。

でも、仮に会社から言われるままに40代で退職したとして、その後はどうなるのでしょう? 別の会社に再就職したとしても、たぶん上司は自分より年下です。韓国では「こんなに年を取っているのに若い者の下で働くなんて」とハッキリ言う人が多い。そんなことを言われたら誰だって怒りますし、自尊心も傷つきます。かといって、特別な技術や能力がない人が「自分を尊重してくれない会社では働きたくない」と辞めてしまったら、もうできる仕事がない――。

結果、辞めた人が何をするかといったらチキン屋を開くわけです。韓国にはたくさんのチキン屋がありますが、どれもフランチャイズで、マニュアルに沿って作れば誰でも美味しいチキンが作れるようになっています。あとはアルバイトを雇って配達すればOK。簡単に開業できるうえ韓国にチキンを好きな人は多いので、みなそこにたどり着くのです。もちろん加盟店料はしっかり取られますが、少なくとも年下の若者に指図される生活からは抜けられます。

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ドラマ『トッケビ』にも出てきたフランチャイズ展開をする『bbq CHIKEN』。他にも開業しやすいフランチャイズ展開のチキン屋が韓国には多い。出典/bbq CHIKENサイトより

また、最近では40~50代の早期退職系の人だけでなく、20~30代でもチキン屋的な選択をする人が増えています。就職すると残業は当たり前で、職場でも競争を強いられます。そういった軋轢に身を置きたくない人たちが店を開くわけです。韓国にチキン屋が溢れる理由はそういった背景もあるのです。でも、チキン屋も増えれば競争社会になるわけですから、人生ラクしては生きられないのですが……。

すべてをあきめてしまった!?「N放世代」

就職は運の部分も大きいので、一概に名門大を出たから安心、地雑大を出たからダメ、とは言えません。たとえば私の姉はものすごく優秀な人で、大学でITを専攻し、卒業後は紹介で小さな企業に入りました。そこまでは順調だったものの、その会社では給料の遅延が続き、さほど働かないうちに辞めることになってしまったのです。

一方、姉より勉強ができなかった私は地雑大に進み、日本語学科での勉強および日本でのワーキングホリデーの経験を活かして、日本で就職をしました。その後、日本で起業。結婚して子どもに恵まれ、日本で家と車も購入しました。2021年の終わりには、新たなビジネスもスタートさせています。これは韓国だからということではなく、日本も同じだと思いますが、学歴はどうあれ、結局は本人次第なのかもしれません。

今や韓国では、どこのサイトを見ても「お金がない」というグチが書き込まれています。2010年代には、自分たちが置かれた状況を自嘲する「三放世代」という言葉が流行りました。これは「恋愛・結婚・出産」の3つを放棄せざるを得ない世代、という意味です。

ところがその後、あきめる対象はさらに増加。「恋愛・結婚・出産・就職・マイホーム」の5つを放棄する「五放世代」を経て、「恋愛・結婚・出産・就職・マイホーム・夢・人間関係」を放棄する「七放世代」になり、現在はとうとう「N放世代」と言われるようになってしまいました。Nは変数で、「すべてをあきめた世代」ということになります。

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Netflixで配信中のパク・ボゴムとパク・ソダム共演の韓国ドラマ『青春の記録』は、N放世代の悩みや葛藤にも触れている。出典/『青春の記録』公式サイトより

ちなみに、韓国の出生率は2020年で0.84%。世界で最下位です。ソウルに関していうと、0.64%。日本は、2020年で1.34%、東京で1.13%。日本も少子化が問題になっていますが、韓国はものすごいスピードで少子化、高齢化が進み、社会問題になっています。「N放世代」的な思考は日本ではどうなのでしょうか、若い世代の意識が気になります。

「常にフル回転」に、みんな疲れている

“inソウル”ならinソウルなりの、“地雑大”なら地雑大なりの企業に就職し、身の丈に合った生活をすれば何の問題もないのですが、韓国人は見栄っ張りといいますか、どうしても上を見てしまうんですね。いい大学、いい会社、いい車―。なにせ月に手取り20万円でもベンツを買いますから(笑)。しかも「Eクラスはダサい、Sじゃないと」と言いながらSクラスを買うんです。彼女とのペアリングも「カルティエじゃなきゃ恥ずかしいよね」と背伸びする。すべてにおいて無理をしているんです。

韓国では、『家にいるのに家に帰りたい』『私は私のままで生きることにした』『死にたいけどトッポッキは食べたい』『あやうく一生懸命生きるところだった』など、日々のしんどさをテーマにした書籍がベストセラーになりました。日本でも翻訳版を読んだ人がいるかもしれません。どちらの国でも話題になったのは、ともに無理をして疲れている人たちの共感を呼んだからなのでしょう。

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しんどさを訴える韓国エッセイが次々と上陸。ここ数年、日本でもベストセラーになっている。

韓国人から見ると、日本人も結構疲れているように見えます。韓国人に比べてあまり自分の感情を表現しませんし、遅くまでやっている居酒屋も少ない。ストレスを十分に発散できていないのではと思ってしまいます。

一方の韓国は残業時間が世界でもトップクラスで、そのストレス解消のための遊びにも時間を使うわけです。常にフル回転な状態です。それはそれで楽しいんですけど、そればかりでは疲れるのも事実。だからみな「いったい自分はいつ休めるの?」となって、またコンビニの前で焼酎をあおったりしちゃうわけです(笑)。

それぞれ上手いこと「しんどい」を手放して、2022年も元気に生きていきたいですね。

構成・文/上田恵子

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