頼まれて作った昼食も放置...同居の義母「頼んで断るお願い」の地獄

頼まれて作った昼食も放置...同居の義母「頼んで断るお願い」の地獄

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/02/23
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親子だって、別の人間。深く理解しあっていることもあれば、どうしても理解のできないこともあるかもしれない。しかもそれが義理の親の場合、「理解できない」比率は多くなるのも当然で、特に「義母」との問題には悩みの声が多く寄せられる。

義母の謎の行動に長く悩んでいたのが、フリーライターの上松容子さんだ。結婚前に夫の実家を訪ねた時、専業主婦の鏡のようにかいがいしく夫の世話をやく義母だったが、結婚式への不満や一緒に料理をするときの言動に戸惑うことが続いたという。孫である上松さんの娘が話しかけても無視したり、義父ががんとなって亡くなった時に驚くような言動を見せたり、実家売却のときに勝手に格安で売却してしまったり……義理の娘である上松さんは戸惑うばかりだった。とくに、上松さんの父ががんとわかり、一時期同居を提案した時の冷たいはねつけには心が凍り付いた。

連載「謎義母と私」、今回は、いざ同居がスタートしたときのことをお伝えする。なお、個人が特定されないように上松さん自身もペンネームであり、登場人物の名前は仮名としたドキュメンタリーである。

容子    20代後半で結婚。現在50代
夫     容子と同い年。営業職
明子    容子と夫の一人娘
義父     東京近郊在住 大正生まれ 中小企業社長
義母トミ子 昭和ヒト桁生まれ 元看護師 専業主婦

上松容子さん連載「謎義母と私」今までの記事はこちら

荷物が収まらない! 想定外の引っ越し

義父が亡くなってから一人暮らしをしていた義母・トミ子は、2005年の1月に東京の新居へと引っ越してきた。

家を新築中、私の父が末期がんであることがわかり、残された日々を一緒に過ごそうと考えたが、義母はそれを「諦めろ」とにべもなかった。しかし、後日その態度に抗議すると、義母は自分の発言をすっかり忘れており、「私はそんなひどいことは言わない!」と逆ギレする始末。あらゆる決定事項を今さら覆すことはできなかったが、義母との新生活に不安が募った。

義母の荷物は、夫が行ったときに処分するものを決め、コンパクトな状態になって来るはずだった。ところが、息子が帰ってから考えが変わったらしく、処分するはずだった巨大和ダンスはじめ予想を上回る量の物品が荷降ろしされた。

義母のスペースは1階の1LDKと3畳弱のウォークインクローゼットとトイレ。風呂は共用だ。掃除で苦労しない程度の広さで、これには本人も納得していた。高齢者にはちょうどいい広さだと思っていたのだが、そこに床面積で言うと1畳分くらい、高さ180センチほどのタンスが入ったのである。その「圧」たるや物凄いものがあった。クローゼットがあるのに、それ以上何を収納しようというのだろうか。

義母自身は移動したことで疲れてしまい、衣類をタンスに入れていく程度のことしかできない。大きな片付けはほとんど私たちの仕事になった。

ダンボールには何も書かれていなかったので、開けるまで何が収められているかわからなかった。片端からテープを剥がし、中身を確認して収納先を決める。梱包は近くに住む叔母や叔父、そして義母が頼りにしている工務店のおじさんが総出でやったというが、叔父や叔母が詰め込んだものは箱ごとに分類されておらず、書類も衣類もごちゃまぜだった。驚いたのは、衣類の箱を開けて中身を取り出していったら、中ほどからバナナの房が出てきたことだった。上のほうだけ見て衣類だけだと思い込み、放置していたらどうなっていただろう……。

こうして1週間ほど整理整頓を続け、義母はようやくこの家に落ち着いた。

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衣類の中にバナナの房が…早く開封してよかった… Photo by iStock

用意した昼食が手つかずで乾く

義母は、基本的な家事はできたが、引っ越しの後は疲れやすくなっていたのか、食事を作って欲しいと頼むことが多かった。

私はずっとフリーの仕事をしていたから、家で文章を書いたり打ち合わせに出たりで、たいそうな食事は作れなかった。あるときこんなことがあった。
午後の打ち合わせのために支度をしていたら、容子さん、何かお昼に食べるものを用意してくれと頼まれた。あまり時間がないので、「パスタならできますよ」と答えたら、それでいいと言う。

「レトルトのミートソースがあるから、それでいいですか」
「はい、ありがとう。何でもいただきます」
ということで、慌ててパスタを茹でてミートソースを温め、テーブルに載せた。
「まあ、ありがとうございます」と返事があり、私は打ち合わせに向かった。

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打ち合わせの前にお願いされた昼食。とにかく急いででかけたが… Photo by iStock

夕方、帰宅して義母の部屋を覗き、愕然とした。パスタが手つかずで座卓に残っていたのだ。ラップさえかけられていない。当人はベッドで布団をかぶっている。
「あのう、パスタ、お昼のですよね。食べなかったんですか」

すると、彼女は布団から這い出てきて、事も無げにこう言った。
「私は、ミートソースは好かないんだよね」

えええええっ! パスタでいいかとか、ミートソースだけどいいかとか、確認しましたよね? なんでもいただきますって返事しましたよね?
「そりゃそうだけどさ」と不機嫌そうな顔をする。
「こんなに放ってあったものだから、捨てましょうか」と尋ねると
「夜ご飯に食べるからそのままにして」と言った。

そして、自分たちの食事を済ませて1階に降りてくると、なんと、夕方見たときと同じく、ラップもなしに放置されており、もうカピカピに乾いていた。今度は問答無用で廃棄した。
夕飯はどうしたのだろうと確認すると、冷蔵庫にあったもので自分で料理して食べたらしい。では、私が慌てて昼食を準備した意味ってなんだったのだろう。暗澹とした気分になった。

髪を染めたいというから準備したが…

義母は家に来てから数回、近所の美容室で髪を整えていた。街の小さな美容室だが、若い店主の腕はよく、客あしらいもうまいので、私も通っている店である。
ところが、1、2回行ったところで義母は他の店がいいと言い始めた。店主がツンケンして感じが悪いというのだ。思い当たる節はなかったが、人間には相性というものがあるから仕方がない。

彼女は彼女なりに他を当たり、電車でひと駅先にある美容院に行ってみたらしい。しかし、1回シャンプー・カット・ブローまで体験してから「高い!」と思ったのか、もう行かないと宣言した。

そしてある日、「容子さん、髪はどこで染めているの?」と尋ねてきた。私は好きなときに安く染めたいので、自分で染毛剤を買ってきて風呂場で染めていた。そのように答えると、「私もそうしようかしら。容子さんがやってください」と頼む。簡単だから自分でやればいいのにと思ったが、熱心に頼んできたので引き受けることにした。

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義母の髪の毛を染める…自分の毛を染めるのならともかく、ちょっと緊張が走った、が…Photo by iStock

染毛剤を買い、まずひじの内側でパッチテスト。穴を開けたビニール袋を被らせて染め、風呂場の脱衣所にある洗面台に座らせて流そうと計画した。ここでこうして、こういう格好で流しますよ、と説明すると、それでお願いしますと頭を下げられた。
準備を始め、さて染めようかと声をかけたときである。

「やっぱりやめておくわ」

えええええっ! うそー。全部了解済みで準備したのに。
何が嫌だったんですかと尋ねると、うーん……と、薄ら笑いを浮かべて言葉を濁した。無理やり勧めるわけにもいかず敢え無く中止となった。染毛剤はまだ混ぜていなかったから、私が使うことにした。

このように、義母は人の好意を直前で裏切ることが多かった。こちらからの押しつけではない。本人から頼み、こちらがあれこれ準備をしたところで、突然やめたり断ったりしてしまうのである。

天を仰いで嘆息するようなことは頻繁に起きたが、実は、こういう態度に悩まされていたのは、私だけではなかったのだ。

実の妹も言動に苦しんできた

その年のお盆時期、行きたがらない義母を連れずに義父の墓参りをし、義母の妹の家に立ち寄った。食事や髪染めの件を話したら、叔母は「もう昔っからよ、そういう態度」と呆れ顔で言うではないか。
「あの人、人に頼み事はするのよ。でもすぐに気が変わって嫌になっちゃうのね」。
叔母も義母のそういう癖に悩まされてきたらしい。

「トミ子ちゃんには、何度も『洋服を選んで』って言われて、友だちがやっている洋服屋に連れて行ったの。『どんなのを選んだらいいかわからないから、Yちゃん選んで』って言うから、こんなのいいんじゃない?って選んであげると『そうだね、すてきだね。こういうのは自分では選べないんだよ』って買うの。その後も2、3回選んであげて、役に立ってよかったわと思ってたら、あるときその店の友達から連絡が来てね」。

洋服を買って帰った義母は、帰宅してから品物を見て「嫌になっちゃった」らしい。叔母にはないしょで毎回店に戻り、やっぱりいらないからお金返して、と返品していたのだった。
叔母の友人もさすがに腹に据えかねて、もうお姉さんは連れてこないで、と頼んできたのだという。今で言う「出禁」である。

普段の生活をしばらく観察していて気づいたのだが、義母には「明確な好み」とか「自分らしい考え」というものがなかった。いや、あるのかもしれないが、それを言語化する能力が皆無だった。だから、いろいろなことを他人に頼んでやってもらったり、判断してもらったりする。しかし、やってもらってから、あるいはやってもらっている最中に「なんとなく違う」とモヤモヤするのだろう。

頼んでおいて断る、が義母の前々からのクセであることはわかった。しかし、彼女の言葉のどこをどう信じて関わればいいのだろう。だんだん、義母に声をかけたり、かけられたりすることが苦痛になっていった。

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友だちなら、距離を置けば終わることでも、義母だとそういうわけにはいかない…(写真の人物は本文と関係ありません)Photo by iStock

【次回は3月9日(火)公開予定です】

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