大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第75回「黙って立ち続けて1世紀半」(2)「コーナーフラッグにも正しいポジショニングがある」

大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第75回「黙って立ち続けて1世紀半」(2)「コーナーフラッグにも正しいポジショニングがある」

  • サッカー批評Web
  • 更新日:2021/09/16
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この図が何を示すかお分かりだろうか? (c)Y.Osumi

サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、「ピッチの隅に立つ4人の仲間」。サッカージャーナリスト大住良之が、フットボールの「歴史の証人」について語る。

先端に旗をつけてピッチの四隅に設置される「フラッグポスト」は、現在ではボールが出たとき、副審がタッチラインに出たか、それともゴールラインに出たかを見きわめるために必要と解説されることが多い。野球の例で恐縮だが、外野の端についている「ファウルポール」のようなものである。

しかしこれがなぜ必要不可欠なのか、あまりよくわからない。『キャプテン翼』には意図的にコーナーフラッグポストに当てて味方にパスするプレーがあったように思うが、その世代ではない私にはよくわからない。

昔は、「コーナーフラッグめがけてけれ」という指示がよくあった。相手陣深くボールをけり込んでそれを前線の選手たちが追う、いわゆる「キックアンドラッシュ」の時代である。中央にければ相手GKに取られてしまう。コーナー近くの地域に落とせば、相手選手が先に到達したとしても、処理をもたつく間に奪うことができるかもしれない。あるいはまた、相手陣深くでスローインを得ることができるかもしれない…。

いまはこんな指示を聞いたことがない選手が多いかもしれない。しかし状況によっては、たとえば1点をリードしている試合終盤、相手に押し込まれ、自分の目の前にボールがこぼれてきたときには、思い起こしてもいい言葉かもしれない。

近年の選手は「クリア」がとても下手だ。ハーフラインを超えるか超えないかのボールを相手に拾われ、相手選手がこちらのペナルティーエリアに群がったままの状態でまた攻撃を受けるというケースをよく見る。1967年に東京の駒沢競技場で日本代表がブラジルの強豪パルメイラスと対戦したとき、日本代表のベンチに入っていたデットマール・クラマー・コーチは「クリアは横浜まで飛ばせ」と言ったという話が伝わっているが、現在のJリーグではこんなに立派なクリアができる選手はほとんど見ない。

■オマーン戦の主審は、おそらく「A型人間」

話が横道にそれてしまった。コーナーフラッグポストの話である。

ポストはピッチの角に設置される。通常、ゴールラインもタッチラインも12センチの幅で引かれているから、その2本のラインが90度で交わるコーナーの部分には、角から17センチ近くのラインの部分があることになる。

さて、コーナーフラッグポストは、針金のような細いものではない。昔は木製、現在はプラスチック製で、ある程度の太さがある。針金のようなものであれば、「角」、すなわち、白いラインのいちばん外側の角のところに設置すればいいのだが、太さのあるフラッグポストはどこに立てるべきか―。

これには実は混乱があったらしい。正しくは、図の黄色い丸印のところ、すなわち白いラインの外側に接するように置く。白いラインは「ピッチ内」である。フラッグポストも、その全体がピッチ内になければならない。破線で示した右下の2カ所、フラッグポストの外になお「ピッチ」があるのは明らかな間違いだが、日本では、2002年までは、ピッチの角にフラッグポストの中心を置く、もうひとつの破線の位置に設置されていたという。

オマーン戦を吹いたモハンメド主審は、おそらく「A型人間」だったのだろう。「B型」の鎌田大地が適当にピッチに指したフラッグポストが「2センチも」ピッチ外にはみ出していたのにがまんできず、自分で「正しい位置」に差し直したのに違いない。ちなみに、アラビア半島では、「B型」は日本よりずっと少ないらしい。しかし12分間もの長きにわたってフラッグポストが45度も傾いていたとは!

距離はあっても、バックスタンド側の副審ならわかりそうなものだが、倒れていたのがゴール裏方向だったので、見えにくかったのかもしれない。責任があるとすれば、メインスタンド側の副審だろう。原口がボールを押さえきれず、ゴールキックになったのだから、当然、ゴールラインまで移動してゴールキックの合図をしたはずだ。そのときに、フラッグポストが大きく傾いているのはわかったはずだ。

ルールには「直立していなければならない」とは書かれていない。実際のところ、固いグラウンドではまっすぐに指すことが難しく、少し傾いているコーナーフラッグポストはよく見る。しかし45度も傾けばプレーヤーの危険にもつながる。あのポストの状況は、主審から第4審判を通じて試合の運営サイドに連絡し、プレーが切れたところで差し直すべきだったと、モハンメド主審と同様(かどうかは想像にすぎないが)、「A型人間」の私は思うのである。

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