無職の次男「マンションの管理、僕がしてあげる」の申し出に戦慄...高齢母が取るべき対策は?【弁護士が解説】

無職の次男「マンションの管理、僕がしてあげる」の申し出に戦慄...高齢母が取るべき対策は?【弁護士が解説】

  • 幻冬舎ゴールドオンライン
  • 更新日:2022/01/15
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ある資産家の女性は、年齢のせいか体調がすぐれないことが増えてきました。すると、定職に就いていない次男が、毎月200万円以上の家賃収入があるマンションの管理を任せるよう申し出てきました。しかし女性は、まじめな長男に頼みたいと考えています。長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた、高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が実例をもとに解説します。

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定職に就かない次男が「マンション管理は任せて」と…

鈴木陽子さんは、夫を亡くしてひとり暮らしをしています。夫が残してくれた貸しマンション一棟から賃料収入が月額200万円ほどあり、生活には困っていません。

陽子さんには、長男太郎さん、次男次郎さん、長女花子さんの3人の子がいます。最近、陽子さんの健康がすぐれないことから、次男の次郎さんが陽子さんの賃料収入を管理させるよういってきました。次郎さんは定職についていないことから、賃料収入を管理するといって、その賃料収入を自分のために使ってしまわないか心配です。

陽子さんは、堅実な仕事に就き、まじめに働いている長男の太郎さんに自分の収入等を管理してもらいたいと思っています。

陽子さんはどうしたらいいでしょうか。

①長男太郎さんと財産管理契約を結ぶ。

②長男太郎さんと任意後見契約を結ぶ。

③長男太郎さんに成年後見人になってもらう。

④長男太郎さんと信託契約を結ぶ。

高齢化社会と言われ、日本人の平均寿命が延びました。高齢になるにつれ、財産管理能力も衰えてしまい、いわゆる「オレオレ詐欺」などに騙されたり、身内の者が高齢の親の財産を使い込んだりしてしまうというケースが増えています。

今回は、この高齢者の財産を守るためにはどうしたらいいかというお話です。

高齢者の財産を守る「4つの方法」

高齢者の財産を守るためには、4つの方法が考えられます。

①財産管理契約

1つ目は、財産管理契約です。財産管理契約は、誰かに財産管理を委託するという契約となります。委託する相手は、子供などの身内でもいいですし、弁護士等専門家に依頼することも可能です。

ただし、この財産管理契約は、契約を結ぶことから、委託する高齢者に判断能力がある必要があります。

財産管理契約は、登記も公正証書も不要で、裁判所への申立も不要なので、容易に契約が結べるのがメリットとなります。

しかし、財産管理契約を結んでから、委託する高齢者の方が判断能力を失った場合にも財産管理契約が継続するかどうか問題となってしまうことがデメリットとなります。

また、成年後見のように、裁判所が関与していないので、銀行等が財産管理人として取り扱ってくれない可能性もあることがデメリットとなります。

②任意後見契約

高齢者の財産を守るための方法として、2つ目は、任意後見契約があります。

任意後見契約は、高齢者の判断能力が衰えたときに、財産管理をする後見人を予め選んでおく契約となります。いわゆる成年後見人は、裁判所が後見人を選任するので高齢者の方が希望する人でない人が後見人になってしまう可能性もあります。

しかし、任意後見契約では、高齢者が選んだ人が後見人となります。

契約なので、判断能力があるうちでないと結ぶことができません。

任意後見契約は、公正証書で結ぶ必要があること、任意後見開始をするには裁判所に申立が必要なことがデメリットとなります。

他方、財産管理契約とは異なり、裁判所が関与していることから、銀行などに後見人として高齢者の財産を管理する権限があることを認めてもらいやすいというメリットがあります。

③成年後見制度

高齢者の財産を守るための制度の3つ目は、成年後見制度があります。成年後見制度は、高齢者の判断能力の衰えの程度に従い、成年後見、保佐、補助と3種類の制度があります。

財産管理契約や任意後見契約のように、契約という事前の準備は不要です。しかし、裁判所に決定を出してもらい、裁判所が関与するというデメリットはあります。

逆に、裁判所が選任した成年後見人なので、銀行など対外的には高齢者の財産を管理する権限があることが認められやすいというメリットがあります。

また、財産管理について裁判所の監督下にあることもメリットとなります。

ケースによっては弁護士や司法書士などの身内の方以外が後見人等になってしまい、第三者が家庭の財産の問題に入って来るということもデメリットと感じる方もいるかもしれません。

④信託契約

高齢者の財産を守る方法の4つ目として、信託契約があります。信託契約も契約なので、高齢者の方に判断能力があるときにしか結ぶことができません。

不動産については、登記名義を移すこととなるので、権限は明確となるメリットがあります。しかし、裁判所が関与していないので、対銀行等には、その権限が認められにくい場合もあることがデメリットとはなります。

メリットとしては、財産管理契約とは異なって、一度信託すれば、その後に高齢者の方が判断能力を失ったとしても信託契約は継続しますし、高齢者の方が亡くなった後についても定めることができます。

また、任意後見契約や成年後見制度のように、裁判所に関与をしてもらわなくても行うことができることもメリットとなります。高齢者の方が選んだ人に財産を管理してもらえるということもあります。

ポイントとなるのは「本人の判断能力」の有無

では、本件では、どの方法をとるのがいいでしょうか。

陽子さんの状態によるのですが、陽子さんに判断能力がない状態だと、契約は結べませんから、選択肢①②④は誤りで、選択肢③が正解となります。

しかし、逆に陽子さんに判断能力がある状況だとすると選択肢③が誤りで、選択肢①②④のどれがいいかということとなります。

選択肢②の任意後見契約は、陽子さんの判断能力が衰えたときに発動するものなので、現在の財産管理には使えないということになります。

陽子さんに判断能力があり、今すぐに財産管理をしてもらいたいという場合には、選択肢①の財産管理契約か、選択肢②の信託契約が考えられます。

将来的に、陽子さんが判断能力を失ったときに後見制度を利用するというのであれば財産管理契約でもいいのですが、裁判所を使わずに財産管理を身内で行いたいということであれば、信託契約を結ぶのがいいのではないかと思います。

本件の正解は、状況や考え方により異なりますが、陽子さんはまだ判断能力があるということを前提として、選択肢④にしたいと思います。

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

高島 秀行
高島総合法律事務所
代表弁護士

高島 秀行

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