「異性とは広く浅く付き合います。数年間よく観察して」17歳女性が告白した少数民族の“恋愛作法”

「異性とは広く浅く付き合います。数年間よく観察して」17歳女性が告白した少数民族の“恋愛作法”

  • 文春オンライン
  • 更新日:2021/05/05

「油をさそう」“婚期をほぼ逃した”と自認する村の男たちが私に言ったスラングの意味から続く

【写真】この記事の写真を見る(4枚)

日本に本部を置くNGOの現地担当として、北タイの山奥で調査活動を行う日本人研究者・富田育磨氏が出版したエッセー「北タイ・冒険の谷」(めこん)が話題だ。

富田氏が1年の大半を過ごすという北タイの集落はミャンマーやラオスと国境を接した山地にあり、電気も通じておらず、郵便も届かず、もちろん携帯電話やインターネットも使えない。そこではタイ語とは違う言語を持つ、カレン族やアカ族などの少数民族が、山の斜面で焼畑等を行ない、自給自足的な生活を営んでいる。

彼らが過酷な自然環境を生き抜き、持続可能なかたちで共同体を営むために培った生活の知恵とは一体どんなものか。2008年から10年以上にわたって富田氏が研究に没頭し続ける、現地文化の魅力に迫る。(全4回の4回目。#1から読む)

No image

焼畑の作業小屋。炎天下でも小屋内は涼しく、昼寝にはおあつらえむきの場所

恋人の存在をオープンにできない山村も

中高生のような若い世代でも、慣習的に、恋人の存在をオープンにできない山村もある。そんな土地では、カップルで食事に出かけたり、眺めのよいところで並んで座ったり、花火を見ながら手をつないだり、なんていう光景は見られない。

恋人の存在が村で明るみに出るのはふつう、二人の婚約話がまとまったあとだ。なるほど、自分たちの慣習を大事にする少数民族集団が、恋愛についても昔ながらの作法を重んじるのは分かる。でも若者にはちょっと窮屈なんじゃないかという気もする。

そんな矢先、村の若者たちの恋愛模様を垣間見る機会があった。

一〇月のとある日、私は、村の仲間三人とピックアップでふもとの町へ下りた。村内の排水路改修用のセメントや砂利を調達するためだ。そして用事を済ませた夕方、彼らを安食堂へ誘った(写真)。

「町の女だな。甘い雰囲気だね!」

三人とも家業の焼畑耕作を手伝いながら、自分らしい生き方を模索している。B(二五歳)は通信制大学で会計を学ぶ。その従弟P(二七歳)は、所有するピックアップで農産物の運送にいそしむ。そしてPの妹G(一七歳)は、村に伝わる詩歌の聞き書きに励む。

通りに面したテーブル席につくと、私たちは米粉麺とライスを注文した(写真)。Bは、スマホをチェックしたあとで、村びとが蜜蜂に刺されたとか、山刀を失くしたとか、他愛のない話をした。

ひとしきり食べたあと、Bが、スマホの画面から顔を上げ、「ちょっと中座してよいか」と訊いた。皆がうなずくと、Bは、「面倒だなあ」とつぶやいてから、食堂の自転車を借りて出ていった。Pはニヤけ顔で「町の女だな。甘い雰囲気だね!」と言った。

しばらくしてPの携帯電話が鳴り、Bから「女子が二人いるから、お前も来い」という内容の電話があった。助太刀するよう私が背中を押すと、Pは食堂のバイクを借りて飛び出していった。

「他民族の女性が相手なら、とやかく言われませんから」

食堂に残されたGと私は、タイ風焼売(シューマイ)を追加。私が「女性の友だちが町にいるなんて頼もしい」と感心していると、Gは「他民族の女性が相手なら、村内でとやかく言われませんからね」と言った。

Gは続けた。「私たちはふつう、同じ民族どうしで結婚します。それまでは異性と広く浅く付き合います。気に入っても手に触れるくらい。異性の友人たちを数年間よく観察し、それから特定の相手を決めます」。私は、「窮屈」というのとは少々違うなと思った。

二人は一時間足らずで戻った。「通信制大学のスクーリングで知り合った友人たちです」とBは話した。期待外れの開けっぴろげな会合だったらしく、拍子抜けしたような表情だ。他方Pは、会合を堪能したと見えて、すっかり日も暮れたのにサングラスをかけていた。Gは、二人の中座について何も触れず、また別の話をした。

【最初から読む】《ブタの額に棍棒を振り下ろし、喉元を踏んでとどめを刺す》精霊信仰の村で“生け贄”が続けられる理由

(富田 育磨/Webオリジナル(特集班))

富田 育磨

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加