「彼氏より好き...」二股関係を終わらせようとした女。的中した嫌な予感とは

「彼氏より好き...」二股関係を終わらせようとした女。的中した嫌な予感とは

  • 東京カレンダー
  • 更新日:2021/05/08

輝かしい経歴に、人も羨むようなステータス。そして、安定した恋の相手。

「完璧」に彩られた人生を、決して踏み外すことなく、まっすぐに歩いてきた。

…彼と出会うまでは。

地位もない。名誉もない。高収入でもない。

自由以外に何も持たない男とどうしようもなく激しい恋をした時、迷う女は、平坦な道と困難な道の、どちらの道を選ぶのか。

もし、明日が世界のおわりの日だとしたら─

◆これまでのあらすじ

真衣は1週間、塁とずっと一緒に過ごす。そして、塁のために直人と別れることをついに決意。けれど、その思いを伝えようとしたその日…。

▶前回:仕事より恋愛を優先しすぎた”色ボケ”状態の女に、男が放った目から鱗のひとこと

No image

―2019年5月―

本気で覚悟を決めると、清々しい気分になるんだと、生まれてはじめて知った。

仕事を休み、塁と蜜月の1週間を過ごした私は、ついに塁を選ぶ決心をしたのだ。

自分が選ぶ道の険しさは十分に分かった上での判断だった。

『真衣:直人、明日ちょっと話せる?』

『真衣:塁、1週間ありがとう!本当にすっごい楽しかった!!明日も、ちょっとだけでも会える?』

思い立ったが吉日。1週間ぶりに自宅に戻ったその夜、私は直人と塁の2人にそれぞれ連絡をした。翌日、すべての決着を決めようと。

けれど、運命というものは私の想像を絶するほどに皮肉なものだった。

真衣が2人に連絡をした翌日、彼女が目の当たりにしたこと

翌朝。

『直人:何の話?』

直人はきっと、私が別れを決意したことをどこかで察知しているのだろう。私がLINEを送った数分後に返信してきた。

けれど、塁のほうは既読になっていない。

思い立ったテンションで勢いよく打った文字たちが、未だ塁に読まれることなく、彼とのトークルームに寂しく並んでいる。

きっと、まだ起きていないのだろう。そう思って特に気にはしなかった。だって、私と塁の心は通じ合っているから。数時間のあいだ既読にならないことなんて、全然問題ではない。

「直人、ごめん。私、やっぱり、塁のことを本気で好きになっちゃった…」

「…」

塁と出会ってからの約2か月。私と直人の関係は、切れそうな糸でなんとかつながっていたような感覚だった。それが今、ついに断ち切れようとしている。

「だから、ごめんなさい。別れてください」

「マジで言っているのか?ちょっと、冷静になれよ」

「もう、冷静になってる。その上での決断なの」

仕事帰りに直人の自宅へ行き、私はついにはっきりと決意を伝えた。当初の予定では、1時間くらいでけりをつけてから塁の元へ行き、今度は塁へ想いを伝えるつもりだった。

けれど、直人はこれでもかというほど粘り、なかなか別れることに合意してくれない。

結局、数時間に及ぶ話合いを経ても結論が出ず…というより直人が納得せず、また週末の延長戦へと持ち越されることになってしまった。

5年も付き合った、結婚を考えていた恋人との別れ話。すんなりまとまらなくて当然なのかもしれない。ヘビーすぎる話題に、本来ならば押しつぶされてしまいそうになるはずだ。でも…正直、このときの私はそれどころじゃなかった。

夜になっても、塁のLINEが一向に既読にならないのだ。

さすがに、丸一日連絡がないことは今までなかった。なぜなのか、彼に何かあったのか、気がかりでしょうがない。

No image

もう0時を回っていたし、長時間に及ぶシリアスな空気に、気づかないうちにかなり消耗してしまっていた。

けれど、私は直人の家から帰るその足でタクシーを拾い、塁のバーへと向かった。

なぜだか、胸騒ぎがする。それだけじゃない。まるで迷子の子供のような、心細く不思議な感情に襲われる。

彼がどうして連絡をくれないのか、この胸騒ぎの真相を一刻も早く知りたかった。

胸騒ぎを覚えながらも、真衣は塁のバーへ。そこにあったのは…

私の心模様とは対照的に、タクシーの車内ではポップな音楽とともにサイネージ広告が流れていた。

その妙に軽快なリズムに、なぜだか心細さが増していく。自分だけどこか暗い場所に置いてきぼりになってしまったような、不思議な心もとなさ。

そんな私の心情を知ってか知らずか、タクシーはゆっくりと、そして静かに、暗い夜道をゆっくり進む。まるで、ブラックホールに吸い込まれていくように。

そして、目的地に到着したそのとき、この変な胸騒ぎは焦りへと変わった。

店に、明かりがついていない。

「今日は定休日じゃないはずなのに…」

“Closed”という文字がこちらをじっと見つめている。なぜだか、足がすくんだ。

No image

急に、この24時間で巻き起こった事態が、頭の中を駆け巡った。

―ついに塁と一緒になる決意をし、直人に別れを伝えた。それなのに…塁が姿を消した。

言葉にすればシンプルな展開。だけど、ジェットコースターのような心のアップダウンに、どこか自分の置かれている状況が他人事のように感じられる。

―それに…。

直人と別れて、塁に想いを告げる。これは私にとっては一世一代の決断だった。振り返れば、自分で大きな決断をしたことなんて今までなかったかもしれない。

子供の頃からそうだった。私は、親が強く望む道を歩いてきたのだ。自分で何かを決断することなんて、これまでに一度もなかった。

そんな私は今日はじめて、自分の意志で大きな決断をしたのだ。

なのに。まさにその日に塁がいなくなるなんて、なんという皮肉だろう。

―そのときだった。

「何の用?」

冷たい、感情のない低い声が響いた。後ろを振り向くと、女がいた。私が嫌いな女が。

「なんで、あなたがここに?」

何度かこのバーでひとりで飲んでいた、一度口論にもなった、あの女。

塁の正式な彼女になりたいと願う今の私にとっては、快くない存在。けれど、もしかしたら彼女なら、塁の居場所を知っているかもしれない。

「何度も言わせないで、関係ないでしょ」

悪態をつく女に、私は食い下がった。

「…あの、塁がどこにいるか、知っていますか?」

彼女に教えを乞うなんて嫌だったけれど、今は手段を選んでいる場合じゃない。けれど、彼女の口から出てきた言葉は、私を想像以上のどん底に突き落とすものだった。

「1つだけ教えてあげる。塁はもうあなたに会うつもりはないって」

「…え?」

彼女のその、揺るがない眼差し。堂々たる態度。そして不敵な笑み…。

なぜだろう。私は女のその言葉に、妙な信ぴょう性を感じてしまったのだ。

▶前回:「仕事が生き甲斐だったのに…」休職を言い渡されたとき、女がとった大胆な行動

▶Next:5月9日 日曜更新予定
塁の行方と、塁の決意。そして、真衣と塁の運命は…

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加