遠回りになっても、選手が自分で考えることが必要|杜若・田中祐貴監督

遠回りになっても、選手が自分で考えることが必要|杜若・田中祐貴監督

  • Timely! WEB
  • 更新日:2023/05/26

大きかった、高校時代のトレーニング経験

前編ではこれまでにはなかった厳しさを求めながら、最終的には選手の主体性を重視したチームを目指しているという話を紹介した。
その背景にあるものは、田中監督自身の高校時代の経験だという。
「僕が高校2年生の夏に奇跡的に愛知大会のベスト4まで行ったんですね。これは謙遜ではなくて、それまでの地区大会ではコールド負けとかもしていた力のないチームで、本当に軌跡だったと思います。そんなこともあったせいか、2年秋の新チームになった時に、当時の監督から『ピッチャーの練習についてはお前に任せる』って言われたんですね。
それからはトレーニングやブルペンでどれだけ投げるかなども自分で考えてやらないといけなくなりました。でもそのことが自分にとっては意気に感じられて、やってやろうという前向きな気持ちになれたんですね。それは自分にとって大きかったと思います」

それが1996年の秋のことである。ただインターネットが発達して、情報も溢れている現在とは違い、当時はトレーニングや練習方法などを調べることも簡単ではない。そんな中で高校2年生だった“田中祐貴投手”はどのようにこの機会を生かしていったのだろうか。
「2年の夏の準決勝で愛知高校に負けたんですけど、当時の相手のエースも同じ2年生の関屋(智義・元横浜、ダイエー)で、かなりの力の差を感じました。関屋は1年生の時から有名でしたからね。このままじゃだめだと思っていたところ、関屋が岡崎にあるジムに通ってトレーニングをしているという話を聞きました。どんなことをしているのか知りたいと思って行ってみたら、色んな高校の選手が来ていて、自分の知らないトレーニングに取り組んでいる。それを見て2年の秋からは監督にお願いして通わせてもらって、そこで得た知識をチームメイトの投手陣にも伝えるようにしました。
いつも大体20時くらいに他の選手よりも早めに学校を出て豊田から岡崎に通って、21時から1時間半くらいトレーニングして帰るという生活でしたね。あの経験があって、2年の冬から3年にかけて大きく成長できたのだと思います。
監督からも当時は新しかったインナーマッスルを鍛えることなどは教えてもらいましたけど、フォームとかは何も言われたことはありません。そういう意味でも今っぽいやり方だったと思います」

今では高校生でも外部のトレーニング施設に通うのは珍しくないが、25年以上前にはかなり画期的なことだったはずだ。トレーニングの知識などはもちろんだが、他のレベルの高い選手と触れたことで、視点が上がったことは間違いないだろう。田中監督が選手に対して主体性などを求めるのも、自身がこのことによってレベルアップしたという経験があったからという理由も大きいはずだ。

現在の選手指導についてはプロでのプレー経験よりも、その後のあらゆる経験が大きかったという
「引退してからトレーニングの勉強も改めてしましたし、野球塾で個人に教えてきたことも今思えば良かったですね。もっと年齢が小さい少年野球の選手にどう伝えるかということもよく考えましたし、あとは本当に高校野球の前に怪我が多いということも知りました。帝京大可児でも色んなことを教わりました。
そういったことがなくてただ『元プロ野球選手』という肩書だけで監督になっても、本当に何もできなかったと思いますね。
高校野球は2年3カ月しかないので、本当に時間が短いです。その中でもちろん試合で結果も出さないといけないですし、選手の将来のことも考えないといけない。どちらか一方だけで良いものではないと思っています。だから長期離脱になるような怪我は防がないといけないですし、逆に少し遠回りになったとしても選手が自分で考えることも必要です。監督になったまだ1年ですけど、そんなことは常に考えていますね」

後編では更に踏み込んだ取り組み、今後の目標などをお届けする。

(取材・文・写真:西尾典文)

関連記事

No image

大敗の春からの巻き返し、「一体感を持ってチームで戦う」|中京大中京・高橋源一郎監督2023.5.5

学校・チーム

No image

甲子園での継投、広陵・中井監督の笑顔|中京大中京・高橋源一郎監督2023.4.28

学校・チーム

No image

【誉】2年で「四強」のフィジカルを超えて、大阪桐蔭に追いつこう!2022.7.9

学校・チーム

No image

【大府】学校を挙げての体育指導強化と「検定型授業」(後編)2022.3.31

学校・チーム

No image

【大府】野球部強化にも繋がる、学校を挙げての体育指導強化(前編)2022.3.29

学校・チーム

No image

【西尾東】一人も辞めなかった3年生、最後の大会も全員で!2020.6.30

学校・チーム

No image

【享栄】全国制覇監督が現場を離れて学んだこと、気づいたこと(後編)2019.10.29

学校・チーム

No image

【享栄】全国制覇監督が現場を離れて学んだこと、気づいたこと(前編)2019.10.28

学校・チーム

No image

【東邦】AI搭載マシンを使用したバッティング練習2018.12.13

学校・チーム

No image

【東邦】東海王者の練習は基本重視の「東邦スタイル」2018.12.12

学校・チーム

No image

【愛工大名電】「強打」へ舵を切ったチームの地下足袋とトスバッティング2018.7.9

学校・チーム

No image

【愛工大名電】強打も武器にした紫軍団、「バント練習はしていない」2018.7.6

学校・チーム

No image

【愛知】フィジカルの重要性を食トレで改めて実感2018.4.17

カラダづくり

No image

【至学館】グラウンドを持たない「東海王者」の練習内容と取り組み2017.7.3

学校・チーム

No image

【至学館】恵まれない練習環境で躍進を続ける東海王者2017.6.30

学校・チーム

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加