フェラーリ初の“4ドアSUV” 新型「プロサングエ」ってどんなクルマ? 725馬力のV12エンジンが生み出す走りとは

フェラーリ初の“4ドアSUV” 新型「プロサングエ」ってどんなクルマ? 725馬力のV12エンジンが生み出す走りとは

  • VAGUE
  • 更新日:2023/03/19

世界中で大人気 すでに1年半を越すバックオーダー

北イタリアの山岳部で開催されたフェラーリ・プロサングエの国際試乗会に参加してきました。

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フェラーリ新型「プロサングエ」の走り

2022年9月に発表されて以来、プロサングエは世界的に大好評を得ており、すでに1年半分を越すバックオーダーを抱えているそうです。

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これまでの発表からプロサングエの年間生産台数はおよそ3000台と見込まれるので、ここからバックオーダーの数は4500台ほどと推測できます。これは、世界的な大メーカーの生産台数に比べれば取るに足らない数字かも知れませんが、車両価格だけで5000万円に迫る超高級車にこれだけ多くの注文が殺到する現象は、私のような庶民にはうまく理解できません。

ただし、実際に試乗して、プロサングエがよく売れる理由がわかりました。とにかく商品企画が絶妙で、それを実現する確かな技術力やデザイン力を備えていることが、プロサングエが大成功を収めている最大の秘訣といえるでしょう。

全長約5m、全高は1.6mをわずかに切るボディは、V12エンジンをフロントに搭載しながらも、大人4人が無理なく腰掛けられる室内空間を生み出しています。

ただし、無用に広すぎないところがミソで、スポーツカーらしい適度なタイト感が楽しめます。これは後席も同様で、左右のシートを完全に独立させることで、まるでフロントシートに腰掛けているかのような雰囲気を味わえます。

言い換えれば、SUVらしいスペースユーティリティと、フェラーリらしいスポーツカーの世界観が見事に融合していることになります。

試乗車はフロント255/35R22、リア315/30R23という大径タイヤを履いていましたが、これに185mmという最低地上高を組み合わせたプロサングエは、一般的なSUVのように縁石を乗り越えたり多少の窪みに落としたりしても“へっちゃら”。

私は試乗中に何回かミスコースして、そのたびに縁石を乗り越えながらUターンをしましたが、こういうやや荒っぽい運転をしてもタイヤのサイドウオールやホイールが傷つくことはありません。

これは、コンビニの駐車場やガソリンスタンドに入るたびに「ホイールを傷つけるのではないか?」と心配しなければいけなかった従来のフェラーリとは大きく異なるところ。その意味で、日常的な使い勝手は飛躍的に改善されたといえるでしょう。

乗り心地が快適で、車内が静かなことにも驚かされました。

一般道を普通に流しているときの騒音レベルは思いのほか低く、スポーティなプレミアムサルーンと大差ないレベル。これまでのフェラーリのように、“ゴーッ”というロードノイズが盛大にキャビンに侵入することはありませんし、路面からのゴツゴツ感もほとんど気になりません。これだったら、1日に200km、300kmと遠出してもまったく苦にならないはずです。

それでいながらハンドリングは驚くほどシャープ。一般的なSUVのように、コーナーの入り口でボディのロールが落ち着くのを待つ必要がないので、ステアリングを切ったらそのまま“すっと”コーナーに進入していけます。そのリズミカルな走りは、まさにフェラーリのスポーツモデルに通じるもの。つまり、プロサングエはサルーンの快適性とスポーツカーならではのシャープなハンドリングを両立させてしまったのです。

「フェラーリ・ミュージック」の表現がふさわしいエンジンサウンド

プロサングエがサルーンの快適性とスポーツカーのシャープなハンドリングを両立できた最大の秘密は、フェラーリの市販モデルとして初採用となるアクティブサスペンションにあります。

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フェラーリ新型「プロサングエ」

一般に量産されるモデルのなかにも“アクティブサスペンション”と銘打っている例はありますが、その多くはダンパーの減衰率を電子制御できるという意味で、アクティブサスペンション本来の意味である「各車輪の位置を車両が自発的にコントロールする機能」は備えていません。

ところがプロサングエは、電気モーターの力を使って車輪一本一本の位置を個別に制御する「ホンモノのアクティブサスペンション」を搭載しているのです。

これを用いれば、ブレーキングやコーナリングでボディが傾きそうになっても、電気モーターの力でこれを押し返してフラットな姿勢を保つことが可能。そしてボディがフラットに近い状態だと、コーナーに向けて素早く向きを変えられるので、俊敏なハンドリングが楽しめるというわけです。

いっぽうで、車輪がなにかの段差に乗り上げたときは、アクティブサスペンションが車輪を引き上げる動作をすることで路面からの衝撃を和らげ、乗り心地の改善につなげることができます。これと似たアクティブサスペンションを搭載したモデルがこれまでになかったわけではありませんが、その効果的な使い方という意味では、プロサングエが大きく優っていると断言できます。

しかもデザインは流麗で、全高が1.6m近くもあることを意識させない絶妙なプロポーションに仕上げられています。

実は、この美しいプロポーションを生み出すために、クルマの土台となるアーキテクチャーをゼロから開発したそうです。こうしたこだわりがあればこそ、SUVの実用性を備えていながらスポーツカーのようにスタイリッシュなデザインが完成できたのです。

そしてプロサングエのキャラクターを最終的に決定づけているのが、フロントに搭載された自然吸気式V12エンジンです。

この、きわめて贅沢で、そしていまやきわめて希少でもあるエンジンは、725psという圧倒的な最高出力を発揮して0-100㎞/h加速3.3秒、最高速度310km/h以上というスーパースポーツカーならではのパフォーマンスを生み出すだけでなく、まるで楽器のように美しい音色を奏でてドライバーを魅了します。

よく、フェラーリ製V12エンジンが発するサウンドのことを「フェラーリ・ミュージック」と表現しますが、プロサングエのエンジン・サウンドも、まさに“ミュージック”と呼ぶに相応しい美しさを秘めていました。

つまり、フェラーリのスポーツカーが備えている魅力をまるで失うことなく、SUVの使い勝手のよさを新たに付け加えたモデルがプロサングエなのです。言い換えれば、スーパースポーツカーにつきものだった不便さをすべて取り去った初めてのフェラーリといってもいいでしょう。

それであれば、世界中のフェラーリ・ファンがプロサングエを歓迎するのは当然のこと。しかも、プロサングエをオーダーした顧客の多くは、プロサングエを運転したこともなければ、実車を見たことさえなかったといいます。

それでも5000万円以上の大金をポンと支払ってしまうのですから、フェラーリとそのファンが絶大な信頼関係で結ばれていることは間違いないでしょう。

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フェラーリ新型「プロサングエ」をドライブする筆者の大谷達也氏

Ferrari PUROSANGUE(フェラーリ・プロサングエ)

・全長:4973mm
・全幅:2028mm
・全高:1589mm
・ホイールベース:3018mm
・車両重量:2033kg
・エンジン形式:V型12気筒DOHC
・排気量:6496cc
・駆動方式:4WD
・変速機:8速F1 DCT
・エンジン最高出力:725cv/7750rpm
・エンジン最大トルク:716Nm/6250rpm

・最高速度:310km/h
・0−100km/h加速:3.3秒

大谷達也

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