「帰る家があること」がたどり着いた小さな幸せ(JINSEIのスパイス!最終回)

「帰る家があること」がたどり着いた小さな幸せ(JINSEIのスパイス!最終回)

  • 女性自身
  • 更新日:2021/04/06
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【今週の悩めるマダム】

1歳の息子と夫の3人家族です。夫は優しくて子どももとってもかわいいのですが、コロナもあって楽しいと思えることがなく、家事と仕事に追われて過ぎていく日々に疲れました。幸せが何か、わからなくなりつつあります。辻さんは幸せってなんだと思いますか? そしていま、幸せですか?(東京都在住・40代主婦)

僕は毎日、17歳の息子に食事を作っています。毎回おいしいと言ってくれるわけではありませんが、「この子におなかいっぱい食べさせてあげたい」と思うとき、なぜかわからないけど、ささやかな幸せを感じるんです。

若いころの僕は野心の塊でした。自分が設定した目標に到達することだけを、人生の醍醐味と考えて生きていたように思います。いまでは、お金は必要な分だけあれば十分だと思っています。負け惜しみじゃないけれど、丁寧に出汁をとったみそ汁の染み入る旨さは、高級レストランの料理とはまったく異なる満足感を与えてくれます。人生を振り返ることのできる味わいに、ときどき、どうしようもないくらいの幸せを覚えることができるようになりました。いつか息子は巣立っていくわけですけど、その後、僕は一人になっても、きっと丁寧に出汁をとり続けるような気がします。

今日は息子の部屋を掃除していたら、息子が幼かったころにいつも抱いて寝ていたくまのぬいぐるみが床に転がっていました。掃除機を止めて、久しぶりにそのくまちゃんと語り合いました。シングルファザーの苦悩をよくこのくまちゃんに相談したものです。それもいま思い出すと、幸せな瞬間でした。失ったもの、壊してしまったもの、欠けた思い出……。でも、それらを振り返ることができる、いまのこの瞬間も、また幸せの一部だったりするからです。

いまいちばん僕が幸せを感じるのは「家に帰ること」。もっと言えば「帰る家があること」。お気に入りのベッドや、僕がいつも料理をするキッチンや、ギシギシと歩くたびに音が鳴る古い床。幼いころの息子の写真とか、集めた古い書物とか、そうだ、30年くらい弾き続けているギターとか、どんなときも自分とともに生きてきたものたちが待つ家に帰れることの幸せといったらありません。奥様、そう思うことはありませんか? 僕はいま独身で、その喜びを分かち合う伴侶がいませんが、息子とくまちゃんと愛すべきものたちに囲まれた自分の城があることの、なんて、幸せなことか……。

1歳の息子さんと愛すべきご主人の寝顔を見てください。そんなに素晴らしい宝物があって、ぜいたくなことを言っちゃいけません。遠くばかり見るのではなく、身近なものを失ったときのことを想像してみましょう。きっと、失ったときに後悔するもの、それが幸せなのです。

さて、実はこの連載は最終回を迎えることになりました。思えば、「JINSEIのスパイス!」約3年、「ムスコ飯」を含めると約7年続いたことになります。最初の担当だったSさんもリタイアされ、引き継いだ若手編集者のUくんにもいろいろ助けられ、歴代編集長とはよく飲んだし、楽しい思い出しかありません。長年、ご愛読ありがとうございました!

【JINSEIの格言】

いま僕が幸せを感じるのは「帰る家があること」。遠くばかり見るのではなく、身近なものを失ったときのことを想像してみましょう。きっと、失ったときに後悔するものが幸せなのです。

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