重大事態いじめを放置。中3女子生徒自死事件で判った富山市教委の大失態

重大事態いじめを放置。中3女子生徒自死事件で判った富山市教委の大失態

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  • 更新日:2022/11/25
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子供たちをいじめから守るため、2013年9月に施行されたいじめ防止対策推進法。しかしながら教育現場でこの法はたびたび無視され、多くの悲劇を生んでいるのが現状です。なぜいじめ防止法は遵守されないのでしょうか。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、先日富山市で起きた中3女子いじめ自死事件を取り上げ、いじめ防止法を軽視した校長の対応と市教育委員会の怠慢を糾弾。その上で、学校に同法が浸透しない理由を考察しています。

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富山市いじめ自死事件?は校長と市教委の大失態ではないか

富山県富山市北部中学校の生徒(中3女子)が自殺したというニュースが流れた。

第一報には違和感があった。

それは、「いじめではない生徒間のトラブルだ」と報じられたからだ。

地元のニュースによれば、遺族は中学1年生のときからいじめにあって不登校になっていたという。一方、市教委と中学校は、「いじめではなく、人間関係のトラブルがあって対応中」であったという。

富山市立北部中学校・桑嶌一彦校長によれば、いじめではなかったのかという質問に対して「一方的であるか、またはお互い様かというところが、僕は大きいと思います。いろいろな調査等で、その時期に彼女がいじめを訴える内容が、アンケート等になかったので、そういった判断をいたしました」と答えている。

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富山市教委の大失態

いじめ防止対策推進法及びそのガイドラインによれば、いじめの申告があった場合、学校は調査をしなければならないことになっている。

遺族がいじめを訴えている以上、まず、この調査を行うべきであるが、報道によれば、この中学校では年2回行われるいじめのアンケートに基づく見解しか出てきていない。

さらに、この校長のコメントには大きな問題が隠されている。

(校長のコメント)「一方的であるか、お互い様ということが、僕は大きいと思います」というのは、いじめ防止対策推進法における「いじめの定義」に大きく反しているのだ。

そもそも学校関係者の中には、いじめ防止対策推進法を軽視し、その定義が広義であることに批判的な意見を持つものが多い。

しかし、いじめ防止対策推進法は大津の凄惨ないじめ自死事件をきっかけに、こどもの命を守るためにわずかな異変にも対応していこうと作られたものである。

だからこそ、いじめの定義は広義であり、丁寧に対応していこういうものであるのだ。

第二条 この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。

いじめの定義というのは、文科省が毎年公表している「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」において定義付けられたもので、いじめ防止対策推進法ができる前から存在している。

下記は平成6年から18年の定義改正まで定義とされたものである。

「いじめ」とは、「自分より弱い者に対して一方的に、身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じているもの。なお、起こった場所は学校の内外を問わない」とする。



なお、個々の行為がいじめに当たるか否かの判断を表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うこと。

この中学校校長のコメントに「一方的であったか」という言葉があるように、現行の法律定義を軽視し、勝手な解釈によって歪んだいじめ対策を行う者は、過去の定義への回帰を実践する傾向がある。

つまり、この校長は勝手な解釈で本来いじめとして対応するところ、その対応を怠り、「いじめではない人間関係のトラブル」にすり替えていたのではないか。

仮に「いじめの申告」があってから「不登校」となったとしよう。

中学1年生の段階で不登校になって、現在が中学3年生だとすれば、すでに2年は不登校の状態になっている。

本来、いじめを要因として不登校(通算で30日間の欠席など)になっている場合は、通常のいじめではなく「重大事態いじめ」として取り扱うことになっており、「速やかに学校の設置者を通じて、地方公共団体の長等まで重大事態が発生した旨を報告する義務が法律上定められている(法第29条から第32条まで)。この対応が行われない場合、法に違反するばかりでなく、地方公共団体等における学校の設置者及び学校に対する指導・助言、支援等の対応に遅れを生じさせることとなる」(文科省、いじめの重大事態の調査に関するガイドラインより)。

つまり、学校は不登校の段階で、富山市教育委員会を通じて富山市の市長に対して、「いじめの重大事態」が発生したことを報告しなければならないのだ。

一方、遺族が何の疑いもなく「いじめで不登校」であったことを報道陣に説明しているわけだから、現段階で改めて「いじめ」を否定することは、そもそもできないのである。

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なぜいじめ防止対策推進法が浸透しないのか

この法が浸透しないのは、簡単に言えば、学校業界自体が、法が制定されようがごもっともそうな理由さえ用意すれば、無視しても構わないと実行している結果としか言いようがない。

ちなみに本業が探偵である私のことになるが、探偵業には「探偵の業務の適正化に関する法律」という先日更迭となった葉梨議員が議員立法によって作った法律がある。

正直、この法律は探偵業取締法と言える業者を縛るものであり、様々な点で法律を守るためにそれまでよりも多い仕事の量が増えてしまっている。

しかし、この法律は依頼者の利益と探偵業の取引という部分で重要なものであるから、法令順守が当たり前なのだ。

そもそも法律を守るのは、当たり前なのだ。

その当たり前ができないことこそが、問題なのであり、それによって人の命が失われてしまったのであるとすれば、それこそが大問題なのである。

編集後記

いじめ問題はほぼライフワークですが、ここのところ、黒塗り開示が散見されます。

例えば、いじめの報告書があり、これがご遺族を一方的に批判する内容であり、その原資となる報告書があると示されていました。全く身に覚えがない調査と報告書であるため、その担当弁護士さんと協議して、すぐに開示請求をしようという運びになって教育委員会に開示請求をしたところ、全て黒塗りの紙が数百枚出てきます。

おいおい、これじゃなに書いてあるかわからんだろ…ですが、理由を問うと、「個人情報」と「自治体の活動の安定のため」とか言ってきます。

結局、再審請求(異議申し立て)をすることになりますが、これもどうだかやってみないとわかりません。肌感覚ではおよそ7割はそれなりに黒塗りが消えてでてきますが、こうしたことをやるには、専門家の手をかり、さらに最終的な開示まで少なからず数か月の時間を要するわけです。

気持ちの疲弊は相当なものです。

また報道機関についても、こうしたことに立ち会いつつ、もはや嫌がらせですねと率直な感想を現場の記者さんたちが持っても、その地域で、首長選などがあれば、忖度して報じないわけです。あとから報じてくれるそうですが、有権者の1人としては、こうした情報も選挙には必要な情報であるのではないでしょうか?と思うわけです。

この国はどこに向かっているんだろう…私には現場で被害者と弱者に手を差し伸べることしかできません。ただ、こうしたことを続けおよそ17~8年、、漠然とした不安が常に心の中にあるのは事実です。どこに向かっているんでしょうかね…。本当に。

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