「見積もりにはなかったけど...」 葬儀で「心付け」を渡す必要はあるのか?現役葬儀社社員が回答

「見積もりにはなかったけど...」 葬儀で「心付け」を渡す必要はあるのか?現役葬儀社社員が回答

  • マネーポストWEB
  • 更新日:2022/11/25
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葬儀社から“心付け”を求められたらどうすべきか(写真:イメージマート)

身内が亡くなった際、葬儀に必要な費用は、火葬場使用料や式場使用料など多岐にわたる。葬儀社が遺族の要望に応じ、見積もりにて合計金額を提示するが、実費以外の“別費用”がかかることもあるという。それが「心付け」だ。葬儀社や火葬場のスタッフに遺族がチップとして支払う葬儀業界の古くからの慣習だが、本当に払わなくてはいけないものなのか。実際に「心付け」を求められた経験があるという遺族と、葬儀業界現役社員の話から、その実態と背景に迫った。

【写真】 業界20年、葬儀の“移り変わり”を見てきた赤城啓昭氏

「3000円と5000円の袋を2つ作って下さい」

60代の主婦・Aさんは一昨年、90代で亡くなった母親の葬儀を手配した。葬儀社に直接依頼するのではなく、葬儀紹介会社を利用したという。

「母が介護施設にいた頃から、そろそろ危ないとわかっていたので、少しずつ準備を始めていました。葬儀については、ネット検索で上位にあった葬儀紹介会社に頼みました。自力でどの葬儀社がいいか調べて比較・決定するのは面倒だと思ったからです」(Aさん)

いざ葬儀紹介会社から紹介された葬儀社は、とても親切に対応してくれた。

「お通夜のあり・なし、遺体を預かってくれるかどうかなど、条件や設備についてコースが設定されていてわかりやすかったし、お坊さんを呼ぶ・呼ばない、供花の選択など、遺族の都合やリクエストにも細かく応えてくれました。役所の手続きや必要書類なども詳しく教えてもらいました。すごく丁寧で好感が持てました」(Aさん)

諸条件が反映された見積もりを葬儀社から提示され、費用の総額を把握したAさん。葬儀社による“営業”トークもなく、信頼できると安心した。そのタイミングで、Aさんは「別費用」の説明を受けたのだ。

「見積もりを確認した後、葬儀社の方から『3000円の袋と5000円の袋を1つずつ用意してください』という指示がありました。お金は現金でという指定です。その金額はどこにも明記されていませんでしたが、おそらく“心付け”だろうと察したので、そういうものかと特に疑うことなく承諾しました」(Aさん)

そして葬儀当日、Aさんは、式が始まる30分ほど前、葬儀社担当者に用意した2つの袋を手渡した。そのことを後から知ったAさんの息子(30代)は、内心「払わなくてもいいお金だったのでは?」と思ったが、時すでに遅し。誰に渡る何のお金だったのか確認したい欲にかられたが、葬儀を終えてからお金の話を蒸し返すのも無粋かと、諦めた。

「葬儀社の方にはお世話になったので、もちろん感謝の気持ちはあるのですが、“心付け”というのはそもそも必須なのでしょうか? “心付け”を渡したら、こちらに何かメリットがあるのでしょうか? あるいは、それがないと雑に扱われるとか……? 袋が2つだった理由も気になります」(Aさんの息子)

言い値でやりたい放題の高額請求も

「葬儀 心付け」で検索すると、「霊柩車運転手に○○円」「火葬場スタッフに○○円」といった“相場”を紹介する記事が多数ヒットする。

葬儀社に長年勤務する現役社員で「考える葬儀屋さんのブログ」管理人の赤城啓昭氏は、こういった“心付け”を、「必須のもの(義務)では全くありません」と断言したうえで、袋が2つだった理由に対しては、「紹介会社が2つに分けるように言った場合、葬儀社用と火葬場用でしょう」と推察する。

「遺族の方たちは、提示された“心付け”に対して、断らない人がほとんどなんです。やはり、亡くなった方のお世話をしてくれる人たちへのお礼を表す手段として金銭はわかりやすく、Aさんのように、言われたら“そんなものかな”と思う方は少なくありません。ただ、その善意に付け込み、葬儀社によっては、火葬場に3万円、自社には5万円というような言い値でやりたい放題の高額請求もあるようです」(赤城氏、以下「」内同)

実際の相場はそれぞれの職種に3000~5000円のようだが、葬儀社がとりまとめるケースが多く、はたしてきちんと“チップ”としてスタッフに届いているかどうかは判然としないのが実情だ。また、赤城氏は、「Aさんのケースであれば、葬儀社が葬儀紹介会社に払う紹介料の“補填”として、自社で受け取るものかもしれない」と分析する。

とはいえ、そういった“心付け”は減少傾向にあるという。昨今のコンプライアンス遵守の流れによるものだ。

「現在、公営火葬場では、“心付け”の受け取りは禁止。民間の火葬場でも、昨年1月に東京23区内で7割の火葬を手がける民間大手・東京博善が“心付け”を辞退する方針を発表し、それにならって辞退するところが増えています。受け取ったら、不正行為として解雇処分を科す企業もある。一方で、“もらえるものはもらう”という風習がまだ残っているのが実態です」

求められる葬儀業界のルール作り

なぜ葬儀の際の“心付け”の慣習は続いてきたのか。調べてみると、由来は諸説ある。まず、昔は“死”に関わる職に携わる人たちには、“穢れ”を祓うために酒や食べ物を渡すという習慣があり、それが金品に変わってきたという説。もう一つは、かつて身分制度があった時代に、そういった職に携わってきた人への施しの気持ちから遺族が渡してきたという説。

現代においては、背景に葬儀社の便乗もある、と赤城氏は指摘する。

「今も昔ながらの慣習に甘えている節があります。もともとは遺体を扱う火葬場のスタッフに渡すものでしたが、そのおこぼれというか、自分たちも欲しいという葬儀社もいるのが実態。1葬式あたりでは数千円と大した額ではなくても、年間で数千、数万件となれば、結構な額になります。

“心付け”を見積もりに入れる葬儀社もいますが、それは断ってOK。受け入れてもらえないようなら、その葬儀社はロクでもない会社と思っていい。金額の大小で対応が変わるのも、あってはならないことです。いずれにしても、“心付け”は葬儀業界がダークだと思われかねないものですから、業界全体で明確なルール作りをすることが急務だと思います」

どうしてもグレーな位置づけである“心付け”。古くからの慣習はなくなりつつあるとはいえ、「禁止」や「辞退」を明示されなければ、どうすべきか悩む人も多そうだが、「本来不要」ということは覚えておいてよいだろう。(了)

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